
女性騎手の来日で「菜七子ルール」に違和感!? 互角以上に渡り合うT.マーカンド夫妻の存在
先週末のエリザベス女王杯(G1)から再開した秋のG1シリーズ。今後は年末まで毎週G1レースが開催されるとあって、競馬ファンにとっては心躍る季節といえるだろう。
週末のお祭りムードをより際立たせているのが、短期免許で来日している世界的名手の存在。近年は新型コロナウイルスの問題もあって、外国人騎手の来日が困難だったが、この秋は実に5名がJRAのレースに参戦。激闘に彩りをもたらしている。
なかでもT.マーカンド騎手とH.ドイル騎手は今年が初来日。英国からやってきた2人は夫婦ということでも注目を集め、13日の東京6Rでは“夫婦ワンツー”が話題になった。
夫のマーカンド騎手はJRAデビューから1カ月と経たない間に7勝をマーク。府中の長い直線で見せる豪快なアクションは早くからファンの間でも話題となり、“追える騎手”として評価も上々だ。
一方、妻のドイル騎手はここまで2着が3回あったものの、未だ1着はない。12日の東京6Rでは、日本で初めて1番人気馬に騎乗したが、出遅れが響いて3着に終わった。
47勝を挙げて女性騎手の年間最多勝利記録を更新中の今村聖奈騎手や、5週連続勝利中と勢いに乗っている永島まなみ騎手など、女性騎手が存在感を発揮している中で、やや苦しい戦いを強いられている。
しかし、彼女らを比較した時に大きな違いとして挙がるのが、“減量の有無”である。
出馬表を見るとすぐに分かるのだが、今村騎手には▲の記号が、永島騎手には★の記号が名前の前についている。これは騎手の負担重量の減量を表しているもので、★は「女性騎手の勝利度数50回以下」で4キロ減、▲は「女性騎手の勝利度数51回以上100回以下」で3キロ減を意味している。
JRAは女性騎手の騎乗機会拡大を目的に、2019年3月から新たな負担重量減量制度をスタート。免許の通算取得期間が5年未満かつ勝利度数が100回以下の見習騎手に限らず、女性騎手には◇の記号が付与され、重賞を含む特別競走を除いて永続的に2キロ減の特典を受けることができるようになった。
これには、2016年にデビューした藤田菜七子騎手の存在も、少なからず影響したのではないかともいわれている。JRA側も「今後デビューする女性騎手の騎乗機会を確保し、長く現役として活躍してもらいたいという狙い」と導入時に説明している通り、“第2・第3の菜七子”の登場を意識したのだろう。
しかし、今回短期免許で来日したドイル騎手には◇の記号がついていない。実はこのルール、「日本の女性騎手の騎乗機会増加」を目指すものとなっていて、「JRAと地方競馬の女性騎手にのみ適用」されるものだという。
当時の『サンケイスポーツ』のニュース記事を見ても、「短期免許で来日する外国人騎手は、すでに実績があることから適用されない」と報じられているのだが、この点については発表時から「不公平では?」「分かりにくい」といった声も一部で上がっていた。
ルールの導入から3年、そんな“違和感”がドイル騎手の来日によって再燃。また、今年はM.ミシェル騎手がJRAの騎手免許試験を受けていたこともあって、「じゃあミシェルが合格して“JRAの騎手”になったら減量が適用されるの?」といった新たな疑問も浮上している。
結局、ミシェル騎手は試験の合格が叶わなかったため、この答え合わせは先延ばしに。ドイル騎手に関しても、この秋は現行のルールで戦っていくしかない。
とはいえ、ドイル騎手のホームである英国にはもともと女性騎手の減量制度はない。その状況下で2019年に女性騎手の最多勝記録を更新する年間116勝を記録し、2020年は151勝、昨年は172勝と自身の記録を更新し続けている名手である。そもそも「減量はないの?」などと言う方が失礼にあたるかもしれない。
今年の6月には仏オークス(G1)を勝利。女性騎手として初の欧州クラシック制覇を成し遂げたドイル騎手だけに、JRAでの初勝利も時間の問題かもしれない。
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