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「世紀の一戦」だからこそ……数多の奇跡と衝撃をファンにもたらした武豊騎手、エアスピネルで「ダービーマジック」の舞台は整った!?

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takeyutaka0223-1xs.jpgSports Graphic Number 888号より(文藝春秋)

 競馬界の顔、武豊騎手。5月23日時点で通算勝利数は3981勝と前人未到の記録を更新し続けている。

 そんな武騎手にとっても、今週末に開催される日本ダービー(G1)はやはり特別だ。すでに1998年のスペシャルウィークから2013年のキズナまで通算ダービー勝利数は「5」。武騎手以外にダービーを3勝した騎手すらいないのだから、その圧倒的な成績が分かるというものだ。それでもなお、武騎手は「何度でも勝ちたい」と語っている。ホースマンの夢であるダービーの魅力は、他のレースとは明らかに異なるということだ。

 今年のダービーで武騎手が騎乗するのはエアスピネル。ここまで朝日杯FS、弥生賞、皐月賞とまさに王道を歩み、それぞれ2着、3着、4着(5位入線)とそれなりの結果を残してダービーに臨む。その操縦性と武騎手との息はピッタリの印象で、常にベストなレースができているように思える。

 しかし、今年の3歳クラシックは空前のハイレベル世代と誰もが口を揃える。サトノダイヤモンドにマカヒキ、リオンディーズにディーマジェスティという「中核」はもとより、マウントロブソンやスマートオーディン、ヴァンキッシュランなどもその真の力を図りかねるポテンシャルを有している。エアスピネルもその強さを形成する一頭であるが、この世代で1着を獲得するのは、どの馬にも共通するが極めて至難。同馬に関しては、常に完璧なレースをしながら「中核」メンバーの後塵を拝するレースが続いているだけに、その険しさはより明確に映る。

 武騎手自身もこの世代の強さを認めており、「例年ならエアスピネルが勝っている」「今年はどうなっているんだ」と事あるごとに答えている状況だ。

「それでも、武豊なら」と思う人は多いに違いない。ディープインパクトは別として、スペシャルウィークやアドマイヤベガ、タニノギムレットとキズナは、決して絶対的な立場でダービーを制したわけではない。アドマイヤベガ以外は1番人気での出走ではあったが、当時すでに日本競馬最高の騎手だった武への期待が人気に反映した部分もある。

 それでも、武騎手は勝ってきた。セイウンスカイにテイエムオペラオー、ナリタトップロード、シンボリクリスエス、エピファネイアと、破ってきた上位の相手もその後名馬への階段を上った馬だらけだ。それでも勝利をもぎ取ってきたという事実はこれ以上ない武器だろう。第80回開催という節目の13年にはキズナを見事に勝利に導くなどその「役者」っぷりも他の追随を許さず、1日の天皇賞・春でも見せたように、その勝負強さはいまだ健在である。

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