
最強ステイヤーに直撃した時代の波、武豊「見学」の凱旋門賞にも出走した名馬が引退

10月2日、フランスのパリロンシャン競馬場で凱旋門賞(G1)が開催される。日本からも4頭が出走を予定し、競馬ファンのボルテージも上がっている。
ディアドラが参戦した2020年には、アイルランドの名門、A・オブライエン厩舎から出走予定の4頭全馬が禁止薬物陽性となり出走を取り消し。その中にはジャパンも含まれており、同馬に騎乗を予定していた武豊騎手は、現地にいながらスタンド観戦せざるを得なかった。
C.デムーロ騎手とソットサスが優勝したこの凱旋門賞で、2番人気に支持されたのがストラディバリウス(牡8、英・J&T.ゴスデン厩舎)だ。7着に敗れて以降、2年近く長距離のレースを中心に活躍したが、歴史的名ステイヤーも先日ついに引退を発表。長い現役生活に別れを告げた。
グッドウッドカップ(G1・芝3200m)4連覇、英ゴールドカップ(G1・芝4000m)3連覇など、「弦楽器の名器」から付けられたその名前に恥じない成績を残した。長距離(芝2500m以上を長距離とした場合)のレースでは28戦して【18.4.4.2】(G1に限れば7勝)と圧倒的な強さを誇り、まさに「絶対王者」と言える存在だった。
ブラッドスポーツの側面が強い欧米の競馬界では、大きなタイトルを獲得した馬が早々に引退して種牡馬になるケースも多い。例えばストラディバリウスの父・シーザスターズ(9戦8勝)や、米国三冠・BCクラシックを勝利し3歳で引退したアメリカンファラオ(11戦9勝)だ。種牡馬として次の代に確実に血を繋ぐため、両馬とも3歳で引退している。
ところがストラディバリウスは現在8歳、長い現役生活を経てようやく引退するのにはある事情が見え隠れする。それは「種牡馬としての需要」である。ステイヤーの平地種牡馬としての需要が減少しており、多くは障害レース用の種牡馬として繋養される傾向にある。
ストラディバリウスにも障害レース用種牡馬としてのオファーは届いていたようだ。しかし平地での種牡馬入りを望むオーナーサイドがそれを拒否していた。G1・7勝と実績的には十分誇れるものだが中距離重賞でのタイトルが無く、平地での種牡馬オファーが中々届かなかったのは当然の流れか。
日本競馬界にも共通する「スピード化」の波にさらわれたステイヤー血脈
こういった長距離軽視の風潮は、日本の競馬界でも同様だ。マイルから中距離を中心にトップクラスが集まり、伝統的な長距離レースの菊花賞(G1)や天皇賞・春(G1)でさえ、有力馬が回避することも珍しくなくなった。
「昨年のシャフリヤールやエフフォーリアも揃って菊花賞を回避し、前者はジャパンC(G1)、後者は天皇賞・秋(G1)に出走しています。かつてはクラシックに皆勤するのが当たり前でしたが、コントレイルのように三冠の懸かった馬でもなければ、使うメリットは少ないと考える陣営も増えています。
ただ、一番強い馬が勝つともいわれている菊花賞馬は、古馬になっても一線級で活躍するケースも多く、一概にステイヤーが能力で劣るという訳でもありません。あくまで種牡馬としての評価を気にしてのことかもしれませんね」(競馬記者)
ストラディバリウスは諦めずに現役を続行した結果、無事イギリスのナショナルスタッドでの種牡馬入りを手に入れた。日本でも知られる名馬だけに何とか種牡馬としても成功して欲しいものである。かつて歴史的名馬・リボーを輩出した名門スタッドでどんな産駒が現れるだろうか。
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