【徹底考察】日本ダービー(G1) ディーマジェスティ「レコード勝ちの皐月賞はフロックなのか? 皐月賞馬の『現在地』を考察」
『考察』
ラブリーデイが持つ1:57.8のコースレコードに0.1秒差という、この時期の3歳馬からすれば破格の1:57.9というレースレコードで皐月賞(G1)を制したディーマジェスティ。
その強い勝ち方で早くも「今年の中心はディーマジェスティ」という声がある一方、逆に1000mの通過が「58.4秒」というハイペースの中で後方14番手を追走し、最後の直線であまりにも鮮やかに伸びたその勝ちっぷりを「フロック視」する声も決して小さくはない。
一体、皐月賞のディーマジェスティは、たまたま上手くいっただけの「偽物」なのか、それともこれが紛れもない「本物」の力なのか。
今のところ「展開に恵まれたことは確か。だが、さらに後ろで、さらに多くの展開利を受けていたマカヒキを完封したのだから、ディーマジェスティは3歳トップクラスの実力を持っている」という各マスコミの見解が、最も的を得ているのではないか。
ただ、これも厳密にいえば補足が必要だろう。
無論、マカヒキを弱いというつもりはない。ただ、ハイペースを後ろから追走したから、最後に伸びてくるのは当然と考えるのは、やや安直だ。
例えば、今年の皐月賞を10番手以下から競馬をして、最終的に上位で入線したのはディーマジェスティとマカヒキの2頭だけである。逆に述べれば、道中10番手ながら7着に沈んだナムラシングン以下、後方で競馬をした馬たちは何故、大きな展開利があったにも関わらず最後の直線で伸びなかったのか。
それは単に力が足りなかったということもあるが、厳密に述べれば「道中の追走にスタミナを奪われ、最後には脚を伸ばす余力がなかったから」である。そして、当然ながらそれはディーマジェスティやマカヒキも同等の影響を受けている以上、同じことが言える。
つまり、マカヒキがディーマジェスティよりも後ろに位置取っていながら、最終的には1.1/4馬身差を付けられて2着に敗れたのは、単にマカヒキよりもディーマジェスティが強いということを示しているのではない。
これは、マカヒキよりもディーマジェスティの方が「スタミナに優れている」ことを強調しているだけであり、当然ながら日本ダービーの勝敗にとって一つの要素でしかないということだ。
従って、もしも今回の日本ダービーが皐月賞のようなハイペースの争いになれば、ディーマジェスティの勝機は大きく膨らむこととなるのだが、実はそのことに関しては本馬にとって、あまり好ましくないデータがある。
皐月賞が中山2000mという条件で行われるようになった1947年以降、1分58秒台で決着したのは5回(今年は唯一の1分57秒台)あり、その内今年と同じようにスタート3ハロンよりもラスト3ハロンの時計が掛かった「前傾ラップ」だった皐月賞は下記の3回である。
参考「前傾ラップ」
2016年 1:57.9 34.2-35.6 ディーマジェスティ
「前傾ラップ」
2013年 1:58.0 34.1-35.9 ロゴタイプ(サドラーズウェルズ)
2009年 1:58.7 34.8-35.6 アンライバルド(サドラーズウェルズ)
2002年 1:58.5 35.0-35.8 ノーリーズン(ブライアンズタイム)
「後傾ラップ」
2015年 1:58.2 35.2-34.7 ドゥラメンテ
2004年 1:58.6 35.3-34.4 ダイワメジャー
注目して頂きたいのは今年と同じ「前傾ラップ」だった2002年、2009年、2013年だが、今年を含めて勝ち馬に共通していることは、まずクラシックが「皐月賞1冠」で終わっていること、そして何よりも「日本ダービーで馬券圏外」に消えていることだ。
これはディーマジェスティとって、この上なく不吉なデータであるのは述べるまでもないだろう。
そして、もう一つの共通点として、前述した3頭はいずれもスタミナに優れ持続力に強いサドラーズウェルズ、もしくはブライアンズタイムの血を持っていた。それが今年のディーマジェスティの母父と母母父にあたるという点は非常に興味深いところだが、詳細は【血統診断】をご覧頂きたい。
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