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たった一度G3ではなく「重賞」として格付けなしのダートで開催された共同通信杯を勝った怪物とは

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 今週はクラシックの行方を占う重要な一戦・共同通信杯(G3)が開催される。17年以降、勝った馬でクラシックを制したのは一昨年のエフフォーリアだけだが、昨年の2着馬ジオグリフは皐月賞(G1)を、一昨年3着馬のシャフリヤールは日本ダービー(G1)を勝利するなど、3着内に入った馬もクラシックで活躍している。

 遡っても勝ち馬には名馬の名前がズラリ。三冠馬ミスターシービーとナリタブライアン、ダービー馬ダイナガリバーやアイネスフウジン、ジャングルポケットの名前もある。中には『ウマ娘 プリティーダービー』(Cygames)でもお馴染みのエルコンドルパサーもいる。

 98年の共同通信杯を勝っている同馬だが、その後の活躍があまりにも鮮やかすぎて、このレースを勝っていたことを知らない方も意外にいるのではないだろうか。そして、このレースはグレード制が導入された84年以降、今のところ唯一無二のレースとなる異例のレースとなった。

 今回は、そんなエルコンドルパサーが勝った98年の共同通信杯(当時は共同通信杯4歳S)を振り返ってみたい。

 これも意外に知らない方が多いと思うが、エルコンドルパサーは新馬戦でダートを走っている。97年11月の東京・ダート1600m戦だったが、後手を踏んで最後方からの競馬。直線だけで前をまとめて差し切って勝ったのだが、後に京成杯(G3)を勝つマンダリンスターを7馬身ちぎる圧勝で、2着と3着の着差は「大差」となっている。

 さらにこのレースでエルコンドルパサーは上がり最速の37.2秒でフィニッシュしているが、2位が39.6秒で2.4秒も遅かった。ダート戦でいきなりこのパフォーマンスを見せていたのだ。

 次走は年明けで4歳500万下(現3歳1勝クラス)の条件戦。中山・ダート1800mで争われたレースだったが、新馬戦の圧勝が評価されて単勝1.3倍の圧倒的1番人気。この時も後方から徐々にまくるように上がっていって、直線で後続を9馬身離す圧勝劇を演じた。

 この時点で化け物が現れたと感じた人もいただろうが、ダートでの強さだったことや前年の朝日杯3歳S(G1・現朝日杯フューチュリティS)で圧勝したグラスワンダーという怪物がいたため、その陰に隠れた存在だった。

「重賞」として格付けなしのダートで開催

 新馬、条件戦と圧勝してきたエルコンドルパサーが、次走に選んだのが共同通信杯4歳Sである。ここで初めて芝への適性が試される一戦になるはずだった。しかし、レース当日は1Rから影響が出るほどの降雪に見舞われる。結局、この日の東京競馬は全レースがダート戦に変更され、重賞として組まれていた共同通信杯4歳Sも本来の芝1800m戦からダート1600mに変更された。さらにグレード格付けもG3からGと格付けなしに変更される異例の対応がなされた。

 そんな混乱の中で開催されたレースだったが、エルコンドルパサーはここでも単勝1.2倍とやはり圧倒的な1番人気に支持される。

 雪はすでに止んで曇り空だったが、馬場は水が浮く泥田のような不良馬場。スタートを切ると芝コースをまたいでダートコースへ。この時点でエルコンドルパサーは中団よりやや後ろの外目を追走していた。

 3コーナー過ぎあたりから進出し始め、4コーナー3番手から最後の直線へ。鞍上の的場均騎手(現調教師)は残り400mを過ぎたところでも押して馬を促すだけだったが、残り200mの手前で3発ステッキを入れて気合いをつけると、そこから一気に伸び始めてゴール前では2着を2馬身離す完勝を飾った。不良馬場で足抜きが良くなっていたとは言え、上がり最速の35.6秒で走られては、後続は手も足も出なかった。3着馬は2着から6馬身後方と勝ったエルコンドルパサーの強さだけが際立つ勝利となった。

 この後の活躍はご存じの通り。当時は東京マイルで開催されていたニュージーランドT4歳S(G2・現ニュージーランドT)で初芝ながら楽勝。その勢いでNHKマイルC(G1)も順当に勝利して春シーズンを終える。

 秋は名勝負と名高い毎日王冠(G2)でサイレンススズカに後れをとって初の黒星となったが、ジャパンC(G1)では女帝エアグルーヴ、ダービー馬スペシャルウィークを完封。怪物ぶりを存分に見せつけて翌年は海外へ。そして凱旋門賞(仏G1)で2着の快挙を成し遂げた。

 エルコンドルパサーはグラスワンダーが故障で休養している間に、もう1頭の的場騎手のお手馬として現れた「怪物」だった。毎日王冠でグラスワンダーとの直接対決となって、的場騎手はグラスワンダーを選んだため、鞍上は蛯名正義騎手(現調教師)にチェンジしたが、グラスワンダーは国内で、エルコンドルパサーは海外でその怪物ぶりを発揮したのだった。

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