
「当たり過ぎて」公開終了?大人気予想AIの実力
もしも「完全な未来予知」ができたらあなたはどうするだろうか。競馬を愛する読者の方々の中には、馬券で一攫千金を夢見るファンもいるかもしれない。
未来予知に関するもので有名な理論として「ラプラスの悪魔」というものが存在する。これはフランスの数学者・ラプラスが唱えたもので、簡単に言えば「仮にこの世の原子の動きを全て把握し計算できる“悪魔”が存在すれば、その“悪魔”は完全な未来予知が可能である」と説いたものだ。
しかしこの仮説は現在では否定されている。仮に完全に未来を予知できる“悪魔”が存在したとしても、それを知った“悪魔”の行動が未来予知を受けて変化してしまう。その変化を含んだ全てを予知したとしても、今度はその新たな予知によって再び行動が変わってしまうため、結果的に完全な未来予知は成立しないというわけだ。
こうして「ラプラスの悪魔」による完全な未来予知は不可能なことが示されているが、実は競馬に関してもこのパラドックスを実感させられる出来事があった。
大人気予想AIがまさかの公開停止
7月31日、TwitterやブログにてAIを用いた競馬予想を公開していた『競馬AIゆま』(@yuma_first)が8月末をもって予想の公開を停止する予定であることを発表した。
この『競馬AIゆま』は中央競馬・地方競馬の各レースにおいて、AIによる分析により各馬の勝率を導き無料で公開している。Twitterのフォロワー数は6.8万人を誇っており、その数字が物語っているようにこのAIはとにかく当たるとファンの間でも評判。直近の7月においても、中央回収率105.7%、地方回収率111.9%という高い水準をマークしていた。
しかし、高精度な予想を約4年にわたって公開し続けていた『競馬AIゆま』が突如として公開終了を発表。中には長きにわたって予想に全乗りしていたというファンもいたようで、Twitter上では公開終了を惜しむファンからのコメントが多数寄せられていた。
『競馬AIゆま』は公開停止予定を発表するに至った理由について、自身の予想がオッズに与える影響が大きくなりすぎてしまい、回収率の低下が懸念されるためとしている。ファンに公開することによるオッズ変動を加味した予想精度の改善も試みていたようだが、その対応にも限界があった様子である。
特に『競馬AIゆま』の影響力の高さが顕著であったのが、7月31日の高知12R。このレースに出走したリュウノアンジェラという馬は近走に目立った良績もなく、当初は単勝20倍程度のオッズで推移していた。しかし『競馬AIゆま』がこの馬の勝率を52.9%と公表すると投票が集中し、最終的に単勝オッズは3.4倍の1番人気となった。結果的にリュウノアンジェラは勝利し『競馬AIゆま』の予想が見事に的中したものの、馬券的な妙味は失われてしまったといえる。
『競馬AIゆま』は精度の高い予想をする程に影響力が高まり、次第に”勝てない”予想になりつつあったがために公開を終了することとなってしまった。AIによって勝つ馬は予測ができても、それを知った人々の投票までも予測することは難しい…まさしく冒頭の「ラプラスの悪魔」のパラドックスを感じるできごとであった。
(文=エビせんべい佐藤)
<著者プロフィール>
98年生まれの現役大学院生。競馬好きの父の影響を受け、幼いころから某有名血統予想家の本を読んで育った。幸か不幸か、進学先の近くに競馬場があり、勉強そっちのけで競馬に没頭。当然のごとく留年した。現在は心を入れ替え、勉強も競馬も全力投球。いつの日か馬を買うのが夢。
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