武豊が惚れた大物3歳牝馬が待望の復帰戦! 福永祐一が「コントレイル以上」と語る父のキャリアと酷似
17日に阪神競馬場で行われる甲東特別(2勝クラス)で、超がつく大物牝馬が待望の復帰戦を迎える。
「やっと無事にここまで来れました」(キーファーズサロンより)
武豊が惚れた大物3歳牝馬が待望の復帰戦!
管理する石橋守調教師がそう感慨に耽るのは、シルバーステート産駒のロン(牝3歳、栗東・石橋守厩舎)だ。昨秋、デビュー2戦2勝で牡馬を相手に野路菊S(OP、芝2000m)を勝ったことで注目を集めたものの、その後に屈腱炎を発症。今回が約1年3か月ぶりのレースとなる。
2歳秋に牡馬を相手に1800m以上のオープン競走を勝てる牝馬は、ごく一握りの素質馬だ。実際にロンが勝った野路菊Sは本馬までの過去5年間、勝ち馬がいずれも未来の重賞ホースという出世レースだが、牝馬が勝ったのは1600mで行われた2003年のツルマルシスターまで遡る。
また、その翌月に行われるアイビーS(L)も有名な出世レースだが、現行の1800mで行われるようになった2014年以降、牝馬で勝ったのはソウルスターリングとクロノジェネシスという後にG1を複数勝った名牝。これだけを見ても、この時期の牝馬が牡馬のトップクラスを相手に結果を残すことが容易ではないとわかる。
だが、ロンはそんな“壁”をあっさりと突破。それも野路菊Sは4馬身差の圧勝である。「今後が楽しみですよ」とは、手綱を取った武豊騎手の話だ。この時点で、ロンが翌年の牝馬クラシックの有力候補に名を連ねたのは言うまでもないが、その後に屈腱炎になってしまったことは、関係者だけでなく多くのファンを落胆させた。
「夏に放牧先の三嶋牧場の公式YouTubeで『ロン始動!』という動画がアップされたので、10月の秋華賞(G1)を楽しみにしていたファンも多かったようですが、結局ここまで復帰が延びることになりました。
10月半ばには帰厩していたのですが、やはり屈腱炎ということで陣営は慎重に調整していました。その分、乗り込み量は十分。坂路を中心に何本も時計を出しているだけに、今回は満を持しての復帰戦になりそうです。期待の大きい馬ですが、まずは無事にというのが陣営の本音でしょうね」(競馬記者)
陣営が慎重に慎重を重ねているのも期待の裏返しと言えるが、本馬の父がシルバーステートという点も決して無関係ではないだろう。
「排気量の大きさでいうと、今まで乗った馬のなかで間違いなく一番で、その評価はコントレイルと出会った今でも変わりません」
ロンの父シルバーステートは主戦の福永祐一騎手がここまで言い切るだけあって、現役時代「幻の三冠馬」と称されるほどの期待馬だった。しかし、2歳秋に屈腱炎を発症して無念の長期休養……。クラシック候補に挙げられながらも、屈腱炎で生涯に一度の舞台をすべて棒に振ってしまったキャリアは娘のロンとそっくりだ。
その後、シルバーステートは長期休養の遅れを取り戻すかのように2勝クラス、3勝クラスを楽勝。だが、天皇賞・秋(G1)の前哨戦となる毎日王冠(G2)でいよいよ一線級と矛を交えるというところで2度目の屈腱炎となり、引退が発表された。
「能力があるのは判っている馬ですけれどもそこは何ともやってみないと判りませんですからね。何よりここまで来れたことですね」(キーファーズサロンより)
シルバーステートの娘ロンの復帰は全国のファンにとっても待望に違いないが、ここまでたどり着けたのも石橋調教師ら関係者の尽力の賜物だろう。
果たして、ロンは父シルバーステート同様に復帰以降も快進撃を見せることができるか。そして、父が出走を果たせなかった大舞台で夢を掴むことができるだろうか。かつて主戦の武豊騎手が惚れ込んだ大物牝馬の第2章の幕が上がる。
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