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JRAシャフリヤール、タイトルホルダーら挑戦も凱旋門賞「不要論」再燃……年々広がる武豊らホースマンの悲願と、ファン心理との「乖離」とは

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競馬つらつらより

 12日、JRA(日本中央競馬会)が今秋10月2日にフランスのパリロンシャン競馬場で行われる凱旋門賞(G1)に、日本馬7頭が登録したことを発表した。

 日本競馬の悲願とさえいわれる世界最高峰の一戦に挑戦の意思を示したのは、昨年のダービー馬シャフリヤール(牡4歳、栗東・藤原英昭厩舎)、天皇賞・春(G1)を制したタイトルホルダー(牡4歳、美浦・栗田徹厩舎)、海外重賞2連勝中のステイフーリッシュ(牡7歳、栗東・矢作芳人厩舎)……。

 昨年も凱旋門賞に挑戦したディープボンド(牡5歳、栗東・大久保龍志厩舎)、昨年の2歳王者ドウデュース(牡3歳、栗東・友道康夫厩舎)、ドバイターフ(G1)を勝ったパンサラッサ(牡5歳、栗東・矢作芳人厩舎)、昨年の宝塚記念(G1)で2着したユニコーンライオン(牡6歳、栗東・矢作芳人厩舎)の7頭。

 いずれもG1実績のある強豪で、昨年今年の活躍ぶりを見ても日本競馬屈指のラインナップといえるだろう。無論、例えばタイトルホルダーの陣営が「宝塚記念(G1)の結果次第」と話している通り、全馬が出走確定というわけではないが、この秋はついに日本競馬の悲願が達成されるかもしれない。大きな期待を抱いていいメンバーといえる。

 だが、その一方で悲観的な声も聞こえてくるようだ。

凱旋門賞に挑む「意味」はあるのか?

 

「今回の7頭の発表はネット上でも大きな反響がありましたが、中には『凱旋門賞に行って欲しくない』という声も……。

過去の凱旋門賞で日本の名馬たちが敗戦の山を築き上げてきたことは、多くの競馬ファンも知るところですし、シャフリヤールやタイトルホルダー、ドウデュースといったところは、現在の看板的なスターホース。それらが秋は国内で見られないかもしれないことに反対する声も小さくないですね」(競馬ライター)

 また、過去には今春の大阪杯(G1)で14着に大敗したマカヒキや、同世代の菊花賞馬サトノダイヤモンドのように、凱旋門賞へ遠征したことで調子を崩してしまう馬も少なくない。

 一時的なコンディション不良だけなら休養すれば復帰できるが、馬が自信を無くしたり、欧州の深い馬場を走ったことで本来の走りができなくなったりするケースもあった。一部のファンとはいえ、自分たちが応援している馬を心配するのは自然な心理かもしれない。

 そして、もう1つ年々声が大きくなっているのが「そもそも出走する必要があるのか」という、凱旋門賞挑戦の不要論だ。

 1920年に創設され、日本でも1969年のスピードシンボリから数多の名馬が挑戦してきた凱旋門賞。しかし、昨年まで欧州以外の調教馬が優勝した例はない。無論、欧州競馬のレベルの高さもあるが、それ以上に日本馬にとって高い壁となっているのが欧州特有の深い馬場への適応だ。

「欧州競馬が世界的に見ても極端な重い馬場で開催されていることに対して、日本競馬は世界的に最も軽いと言っても過言ではない馬場で開催されています。これら2つを『異なる競技』と話す識者もいるほどで、レースを勝つためには、まったく異なる能力が必要とされているようです。

例えば、日本のジャパンC(G1)に有力な欧州馬がほぼ来なくなったのは、日本の軽い馬場に適応できずに本来の走りができないから。にもかかわらず、日本から有力な馬たちが凱旋門賞に挑み続けている図に違和感を持っているファンは、特に近年増えている気がしますね」(競馬記者)

 また記者曰く、そういったファンが増えている要因として、凱旋門賞が必ずしも世界最高のレースではなくなってきていることもあるようだ。

 実際にIFHA(国際競馬統括機関連盟)が毎年の年明けに発表する「世界のトップ100 G1競走」では、2021年こそ凱旋門賞が1位だったが、2020年は11位に低迷。アーモンドアイ、コントレイル、デアリングタクトの3強が激突したジャパンCが3位にランクインするなどの“逆転現象”も起きていた。

 さらに、1着賞金が285万7000ユーロ(約3億8000万円)という高額賞金も、凱旋門賞の権威を世界に知らしめる要素の1つと言えるが、近年はドバイやオーストラリア、サウジアラビアなどで凱旋門賞以上の賞金総額を誇るレースが出現。そういった意味でも、凱旋門賞=世界最高という概念は崩れつつある。

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武豊騎手

「凱旋門賞はボクの大きな目標であり、日本のホースマンの夢」

 そう話すのは、日本人として最も多く凱旋門賞で騎乗経験のある武豊騎手だ。日本競馬の第一人者の言葉通り、今も凱旋門賞制覇こそが日本のホースマンの悲願と語る関係者は少なくない。

 だが、その一方で凱旋門賞に特別な思いのないファンから冷静な声が上がるのも頷ける。長年、日本競馬の最大目標として掲げられてきた凱旋門賞だが、そこに挑戦する必要性が今一度問われ始めている。

(文=大村克之)

<著者プロフィール>
 稀代の逃亡者サイレンススズカに感銘を受け、競馬の世界にのめり込む。武豊騎手の逃げ馬がいれば、人気度外視で馬券購入。好きな馬は当然キタサンブラック、エイシンヒカリ、渋いところでトウケイヘイロー。週末36レース参加の皆勤賞を続けてきたが、最近は「ウマ娘」に入れ込んで失速気味の編集部所属ライター。

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