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JRA福永祐一「早すぎた」G1・2勝の快速牝馬と「コントレイル以上」の未完の大器…道半ばでターフを去った2頭と“血縁”の新馬が迎える「夢の続き」の序章

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福永祐一騎手

 競馬の世界において“縁”というものは大きな意味を持つ。紡がれた人と人の縁、人と馬の縁が、長い競馬の歴史の中で数々のドラマを生んできた。今週末にデビューを迎えるとある新馬も、騎乗する騎手との“縁”が創るドラマの芽吹きを予感させる。

 その馬こそがシルヴァーデューク(牡2歳、栗東・西村真幸厩舎)である。10日の小倉5R・2歳新馬(芝・1800m)に出走予定の1頭だ。

 デビュー戦の手綱を握るのは福永祐一騎手。福永騎手はシルヴァーデュークの父・シルバーステートのキャリア5戦全てで手綱を握っており、血統からくる人馬の“縁”を感じるコンビである。

「コントレイル以上」の未完の大器

 シルバーステートは現役時代、勝利した4戦で全くムチを使うことなく楽々と勝利をして見せた実力馬。だが一方で体質的な弱さも抱えており、垂水S(1600万下)を勝利した後に2度目の屈腱炎を発症して無念の引退。重賞挑戦を果たすことなく、未完の大器のままターフを去ることとなってしまった。

 シルバーステートについて福永騎手は後に各所で「今までで別格の馬」と語っており、相当思い入れが深かった様子。昨年4月に『JRA-VAN』にて公開されたインタビューには「今まで乗った馬のなかで間違いなく一番で、その評価はコントレイルと出会った今でも変わりません」とあり、無敗の3冠馬を凌ぐほどにそのポテンシャルに惚れ込んでいたことが伺える。

 そのシルバーステートは昨年から産駒がデビュー。初年度産駒からはファンタジーS(G3)を制し、牝馬クラシック戦線でも中心視されたウォーターナビレラを輩出した。

 福永騎手も昨年は同産駒で新馬戦を2勝しているが、結果的にその2頭はいずれもクラシックの舞台には届かず。相当に思い入れのあるシルバーステートの産駒で「今年こそはクラシックへ」という思いは強いはずであり、シルヴァーデュークへも大きな期待を寄せていることだろう。

 ただし、シルヴァーデュークは数多くいるシルバーステート産駒の1頭に過ぎず、この点だけをもって福永騎手との“縁”を語るのは言い過ぎかもしれない。実は今回シルヴァーデュークを取り上げた理由としてもう一つ、福永騎手と同馬との唯一無二ともいえる“縁”が存在する。

 その“縁”とはシルヴァーデュークが名牝・ラインクラフトの甥にあたるという血統背景である。ラインクラフトは2005年に桜花賞(G1)、NHKマイルC(G1)を制した馬であり、この馬もそのキャリアの全てで福永騎手が手綱を握っている。

 ただ、4歳の夏を迎えたラインクラフトは秋のG1戦線に向かうべく放牧先で調整を続けられていたが、その最中に急性心不全を発症。G1を2度制した快速牝馬は何の前触れもないままに、あまりにも早すぎる死を迎えてしまった。

 古馬になってからも高松宮記念(G1)で2着に好走するなど活躍し、秋以降も更なる飛躍が期待されていた矢先の突然の訃報。現役G1馬の急逝にファンや関係者は衝撃を受けたが、主戦を務めていた福永騎手はそれ以上に心を痛めたに違いない。ラインクラフトを知る誰もが思い描いた飛躍の秋は、誰一人として想像できなかった最悪の形で幻となってしまった。

 日米オークスを制し、母としても数々のG1馬を輩出したシーザリオや、無敗3冠牝馬デアリングタクトの祖母としても知られるデアリングハートと名勝負を繰り広げ、時代を彩ったラインクラフト。かつてのライバルの血を引く馬が近年の競馬界を盛り上げている一方で、ラインクラフトは後世にその仔を残すことができなかった。

 福永騎手がキャリアの全戦で騎乗をしながらも、道半ばでターフを去ることとなってしまったシルバーステートとラインクラフト。この2頭と血統的な“縁”のあるシルヴァーデュークのデビュー戦となれば、福永騎手が手綱を握る手にも自然と力が入るはずである。

 深い“縁”で繋がれたシルヴァーデュークと福永騎手が見せる「夢の続き」ともいえるような今後の快進撃に期待を抱きつつ、まずは初陣となる今週末の新馬戦に注目したい。

(文=エビせんべい佐藤)

<著者プロフィール>

 98年生まれの現役大学院生。競馬好きの父の影響を受け、幼いころから某有名血統予想家の本を読んで育った。幸か不幸か、進学先の近くに競馬場があり、勉強そっちのけで競馬に没頭。当然のごとく留年した。現在は心を入れ替え、勉強も競馬も全力投球。いつの日か馬を買うのが夢。

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