【阪神JF(G1)展望】「無敗の大物」ラヴェルVS「神速の末脚」リバティアイランド!
11日、阪神競馬場では2歳女王を決める阪神JF(G1)が行われる。同じ舞台の桜花賞(G1)を占う上でも非常に重要なレースで、勝ち名乗りを上げるのは果たしてどの馬か。早速展望していこう。
最右翼は2戦2勝のラヴェル(牝2歳、栗東・矢作芳人厩舎)だろう。
夏の小倉で新馬戦を勝利し、3か月半ぶりの前走・アルテミスS(G3)で連勝を飾った。前走はメンバー最速の末脚を繰り出しており、阪神コースは初となるが、直線の長い外回りはうってつけの舞台といえそうだ。
半姉が今年の秋華賞(G1)2着、オークス(G1)3着のナミュールで臨戦過程は酷似している。
ともにデビュー2連勝を飾ったが、いずれもスタートで立ち遅れての差し切り勝ち。また、レースこそ違うが、2戦目はともに東京マイル戦を使われ、勝ちタイムは全く同じ1分33秒8だった。姉のナミュールは阪神JFで1番人気4着という結果に終わったが、妹はそのリベンジを果たせるか。
ハービンジャー産駒の姉に対して、ラヴェルはキタサンブラックの2年目産駒。初年度からイクイノックスというG1馬も出しており、今後が楽しみな存在だ。
ただしキタサンブラックの仔はサウスポーが多く、産駒の通算勝率は右回りの9.0%に対して、左回りは17.4%と大きく違う(先週末時点)。またイクイノックスのようにレース間隔は空いた方がいいタイプの産駒も多く、前走アルテミスSからは中5週だ。
前走に引き続き、鞍上を務めるのは坂井瑠星騎手。今年は秋華賞でG1初制覇を遂げた若武者が今度は師匠・矢作調教師とのコンビでG1戴冠を狙う。
そんな坂井騎手とラヴェルを追いかける2番手グループの筆頭格がリバティアイランド(牝2歳、栗東・中内田充正厩舎)だろう。
圧巻だったのは7月の新潟芝1600mで行われたデビュー戦。スタートでやや立ち遅れると道中は中団を追走した。新潟外回りの長い直線で外に出されると、グングンと加速。あっという間に他馬を置き去りにし、余裕の手応えで2着馬に3馬身差をつけた。
2歳戦らしいスローペースだったため、勝ちタイム(1分35秒8)は平凡だったが、上がり3ハロンがなんと31秒4。これは古馬戦を含めたJRA史上最速タイという驚愕のラップだった。
この時点で来春の牝馬クラシック最有力とまで呼ばれたが、2戦目のアルテミスSでまさかの2着に敗れてしまう。
初戦の勝ちっぷりが評価され、断然人気に推された2戦目。直線で進路が塞がりなかなか追い出すことができず、先に抜け出したラヴェルをクビ差まで追い詰めたところがゴールだった。
2戦目で敗れはしたものの、負けて強しの内容。今回は不利がなければ逆転は十分可能だろう。2歳戦にめっぽう強い中内田厩舎×川田将雅騎手のコンビも心強い。ドゥラメンテから新たな大物は誕生するか。
別路線組からはリバティアイランドと同じドゥラメンテ産駒のドゥーラ(牝2歳、栗東・高橋康之厩舎)も勝機を伺う。
夏の札幌で3戦し、2勝を挙げたドゥーラ。初戦はスタートで立ち遅れて、ドゥアイズの4着に敗れた。その後、中1週で向かった2戦目の未勝利戦でドゥラエレーデに完勝すると、続く札幌2歳S(G3)はドゥアイズを競り落とし、新馬戦のリベンジを果たした。
3戦のキャリアは魅力だが、洋芝経験しかないのがやや気掛かり。ただ秋の阪神開催は10週目を迎え、芝もかなり荒れてきている。軽快な追い切りの動きからも、阪神の芝をあっさりこなしても不思議ではないだろう。
デビューから全3戦で手綱を取る斎藤新騎手は、これがG1・5度目の騎乗。過去4回は全て2桁着順に終わっているが、もし勝てば同期では一番乗りとなる。2000年以降に生まれた騎手として初のG1勝利も懸かかっている。
関東馬の中ではウンブライル(牝2歳、美浦・木村哲也厩舎)の素質が頭一つ抜きんでている。
6月の東京で新馬勝ちを収め、その後は4か月間隔を空けてもみじS(OP)で1.3倍の人気に応え、2連勝を飾った。いずれも1400m戦で、初のマイルに対応できるかがポイントとなりそう。
血統背景からはマイルをこなす可能性は十分ある。同じロードカナロアを父に持つ全兄のステルヴィオはマイル前後の距離で活躍したイメージが強いが、皐月賞(G1)4着、毎日王冠(G2)2着など、3歳時は2000mまでが守備範囲だった。
デビュー戦から手綱を取るC.ルメール騎手も前走後に「1600mも問題ない」とコメントしており、1ハロンの延長は気にしなくていいだろう。
同じく関東馬のリバーラ(牝2歳、美浦・高柳瑞樹厩舎)もチャンスは十分ある。
新馬戦は3着に惜敗したが、続く未勝利戦を7番人気で勝利。さらに10番人気で迎えた前走のファンタジーS(G3)をまんまと逃げ切って重賞ウイナーに上り詰めた。
その前走は2か月半ぶりのレースで馬体重は14kg増とまさに成長途上。再度の阪神遠征となるが、目下の充実度なら上位に食い込む余地は十分ある。
モリアーナ(牝2歳、美浦・武藤善則厩舎)は新馬、コスモス賞(OP)で連勝を飾り、今回が4か月ぶりの実戦。父エピファネイア×母父ダイワメジャーという血統はいかにも2歳マイル戦向きといえそうだ。
夏の2歳ローカル重賞を制し、早くから阪神JFを目標にしていた2頭も不気味な存在だ。
1頭目は新潟2歳S(G3)を制したキタウイング(牝2歳、美浦・小島茂之厩舎)。福島の新馬戦(芝1200m)で4着に敗れたが、続く新潟マイルでの2戦はいずれも上がり最速の末脚を繰り出して勝利した。ただし、前走の勝ちタイムはレース史上最も遅かったため、“低レベル説”が囁かれている。これを覆せるか。
2頭目は世代重賞一番星のブトンドール(牝2歳、栗東・池添学厩舎)。函館2歳S(G3)は大外を突き抜ける強い勝ち方でデビュー2連勝を飾ったが、続くファンタジーSは出遅れが響き2着に敗れた。ただし、前走はあくまでも本番を見据えた仕上げだったはず。初距離が課題とはなるが、完成度の差であっさり克服しても驚けない。
この他には、札幌2歳Sでドゥーラの2着に入ったドゥアイズ(牝2歳、栗東・庄野靖志厩舎)、スタートセンス抜群で逃げ候補のサンティーテソーロ(牝2歳、美浦・栗田徹厩舎)、抽選突破が条件となるが、アルテミスSで3着に逃げ粘ったアリスヴェリテ(牝2歳、栗東・中竹和也厩舎)など伏兵陣も多彩だ。
29頭がエントリーした今年の阪神JF。ラヴェルが無傷の3連勝を飾るのか、それともリバティアイランドがリベンジを果たすのか、はたまたノーマークの激走はあるのか。注目の2歳女王決定戦は、11日の15時40分に発走を迎える。
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