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「悲運の名馬」と同じ骨折でターフを去った「スターホース候補生」。エフフォーリア世代の伏兵がついに本格化か

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 のちの一流馬を蹴散らし輝かしい未来が視界に入りながらも、夢半ばでターフを去った馬の弟が、いよいよ本格化か。

 11日、中京競馬場で行われた9Rの長久手特別(2勝クラス)は、菱田裕二騎手の3番人気ハートオブアシティ(牡4、栗東・森田直行厩舎)が優勝。レースはスタートで少しモタつくも、道中は中団やや後ろから追走、最後の直線で外に持ち出し見事に差し切った。

 森田師はレース前に「開幕週で速い時計への対応が鍵になる」と語っていたが見事対応。ひと夏を越え、成長を見せた。

 菱田騎手はレース後、「前回から間隔が空いていない中でしたが、より大人になっていました。返し馬から雰囲気が良かったです。道中は折り合いがついて、ギリギリまで追い出しを待っていました。スタートから通して良いリズムで競馬ができました」と語った。

 2歳秋にデビューし、2戦目となる未勝利戦で初勝利を挙げたハートオブアシティ。新馬戦で2着に敗れた際の勝ち馬が、6月にエプソムC(G3)を制したノースブリッジだったことから、ファンの間で再評価する声が上がっている。

 また、その新馬戦では3着がショウナンアレス(現3勝クラス)、4着がのちの京都新聞杯(G2)2着のルペルカーリアだったこともあり、レースレベルが高かったことは確か。

 3歳時には共同通信杯(G3・10着)、京都新聞杯(6着)に出走するもクラシック出走は叶わず。両重賞ではのちのグランプリホースであるエフフォーリアを筆頭に、シャフリヤールやステラヴェローチェ、レッドジェネシスなどG1や重賞ウイナーとしのぎを削ってきた。

 そして、4歳になる今年に入ると5戦で[2-2-0-1]と本格化の兆しを見せている(着外の1戦も、4着)。鞍上がレース前に「ゲートは遅いが脚力はある」と語っていたように、出遅れ癖の克服が更なる躍進への鍵か。

スターホースの座が視界に入った兄は、故障に泣きターフを去った

 ハートオブアシティはケヴィン(父キズナ)の半弟。ケヴィンといえば若駒S(L)でパンサラッサやアリストテレス、ラインベックなど並み居る強敵を押し退けて勝利。それ以外のレースでもアカイイトやディープボンドに先着しクラシックでの活躍が期待されたスター候補生だった。

 しかし、その若駒S後に故障(左前脚の手根骨骨折)が判明し引退。管理していた長谷川浩大調教師は当時「天皇賞・秋で予後不良になったサイレンススズカと同じ重度の骨折で、レース中だったらまず命はなかった」と無念の声を語っていた。

 のちにパンサラッサがドバイターフ(G1)、アカイイトはエリザベス女王杯(G1)を制しアリストテレスやディープボンドは重賞勝ちやG1・2着の実績を残していることを考えると、ケヴィンがとてつもない素質を秘めていたことが分かる。

 手術を行ったケヴィンは命を繋ぎ止め、現在は乗馬として過ごす。引退した今でも根強いファンがおり、SNSでも愛らしい近況がアップされている。

オーナーの所有馬には古馬になって本格化した実力馬たちがズラリ

 オーナーは吉田千津氏。社台ファーム代表である吉田照哉氏の妻としても知られ、代表的な所有馬に2016年にエリザベス女王杯を制したクイーンズリングや天皇賞・春(G1)を制したイングランディーレなどがいる。

 なんの因果か、氏の所有馬はシンゲン(6歳で重賞初制覇)やダンシングプリンス(5歳で重賞初制覇)、イングランディーレ(5歳でG1初制覇)など古馬になってから本格化した馬が多い。兄の夢も背負って走るハートオブアシティの、今後の躍進に注目したい。

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