“菜七子世代”の筆頭株が挑む大一番、2つ目のG1タイトルと年間100勝へ
12月も折り返しを迎え、気が付けば2022年も残りわずか。中央競馬の開催もホープフルS(G1)が行われる28日が最終日となり、残すところ5日間となった。
年の瀬になると一層注目が集まるのが、騎手たちの個人成績。気になるリーディング争いは、先週の阪神ジュベナイルフィリーズ(G1)を制した川田将雅騎手が139勝で首位を快走中。悲願のタイトル獲得が迫っているだけでなく、勝率.265も総賞金30億円超えも断トツで、野球界に続く新たな三冠王の誕生も現実味を帯びてきた。
さらに今年の特徴は、現時点で5人が年間100勝をクリアしているというところ。加えて、デビュー4年目の岩田望来騎手が99勝で初の100勝に王手をかけており、来年2月に騎手引退が決まっている福永祐一騎手も98勝で秒読み段階。同一年に7人が100勝超えとなれば、ここ5年では最多となる。
そしてもう一人、キャリア初の年間100勝を視界に捉えている男がいる。デビュー7年目の坂井瑠星騎手だ。
今年が7年目の2016年デビュー組というと、JRAでは16年ぶりとなる女性騎手・藤田菜七子が大きな話題を呼んだ世代。坂井騎手はその中で1年目から25勝を挙げる活躍を見せ、関西所属の新人騎手では最多の白星を記録する幸先の良いスタートを切った。
その後も若くして海外研修に出向くなど研鑽を積み、昨年は53勝を挙げる活躍。迎えた2022年も順調に勝ち星を積み上げ、なんと8月の時点で昨年マークしたキャリアハイを更新。勝ち星はすでに91まで伸びている。
勝利数だけでなく、3月にはバスラットレオンと挑んだドバイのゴドルフィンマイル(G2)で優勝。海外重賞初制覇を達成すると、10月にはスタニングローズとのコンビで秋華賞(G1)を制覇。嬉しいJRA・G1初勝利も手にするなど、大舞台での存在感も光った。
飛躍の要因を探ってみると、まず挙げられるのが馬質の向上。それを示しているのが「馬主別の騎乗数」である。
▼坂井瑠星騎手・馬主別騎乗数
1位 49回 サンデーレーシング
2位 35回 スリーエイチレーシング
3位 30回 シルクレーシング
4位 28回 キャロットファーム
これまでの6年間でしっかりと自身の評価を高めてきたこともあり、今年はノーザン系クラブの有力馬への騎乗が大幅に増加。思えば初のG1勝利となった秋華賞のスタニングローズも、サンデーレーシングの所有馬だった。
一方、見逃せないのが2位に割って入ったスリーエイチレーシングとの関係性。昨年は同馬主の管理馬に1度しか騎乗がなかったのだが、今年はすでに35回も騎乗。8勝を挙げ、勝率22.9%に連対率も48.6%というハイアベレージを残している。
坂井騎手とスリーエイチレーシングというと、この週末も朝日杯フューチュリティS(G1)にドルチェモアで参戦。2戦2勝で出世レースのサウジアラビアRC(G3)を制した素質馬とあって、『netkeiba.com』の予想オッズでもダノンタッチダウンに迫る2番人気と注目度は高い。
先週の阪神JFではラヴェルで悔しい思いを味わっただけに、その胸中では雪辱を期す気持ちが強く燃えていることだろう。またそれ以上に、オーナーにこの一年の恩返しをするためにも、何としても良い結果を届けたいところだ。
坂井騎手といえば、かねてから「リーディングジョッキーになる」という夢を公言してきた。その夢を叶えるためには、多くないチャンスの中でしっかりと結果を残し、信頼関係を深めていくことが必要不可欠。飛躍の2022年に満足することなく、いかに良い形で締めくくって来年につなげるかというところも重要になってくる。
そういった意味でも、大きなアピールのチャンスとなるのが朝日杯FS。お得意様の期待に応え、2つ目のG1勝利を。そしてその先には、初の年間100勝という新たな勲章も待っている。
残り5日間の中央競馬の開催で、最後にどれだけ爪痕を残すことができるか。2023年のさらなる大爆発に向けて、坂井瑠星騎手のラストスパートから目が離せない。
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