
JRA「大差レコード負け」からジョッキーも信じられない奇跡!? 約2年20戦の時を経て「2着馬」が10馬身差の圧勝でレコード再更新

「正直、ここまで離すとは思いませんでした」
驚きを隠さない丹内祐次騎手のコメントが、このレースを観た者の感想を集約していた。
2日、函館競馬場で行われた8R・3歳以上1勝クラス(ダート2400m)は、3番人気のヤマノマタカ(牡5歳、美浦・相沢郁厩舎)が勝利。2着馬を10馬身突き放す圧勝で、約2年5カ月ぶりの勝利を挙げた。
10馬身差の圧勝でレコード更新
一体、誰がこれほどの圧勝劇を予想できただろうか。2020年の2月に未勝利戦を勝ち上がって以来、1勝クラスで2着2回3着6回4着3回5着2回……勝てそうで勝てないまま2年以上クラスの壁に阻まれながら、今回が20度目の挑戦という節目だった。
そんなヤマノマタカは、この日もスタートであまりダッシュがつかずに中団から。これまで通りの堅実な……そして、あと一歩足りないレースが繰り返されるかに見えたが、外から徐々にポジションを上げると、向正面で先頭に躍り出た。
だが、丹内騎手の思い切った奇襲で先頭に立ったものの、勝負どころを待たずに早々にムチが入る怪しい手応え。これまで逃げの手に出て敗れた経験もあり、今回の奇襲も失敗に思えた。だが、ここからヤマノマタカが“真価”を見せた。いつ後続に飲み込まれてもおかしくないように見えたが、追い越そうとした馬が次々と脱落……。4コーナーを回る頃には独走態勢になっていた。
終わってみれば、2着ディサイドに10馬身差をつける大楽勝。勝ち時計の2:32.2はコースレコードというオマケまで付いた。
「不思議なレースでした。ダート2400mという特殊な距離らしいスローペースだったので、丹内騎手が早めにポジションを上げたのはファインプレーでしたが、ハナに立ってすぐにムチが入っていたので、ほとんど期待していなかったんですが……。いつ止まってもおかしくなかったんですけど、最後まで止まりませんでした。
これまでは絵に描いたような善戦マンでしたが、この日はまるで別馬のような走りでした。最後の直線はほぼ独走といった感じでしたが、丹内騎手からはムチが飛んでいましたよ。良い意味で想定外の走りだったんでしょうね」(競馬記者)
記者曰く、この勝利で函館ダート2400mのレコードホルダーとなったヤマノマタカには、感慨深いちょっとしたエピソードがあるという。
「今回のヤマノマタカのレコードは、2020年の7月にヒロイックテイルが同じ1勝クラスでマークしたレコードを0.4秒更新するものでした。ただ、実はヒロイックテイルとヤマノマタカは同世代で、前者がレコードを出したレースに後者も出走していたんですよ。それもヤマノマタカが2着だったんです。
大差がついたレースだったので、正確に何馬身差だったのかはわかりませんが、あの時ヒロイックテイルに10馬身以上突き放されたヤマノマタカが、2年後にそのレコードを塗り替えたのですから、なんというか感慨深いものがあります」(同)
3歳でレコードをマークしたヒロイックテイルはその後、順調に自己条件を勝ち上がり、昨年のブリリアントS(L)を勝利。今年2月に行われた川崎記念(G1)に出走するほどの出世を果たしている。
一方、あの時大差で敗れたヤマノマタカは約2年間足踏みが続いたものの、今回ようやく1勝クラスの壁を突破。遅い2勝目となったが、馬自身は大きく成長していたのだろう。レースの“中身”は、今後の出世を大きく期待できるものだ。
「ようやく勝つことができてよかったです」
レース後、丹内騎手がそう振り返った通り、競走馬としてはあまりに遅い2勝目かもしれない。しかし、ヒロイックテイルが東京大賞典(G1)を勝ったローマンレジェンドの弟なら、ヤマノマタカも母方がスカーレットブーケ一族という良血馬だ。
まだ少し先のことになるだろうが、いつかこの2頭が大きなレースで、再び顔を合わせることがあるかもしれない。
(文=大村克之)
<著者プロフィール>
稀代の逃亡者サイレンススズカに感銘を受け、競馬の世界にのめり込む。武豊騎手の逃げ馬がいれば、人気度外視で馬券購入。好きな馬は当然キタサンブラック、エイシンヒカリ、渋いところでトウケイヘイロー。週末36レース参加の皆勤賞を続けてきたが、最近は「ウマ娘」に入れ込んで失速気味の編集部所属ライター。
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