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武豊×スペシャルウィーク産駒の「夏馬」といえば…

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 競走馬には「夏馬」や「冬馬」という言葉が存在する。文字通り「夏馬」とは暑い夏の時期に強く、「冬馬」は寒い冬の時期に強いことを意味しており、結果的にその時期に良績を残しているからそう評されている。

 7月に入り暑さも増し、本格的な夏競馬の時期を迎えている昨今。G1開催がないこの時期は有力馬たちが出走を控えることもあって、「夏馬」にとっては絶好のシーズンと言えよう。

 ところで「夏馬」と聞いて、競馬ファンの多くはどんな馬を想像するだろうか。

 古くは小倉記念(G3)を連覇したメイショウカイドウなどが挙がるかもしれない。2006年にサマーシリーズが始まって以降は、「サマースプリントシリーズ」で連覇を果たしたカノヤザクラやベルカントなど、顕著に「夏馬」として実績を残す馬も続々と現れた。

 そんななかでも筆者の記憶には、2010年の「サマー2000シリーズ」を制したナリタクリスタルが思い浮かぶ。

 父は武豊騎手に初の日本ダービー(G1)制覇をもたらしたスペシャルウィーク。これまで武豊騎手が同馬の産駒で重賞制覇を達成したのは、デイリー杯2歳S(G2)を制したオースミダイドウ、きさらぎ賞(G3)を勝って日本ダービーで2着したリーチザクラウン、中京記念(G3)や新潟記念(G3)を制したナリタクリスタルの3頭のみである。

 なかでも、ナリタクリスタルは数年間に渡って夏競馬を沸かせた存在。同世代だったリーチザクラウンが早くからクラシックやG1の舞台で活躍する陰で、また違った輝きを見せて夏の重賞を彩った。

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武豊騎手

 ただ単純に夏に強かったというだけでなく、ナリタクリスタルが武豊騎手と歩んだ軌跡がまたドラマだった。それが記憶に深く刻まれている要因でもある。

 同世代のなかでは早生まれの1月生まれだったものの、デビューは遅れに遅れて3歳となった1月。デビュー戦は川田将雅騎手を背に、単勝1番人気に支持されるも2着に敗れた。その後も同コンビでなかなか勝ち上がることが出来なかったが、そんなナリタクリスタルを救ったのは父スペシャルウィークの主戦でもあった武豊騎手だった。

 コンビ結成2戦目で初勝利を飾ると、クラシックこそ間に合わなかったが、3歳の間に1勝クラス、2勝クラス、準オープンと一気に勝ち上がりオープン入り。古馬となってからも重賞の小倉大賞典(G3)で2着、続く中京記念でも6着と力を証明し、今後の重賞戦線での活躍に期待が高まっていた。

 そんな矢先、2週間後の毎日杯(G3)でザタイキに騎乗していた武豊騎手が、落馬負傷によりキャリア最大の大怪我を負ってしまう痛恨のアクシデント。診断の結果は左鎖骨遠位端骨折、腰椎横突起骨折、右前腕裂創という重傷で、全治は半年と診断された。その結果、クラシックへのお手馬は勿論、ナリタクリスタルとも離れ離れとなってしまう。

 それでも、ここまでの全4勝を導いてくれたレジェンドを待つ間に、ナリタクリスタルは更なる進化を遂げる。

 同年の夏には、代役を務めていた幸英明騎手とのコンビで小倉記念4着、新潟記念で1着となり「サマー2000シリーズ」チャンピオンのタイトルを獲得。以前よりさらにパワーアップをして相棒とのコンビ復活の時を待った。

 そしてついにコンビ再結成となったのが翌年の中京記念だった。約1年ぶりという期間を感じさせない息の合ったレース運びで見事に完勝したのだ。この瞬間を待ち望んでいたファンも多くいたのではなかろうか。

 また、その年の夏には武豊騎手とのコンビで新潟記念連覇を達成し、その後は引退した2014年まで毎年のように夏の重賞戦線に出走。主戦だった武豊騎手にとっても、スペシャルウィーク産駒として思い入れのある1頭になったはずだ。

 引退後は新潟競馬場で乗馬や誘導馬として活躍したナリタクリスタル。そしてつい先月にはその役目も終え、新潟県胎内市にある「松原ステーブルス」に移り余生を送ることとなった。牧場見学なども無料でできるようなので、興味のある方はぜひ訪問してみると良いかもしれない。

 サマーシリーズも始まり、ここから本格的に盛り上がる夏競馬。今夏、競馬ファンの記憶に刻まれる「夏馬」は現れるだろうか。

(文=ハイキック熊田)

<著者プロフィール>
 ウオッカ全盛期に競馬と出会い、そこからドハマり。10年かけて休日を利用して中央競馬の全ての競馬場を旅打ち達成。馬券は穴馬からの単勝・馬連で勝負。日々データ分析や情報収集を行う「馬券研究」三昧。女性扱いはからっきし下手だが、牝馬限定戦は得意?

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