JRA【安田記念(G1)展望】“謎”の凡走シュネルマイスターは「国内実績」断然も、勢いなら「4連勝」イルーシヴパンサー&ソウルラッシュ
6月5日、東京競馬場では上半期のマイル王を決める安田記念(G1)が行われる。今後のマイル路線を占う意味でも非常に重要なレースとなりそうだ。
昨年のNHKマイルC(G1)を制したシュネルマイスター(牡4歳、美浦・手塚貴久厩舎)は、同じ府中マイルでG1・2勝目を狙う。
昨年は唯一の3歳馬として安田記念にも挑戦。ダノンキングリーとグランアレグリアに最後まで食らいつき、僅差の3着に入った。
秋は毎日王冠(G2)から始動し、ダノンキングリーに雪辱を果たしたが、続くマイルCS(G1)ではグランアレグリアと追い比べの末、3/4馬身差で2着に敗れた。
今年は初の海外遠征を敢行。3月のドバイターフ(G1)で始動し、単勝1.7倍の1番人気に支持された。レースでは中団を進んだが、馬群で揉まれる厳しい競馬。直線ではいつもの手応えを欠き、8着に敗れた。
レース後、C.ルメール騎手は「直線では加速せずワンペースの走りで、最後は(馬が)疲れてしまいました。原因は分からない」とコメント。単にメイデン競馬場の芝が合わなかったのか、1800mの距離か、明確な敗因はつかめないまま、帰国初戦を迎える。
ドバイでの凡走後は一部で “早熟説”も浮上したが、払拭するには勝利しかないだろう。前走の不可解な敗戦、そして帰国初戦という不安は残るが、これまで国内で先着を許したことがあるのはタイトルホルダー、ダノンキングリー、グランアレグリアの3頭だけ。今年のメンバー構成からも勝利に最も近い存在なのは間違いないだろう。
手塚師とルメール騎手が「ベストは1600m」と口をそろえたように、この距離では負けるわけにはいかない。
シュネルマイスターの他にもG1馬は4頭いるが、相手筆頭に挙がるのが目下4連勝中と勢いに乗るイルーシヴパンサー(牡4歳、美浦・久保田貴士厩舎)だ。
昨年は皐月賞(G1)で10着に敗れると、1勝クラスから再スタート。6月に田辺裕信騎手と初コンビを組むと本格化し、東京コースで怒涛の4連勝を決めた。
特に強さを示したのは前走の東京新聞杯(G3)。スタートでごちゃつき、後方2番手からの競馬となったが、4角で外に出されると、温存していた末脚が爆発。悠々と差し切ってみせた。
ゴール手前では鞍上が手綱を緩めるほどの余裕も見せた圧巻の内容に、田辺騎手は「僕もびっくりしました」と目を丸くし、「成長は感じていたものの、これほどあっさり差し切ってくれるとは」と想像を超えるパフォーマンスに舌もいつも以上になめらかだった。
「G1に向けて今後楽しみです」と抱負を語っていた田辺騎手。陣営は放牧を挟んで4か月ぶりでぶっつけ本番を選択した。1週前追い切りを見届けた久保田師も「順調に来ている」「東京マイルはピッタリ」と自信をのぞかせており、5連勝での戴冠に期待がかかる。
4歳世代の牝馬2頭にもチャンスがある。
ソングライン(牝4歳、美浦・林徹厩舎)は、前走のヴィクトリアマイル(G1)で五分のスタートを切ると、道中は中団を追走。絶好のポジションに見えたが、3角手前でバランスを大きく崩してしまう。すぐに態勢を立て直したが、G1としてはかなりスローで流れで、結果的に位置取りも後ろすぎた。直線しぶとく伸びたが、5着に追い上げるのが精いっぱいだった。
レース後、手綱を取った池添謙一騎手は「うまく乗れずに申し訳ないです」とコメント。消化不良の一戦となったが、それでも2着馬とはタイム差なしと、改めて実力を見せた。
