JRA武豊「凱旋門賞の夢」遠のいたダービー!? オグリキャップVSホーリックスの衝撃から33年…日本競馬の「迷走」も浮き彫りに
29日、東京競馬場で開催された競馬の祭典・日本ダービー(G1)は、武豊騎手の3番人気ドウデュース(牡3、栗東・友道康夫厩舎)のコンビが、C.ルメール騎手×イクイノックスとの叩き合いを制して3歳世代の頂点に立った。
「ダービーのウイニングランの景色は僕自身久しぶりでしたし、ジョッキーをやっていてこれほど幸せな瞬間はないですね。これからもドウデュースとともに世界も含めて頑張っていきたいと思います」
史上最多となるダービー6勝の偉業を達成したレジェンドも、2013年キズナ以来の勝利に感無量。「世界も含めて」という言葉には、武豊騎手が夢と公言する凱旋門賞(仏G1)挑戦の意味も含まれている。
「ポジションが結果的に後ろだったかもしれません」
レース後にそう振り返った武豊騎手自身も悔やんだ皐月賞(G1)は、後方14番手から上がり最速の脚で追い上げるも3着。結果的に先行勢に有利だった前残りの展開に不覚を取った。
しかし、今回はデシエルトが軽快に飛ばしたこともあり、前半1000m通過が58秒9という後ろの馬には絶好の流れ。小回りの中山から直線の長い東京へのコース替わりも、切れ味を存分に生かせる追い風となった。
そういう意味では、「最も運のある馬が勝つ」といわれるダービーらしい結果だったとも言える。
ただ、既に登録を済ませている凱旋門賞に向け、陣営やファンの期待が高まる一方で、この勝利が夢の舞台での好走に繋がるのかとなると少々疑問が残る。
底力を問われる東京の芝2400mで見事な勝利を挙げたドウデュースが、素晴らしい走りを披露してくれたことは確かだ。今後もトップクラスの1頭として日本競馬を引っ張っていく存在になってくれそうな雰囲気もある。
懸念するのは、2分21秒9というスーパーレコードで勝利したことだ。これは秋のジャパンC(G1)を含めた勝ち時計でも歴代2位であり、異常な高速決着に終わった今年のダービーを物語っている。
オグリキャップVSホーリックスの衝撃から33年…
そして、これほどまでのスピード決着に“対応できてしまった” ことは、むしろ凱旋門賞の好走が遠ざかる結果だったかもしれない。
周知の通り、過去に挑戦した日本馬の関係者から「別の競技」という声すら出ている欧州特有の重い馬場。良馬場ならまだしも、重や不良まで悪化すると適性のない馬にとっては、経験したことのないような逆境となることで有名だ。
高速決着が主流となる日本競馬での活躍を約束するダービーの勝利も、スピードよりパワーを求められる傾向にある凱旋門賞では、必ずしも歓迎できるわけではない。
先述した勝ち時計の1位が、2018年のジャパンCを2分20秒6で優勝したアーモンドアイということも引っ掛かる。軽い馬場でスピードと切れを最大の武器とした芝9冠馬も、現役時代に凱旋門賞挑戦を熱望されたが、適性を危惧した陣営から最後までゴーサインが出ることはなかった。
振り返れば、1989年のジャパンCでオグリキャップとの激闘を制した名牝ホーリックスが、2分22秒2という当時では考えられないようなタイムで駆け抜けた33年前、確かに世界との差が縮まったことを実感できた。
このレコードが更新されたのは、16年後の2005年にジャパンCで2分22秒1をマークしたアルカセット。個人的な意見ではあるが、この頃くらいはレコードの更新もまだ日本競馬のレベルが底上げされた結果という手応えもあった。
だが、外国馬から見向きもされなくなった現在のジャパンCの迷走を考えれば、速さと強さが必ずしも比例するとは限らない事実から目を逸らせない。日本競馬の悲願とも評される凱旋門賞の勝利を目標に掲げながら、実態は中身の伴わないただのタイムトライアルを繰り返しているだけのようにも映る。
ドウデュースと武豊騎手のコンビには、いい意味でこちらの予想を裏切ってもらいたいものだが、はたしてどのような結末が待っているだろうか。
(文=黒井零)
<著者プロフィール>
1993年有馬記念トウカイテイオー奇跡の復活に感動し、競馬にハマってはや30年近く。主な活動はSNSでのデータ分析と競馬に関する情報の発信。専門はWIN5で2011年の初回から皆勤で攻略に挑んでいる。得意としているのは独自の予想理論で穴馬を狙い撃つスタイル。危険な人気馬探しに余念がない著者が目指すのはWIN5長者。
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