【秋華賞(G1)展望】二冠女王スターズオンアースVS「血の因縁」アートハウス&スタニングローズ!
16日、阪神競馬場では3歳牝馬三冠の最終関門、秋華賞(G1)が行われる。最大の注目は、何といっても桜花賞(G1)とオークス(G1)を制した二冠牝馬スターズオンアースの状態だろう。
デアリングタクト以来、2年ぶり史上7頭目の牝馬三冠にリーチをかけているスターズオンアース(牝3歳、美浦・高柳瑞樹厩舎)。桜花賞までは5戦1勝、G3で連続2着と勝ち切れなかったが、初コンビの川田将雅騎手に導かれて一冠目をゲットした。
続くオークスはC.ルメール騎手へ乗り替わり。大外18番枠も嫌われたのか3番人気にとどまったが、道中中団につけると、直線大外を通って豪快に差し切って2つ目のタイトルを手中に収めた。上がり3ハロンタイムはメンバー唯一の33秒台となる33秒7を繰り出していて、着差(1.1/4馬身)以上に強い内容だった。
しかし、オークス後に両前脚の剥離骨折が判明。幸い症状は軽度だったため、手術後は早い時期に乗り込みを開始できた。レース1か月前に美浦に帰厩し、ここまで順調に調整が進められているようだ。
ルメール騎手が跨った1週前追い切りを見届けた高柳瑞調教師も『デイリースポーツ』の取材に「春と比べたら、背が伸びた感じがする。スピードも自分の想像より速くなってきています」とコメント。骨折のアクシデントを乗り越え、さらなる進化を遂げているのだろうか。
18年アーモンドアイ、20年デアリングタクトと近年はぶっつけでの三冠達成がトレンドだ。春に見せた豪脚を再び見せることはできるか。
そんなスターズオンアースを追うのは秋華賞トライアルを制したアートハウスとスタニングローズの2頭だろう。どちらもこのレースとは因縁めいた血統背景を持つ。
オークスで2番人気に支持されながら7着に敗れたアートハウス(牝3歳、栗東・中内田充正厩舎)は前哨戦のローズS(G2)を快勝。春の悔しさを晴らすための第1段階をまずはクリアした。
阪神芝2000mはデビューから3戦2勝と得意にしていて、東京芝2400mよりは走りやすい舞台。長距離輸送がないのもプラスだ。
アートハウスの母パールコードは中内田厩舎の開業当初に活躍した馬で、川田騎手を背に16年の秋華賞に出走。厩舎にとって初G1にもかかわらず、ヴィブロスの2着に健闘した。
古馬になってからの活躍も期待されたパールコードだったが、その後は未勝利のまま繁殖入り。特に川田騎手には思い入れが強いのだろう。娘のアートハウスには香港遠征中だった2戦目のエリカ賞(2歳1勝クラス)を除き騎乗してきた。
オークスではスターズオンアースと二冠を目指す選択肢もあったが、それを断ってまでアートハウスに騎乗。そんな背景もあって、母パールコードが逃したタイトル奪取にかける思いは相当だ。6年越しのリベンジに絶好のチャンスだ。
紫苑S(G3)を制したスタニングローズ(牝3歳、栗東・高野友和厩舎)の母系もまた秋華賞と縁が深い。
同馬の母系はいわゆるバラ一族で、曾祖母ロゼカラーは秋華賞3着、祖母ローズバドは同2着と悔しい思いをしている。今年に入ってからのスタニングローズの充実ぶりから、一族に久々のG1タイトルをもたらしてもおかしくない。
2歳時は5戦1勝と勝ち切れなかったスタニングローズだが、春は1勝クラスとフラワーC(G3)を連勝。オークスでは10番人気に甘んじたが、D.レーン騎手の好騎乗もあって、2着に食い込んだ。秋は紫苑Sで始動し、好位から抜け出す横綱相撲で快勝。重賞2勝目を手にして、再びスターズオンアースの胸を借りる。
一時は不振にあえいでいたバラ一族だが、スタニングローズを筆頭に最近は復調気配。9戦の豊富なキャリアを武器にオークス2着の雪辱を果たし、G1馬へと上り詰めることはできるか。
充実一途のスタニングローズに対して、近2走で一気に評価を下げたのがウォーターナビレラ(牝3歳、栗東・武幸四郎厩舎)だ。
2歳時には無傷の3連勝でファンタジーS(G3)を制覇。阪神JF(G1)で3着、桜花賞でも2着と、その時点では世代牝馬の中心にいた。ところが、オークスは距離も長かったか、13着に大敗。さらに名誉挽回を期した前走・クイーンS(G3)でもまさかの10着に敗れた。
秋は短距離路線に舵を切ってもおかしくなかったが、デビュー3戦目から手綱を取る武豊騎手とともに最後の一冠を取りにきた。
スターズオンアースと同じく、オークスからぶっつけ本番で臨む3頭にも注意が必要だ。
ナミュール(牝3歳、栗東・高野友和厩舎)は、阪神JFと桜花賞で1番人気に支持されたように素質は一級品。桜花賞は大外18番枠も堪えて10着に敗れたが、4番人気まで評価を下げたオークスでは3着に入り、改めて力があるところを証明した。
春は420kg台まで減っていた馬体が、ひと夏を越してどこまで戻っているか。ポン駆けも利くタイプだけに当日の馬体には要注目だ。
プレサージュリフト(牝3歳、美浦・木村哲也厩舎)は、キャリア4戦すべてで後手を踏んでいるようにスタートに課題を残す。ただし、クイーンC(G3)でスターズオンアースを差し切ったように嵌ったときの爆発力は世代牝馬の中でも上位。展開次第で直線一気のシーンがあってもおかしくはない。
アパパネやアーモンドアイを育て上げた「牝馬の国枝厩舎」が送り込むのはエリカヴィータ(牝3歳、美浦・国枝栄厩舎)だ。
前走のオークスは9着に敗れたが、2走前のフローラS(G2)を強い内容で勝利しているように、距離は2000mあたりがベストだろう。鞍上は前走に続き福永祐一騎手が務める。
紫苑Sでスタニングローズと接戦を演じた2~3着馬にもチャンスがある。
前走は逃げてクビ差の2着に粘り込んだサウンドビバーチェ(牝3歳、栗東・高柳大輔厩舎)も実力をつけている。オークスでは他馬に蹴られて放馬。発走目前で無念の競走除外となった。5か月前の悔しさを胸に一発を狙う。
紫苑Sでサウンドビバーチェからクビ差の3着に入ったライラック(牝3歳、美浦・相沢郁厩舎)は、再びM.デムーロ騎手とのコンビ。桜花賞とオークスは凡走したが、型にはまった時の末脚は魅力十分だ。
この他には、8分の4の抽選突破が条件となりそうだが、3連勝中のストーリア(牝3歳、栗東・杉山晴紀厩舎)、ダノンスコーピオンと接戦を演じたこともあるルージュラテール(牝3歳、栗東・矢作芳人厩舎)なども潜在能力を秘める。
2年ぶりに三冠牝馬は誕生するのか。注目の秋華賞は16日の15時40分に発走予定だ。
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