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JRA安藤勝己氏、オグリを生んだ笠松競馬の闇。騎手や調教師は何故「禁断の馬券購入」に踏み切ったのか。「1頭の調教で200円」売上絶好調の裏側で……【特別連載①】

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笠松競馬は、このまま閉鎖せざるを得なくなるんじゃないですか」

 笠松競馬元調教師は力なく語った。

 あのオグリキャップ、アンカツこと安藤勝己を育み、JRAの大舞台に送り出した地方の雄、笠松競馬が存続の危機に立たされている。

 昨年6月、調教師1人、騎手3人が競馬法で禁じられている馬券購入の容疑で家宅捜索を受け、8月には免許を更新されず廃業。年が明けてからこの4人を中心に競馬関係者20人前後が所得隠しの容疑で税務調査を受け、その総額は2億円にも達するという。免許を更新されず廃業した調教師、騎手の4人は3月3日に書類送検された。

 書類送検されたということは、検察が彼らを今後刑事事件として立件するかどうかの瀬戸際に立たせたことを意味する。既にこの4人は免許更新されず、競馬場から離れているため、立件されたとしても笠松競馬の開催に直接は影響を及ぼすものではない。しかし、公正が大前提の競馬の根源を揺るがす事件だけに、立件されれば笠松競馬、地方競馬の信用は崩壊し、存続すら危ぶまれる事態に発展することは間違いない。

 しかし、その笠松競馬は既に存亡の崖っぷちにある。開催は1月から中止されたままで間もなく2カ月。月内どころか4月前半の開催再開も厳しい状況だという。岐阜県競馬組合は真相究明に向けた第三者委員会を立ち上げているが、調査は遅々として進んでいないためだ。事件の全貌が解明できなければ、開催を再開することはできない。開催中止の間、調教師、騎手、厩務員はさらに困窮し、開催再開へのランプは深紅に灯っている。

 昨年免許更新されなかった調教師に続いて、関与が疑われている別の調教師は管理馬が一頭もいなくなり免許を返上して既に廃業。上位で活躍していたベテラン騎手ですら開催中止でほぼ収入が途絶え「飲食店でアルバイトを始めた」という。

「騎手は固定給なし。レースの進上金と1頭200円の調教騎乗料だけ。開催中止前には毎日夜が明ける前から朝8時前後まで30頭以上の調教をつけなければなりませんでした。それでも6000円ぽっち。開催中止で調教頭数も減って6000円もらうことも難しくなりました。家族持ちじゃなくても、これではとても生きていけませんよ」

 笠松競馬関係者は絶望的な表情で訴える。厩務員は各厩舎に所属し、固定給が支給されるので騎手ほど悲惨ではないにしろ、開催中止で進上金はなく厳しい生活を余儀なくされていることに変わりはない。

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