
JRA元祖「5億円ホース」に迫る“逆襲”へのタイムリミット……第2のキャリアを終えた超良血馬が叶えたい大逆転のドラマとは
7月に入り函館に加え、福島、小倉での開催が始まって、本格的な夏競馬の時期がスタート。先月から2歳馬も続々とデビューしており、今週末も土日だけで計125頭もの若駒達が初戦を控えている。
なかでも、3日に函館競馬場で行われる芝1800mの2歳新馬が大きな注目を集めている。昨年の朝日杯FS(G1)で4着に好走し、先週の城崎特別(1勝クラス)で2勝目を挙げたアルナシームが初陣を飾ったレースでもある。
今年の注目の的は、白毛馬として話題のゴールドシップ産駒アオラキ、調教で抜群の動きを見せている新種牡馬サトノダイヤモンドの産駒ルクスグローリア、武豊騎手が跨るイスラボニータ産駒プエルトボニータなど。
競走馬として超一流の現役生活を歩んだ父を持つ子どもたちが顔を揃えるなかで、メンバーで唯一父がG1馬でない馬が存在する。ザサンデーフサイチ産駒のキタノグリエル(牡2、美浦・萱野浩二厩舎)だ。
同馬の父ザサンデーフサイチといえば、冠名「フサイチ」で知られる関口房朗オーナーが2004年のセレクトセールにて当時の歴代最高落札額となる「5億1450万円(税込)」で競り落とした父ダンスインザダーク×母エアグルーヴの超良血。
落札された前年には姉のアドマイヤグルーヴがエリザベス女王杯(G1)を制しG1馬となったことからも、期待の高さが「5億円」という金額に比例したのかもしれない。そして迎えた2006年のデビュー戦では、父母ともに主戦を務めた武豊騎手を鞍上に配し、単勝1.3倍の断然人気に支持された。
しかし、レースではスタートで後手を踏み、まさかの黒星発進。その後、3戦目で初勝利をあげると、1勝クラス、2勝クラスと順調に勝ち進むも、準オープンに入ってからは完全に頭打ち状態に陥る。約6年間にも渡って勝利から遠ざかり、11歳でついに引退。期待の良血馬が41戦してわずか3勝のみに留まった。
また、オーナーである関口氏が6歳だった同馬を大津地方裁判所に差し押さえられたことも当時大きな話題に。現役競走馬としての道半ばで、無念にも馬主と離れ離れになってしまう悲運にも見舞われた。
元祖「5億円ホース」に迫る“逆襲”へのタイムリミット…
引退後は種牡馬となったもののここまで重賞馬を輩出することは出来ず、とうとう昨年には種牡馬生活にもピリオドを打ち、引退馬ファンクラブ「TCC」(Thoroughbred Community Club)に引き取られることとなった。中央でデビューするかは定かではないが、今年生まれた産駒たちが最後の世代ということになる。
同産駒の現役馬は、中央では2勝クラスの6歳馬フィデリオグリーン、未勝利の3歳馬グランドメノウとフロストクリスタルの3頭のみ。その中で2020年産としてはデビュー1番手となるキタノグリエル。5億円で落札された父とは違い、昨年の北海道サマーセールにて330万円で落札された格安馬だが、何とか一矢報いたいところだろう。
華々しくG1を沸かせた名馬たちが続々と種牡馬としても結果を残すなか、そこに交じって必死に奮闘している種牡馬がいることを忘れてはならない。
競走馬として第2のキャリアを終え、産駒たちも残り僅かとなったザサンデーフサイチ。超良血馬の大逆転への挑戦はまだ続く。
(文=ハイキック熊田)
<著者プロフィール>
ウオッカ全盛期に競馬と出会い、そこからドハマり。10年かけて休日を利用して中央競馬の全ての競馬場を旅打ち達成。馬券は穴馬からの単勝・馬連で勝負。日々データ分析や情報収集を行う「馬券研究」三昧。女性扱いはからっきし下手だが、牝馬限定戦は得意?
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