
騎乗馬の「7割」が単勝万馬券級の大穴…“最も不遇なルーキー”が掴み取った初勝利
9月11日の中山1R(2歳未勝利・ダート1200m)は、6番人気のネバレチュゴーが後続に6馬身差をつける快勝。嬉しい初勝利を挙げた。
キャリア4戦目にして初のダート戦だったが、果敢に逃げて上がり最速の37秒5をマーク。導いたのは今年3月にデビューしたルーキーの水沼元輝騎手で、これがキャリア62戦目にしてようやく掴んだJRAでの初勝利だった。
同騎手は9月6日に大井競馬場で行われたヤングジョッキーズシリーズのトライアルラウンドで初勝利を挙げており、「周囲の方々から、次は中央(JRA)だねと祝福されていたので、同じ週に勝つことができてとても嬉しい」と喜んだのも無理はない。
今年デビューの新人と言えば、これまで39勝を記録している今村聖奈騎手が大きな注目を集め、角田大河騎手も20勝と活躍中。好スタートを切った同期たちの姿に「ジェラシーはあった」と本音を明かしつつ、「同期を抜かすくらい、これから全部勝ってやるという思いで乗ります」と力強く宣言した。
9月2日に20歳の誕生日を迎えた水沼騎手。今年2月に競馬学校を卒業した38期生の中では最年長で、同期よりも1学年上の“お兄さん”である。
というのも、競馬学校への入学は37期生として。永島まなみ騎手や小沢大仁騎手、初勝利のインタビュー時に祝福の輪を作った永野猛蔵騎手らとともにJRA騎手への歩みを踏み出している。
ところが、1年の留年があったため、彼らとともに表舞台に立つことは叶わず。デビューを前に挫折を味わいながら、「37期生の活躍は騎手になりたいという気持ちを強くしてくれました」と、悔しさを糧に4年かけて競馬学校を卒業。晴れてJRA騎手の一員になる夢を叶えた。
騎乗馬の「7割」が単勝万馬券級の大穴…
しかし、その後に待っていたのも険しい道のり。3月6日のデビューから、7戦連続で単勝オッズ100倍以上の馬に騎乗。角田河騎手が初日から2勝、今村騎手も2週目で勝利を挙げる中、言葉を選ばずに言えば“ノーチャンス”の馬への騎乗がほとんどだった。
その後も騎乗ペースは伸びず、先週までの騎乗数は64回。そのうち3番人気が1回、4番人気が1回、5番人気も1回で、単勝オッズ1ケタ台の馬への騎乗はたったの2回だけ。
実に全体の7割を超える46頭が単勝100倍以上の馬で、騎乗馬の平均人気は「12.6」。これは同期の中でも最も大きな数字となっており、この状況で結果を出せというのも難しい。
それでいて、乗り鞍自体も週に1~2回あるかないかという程度。今村騎手の359回や角田河騎手の360回というのは別格としても、その他の同期を見ても西塚洸二騎手は153回、佐々木大輔騎手は146回、鷲頭虎太騎手が128回、大久保友雅騎手が124回と、多くの同期は倍近くかそれ以上のチャンスをもらっている。
このように回ってくる馬の質やそもそもの騎乗回数を見ると、最も不遇なルーキーの一人と言っても過言ではない。その中で数少ないチャンスを掴み取ったのだから、朝イチのレースから豪快なガッツポーズが飛び出すのも頷ける。
20歳にして数々の苦境を乗り越え、デビューから半年かかってようやく踏み出したはじめの一歩。「大井での勝利が自信となって、積極的に行けた」と振り返ったように、立て続けの白星がさらなる追い風となって、今後はより前向きな騎乗が増えてくることだろう。
ちなみに、初勝利までに馬券に絡んだ“3着2回”は、12番人気・単勝75.6倍のマーベラスアゲンと、9番人気・単勝27.7倍のゲンパチプライドで記録したもの。複勝の払戻しは750円と500円だった。
騎乗馬のほとんどは大穴だけに、ハマった時には高配当の使者となる可能性も大。令和の穴男候補、水沼元輝の今後に期待したい。
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