そのヴィクトリアマイルで2着だったのがファインルージュ(牝4歳、美浦・木村哲也厩舎)である。キャリア9戦で崩れたのは2400mのオークス(G1)だけで、それ以外の8戦は3着以内を確保している。
昨年の紫苑S(G3)を勝って以降は、秋華賞(G1)、東京新聞杯、ヴィクトリアマイルと3戦連続2着と堅実。特に前走は直線に入って、ゴーサインを送った瞬間に前の馬と接触する不利があり、運もなかった。
ここまで名前が挙がった4頭はすべて4歳馬、かつ関東馬という共通点を持つが、もちろん関西馬も負けていない。
関西馬の筆頭格は2年前のホープフルS(G1)覇者ダノンザキッド(牡4歳、栗東・安田隆行厩舎)だろう。
昨年の皐月賞では1番人気に推された逸材で、デビュー3連勝後は骨折などもあり、勝利から遠ざかっている。それでもマイル路線に矛先を向けた昨秋にはマイルCSでグランアレグリアと0.2秒差の3着に好走。前走の中山記念(G2)はスタートで遅れ、道中早めに押し上げていったが、7着に敗れた。再びマイルに戻し、仕切り直しの一戦で、G1馬の貫禄を見せることはできるか。
4歳馬以外なら唯一の3歳馬セリフォス(牡3歳、栗東・中内田充正厩舎)も怖い存在だ。前走のNHKマイルC(G1)は1番人気を裏切って4着に敗れたが、新馬、新潟2歳S(G3)、デイリー杯2歳(G2)とデビューから3連勝した世代屈指のマイラーである。
暮れの朝日杯FS(G1)2着から2連敗中だが、久々を一度叩かれての上がり目には期待できそう。また、古馬の牡馬とは3kg差の54kgで出走できる恩恵も受けられそうだ。鞍上はデイリー杯2歳S勝利に導いた藤岡佑介騎手に託された。思い切った手綱さばきで古馬を一刀両断できるか。
勢いという点でイルーシヴパンサーに引けを取らないのが、ソウルラッシュ(牡4歳、栗東・池江泰寿厩舎)だろう。
マイル路線に転向した昨年12月の1勝クラスから怒涛の4連勝で4月のマイラーズC(G2)を制覇した。初の重賞挑戦となった前走は、スタートで立ち遅れたものの前残りの馬場と展開のなか、直線一気に差し切った。時計の掛かる馬場なら、ここでも好勝負は可能だろう。
やや影が薄い5歳以上のベテラン勢からは同厩舎の2頭を挙げておく。
1頭目は1年8か月ぶりの勝利を狙うサリオス(牡5歳、美浦・堀宣行厩舎)。前走は初のスプリント戦となる高松宮記念(G1)を走り、陣営の“迷走”ぶりも取り沙汰された。
レース内容を見ても距離不足は明らかだったが、陣営からは「前向きさが出てきた」というコメントが出ている。「1-2-1-0」と相性抜群のD.レーン騎手が配された今回は不気味な存在といえそうだ。
2頭目は、今年のフェブラリーS(G1)で連覇を達成したカフェファラオ(牡5歳、美浦・堀宣行厩舎)。芝は9着に敗れた昨夏の函館記念(G3)以来2度目となるが、東京のダートマイル戦は4戦4勝。ソダシの例もあり、このコースなら芝で走れても不思議はない。
この他には、ヴィクトリアマイル3着で浮上の兆しを見せたレシステンシア(牝5歳、栗東・松下武士厩舎)、高松宮記念2着のロータスランド(牝5歳、栗東・辻野泰之厩舎)、長距離輸送を克服できれば力上位のホウオウアマゾン(牡4歳、栗東・矢作芳人厩舎)などにも警戒が必要だ。
新たにマイル界の主役の座に就くのは果たしてどの馬か。注目の安田記念は5日、15時40分に発走予定だ。
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