JRA C.ルメール「元相棒」カフェファラオのフェブラリーS(G1)連覇に何を思う? 昨年王者を捨てた経緯と、生まれた「確執」…重賞19連敗中トンネルの出口は
先週土曜の京都牝馬S(G3)では、岩田望来騎手がデビュー98回目の挑戦にして、ついに重賞制覇。さらに日曜のフェブラリーS(G1)の20分前に行われた小倉大賞典(G3)を1番人気のアリーヴォが勝ったことで、年明けから続いていた重賞1番人気の連敗記録も18で止まった。
先週、様々な負のジンクスが止まった中、この男の悪い流れは止まらなかった。この日のフェブラリーSで重賞の連敗が19に伸びたC.ルメール騎手である。
この日も朝一番の1Rを幸先良く勝利し、8Rまで4勝を含む騎乗機会6連続連対。今のルメール騎手は間違いなく乗れている……いや、これぞ5年連続リーディングジョッキーの“平常運転”だったといえるだろう。
無論、この日のフェブラリーSの騎乗馬は10番人気のテオレーマ。さしものルメール騎手も、この馬で連敗を止めろというのは酷な話だ。だが、それ以上に深刻なのが、優勝したカフェファラオに騎乗していなかったという流れの悪さではないだろうか。
ここまで6戦連続で自身が主戦を務めており、今回のフェブラリーSで騎乗していても何ら不思議ではなかったはずのカフェファラオが勝利した光景には、ルメール騎手としても思うところがあったに違いない。
「カフェファラオの福永騎手が『まだ復帰していない段階で依頼を頂いた』と話していましたが、かなり早い段階から『カフェファラオのフェブラリーSにルメール騎手が乗らない』という話はありました。
その背景には、クロパラントゥという馬の存在があったとか。2月一杯で引退される藤沢和雄厩舎の所属で、地方から6連勝中の期待馬でした。ルメール騎手には、どうやらこの馬の打診があったようですね。
しかし、予定していた根岸S(G3)を除外されたことで大きく歯車が狂いました。フェブラリーSも(出走の)当落線上にいたんですが、やはり除外されたことで結局、石坂公一厩舎のテオレーマに騎乗した経緯があります」(競馬記者)
一昨年に鹿戸雄一厩舎でデビューしたクロパラントゥだったが、3戦未勝利のままJRAからホッカイドウ競馬へ移籍。そこで3連勝を飾ったことで、再びJRAに“出戻り”すると、今度は藤沢和厩舎の所属馬になった。
その後も勢いは止まらず、ルメール騎手とのコンビで中央3連勝。一気のオープン入りを決めたことで、陣営もフェブラリーS挑戦を決めたようだ。しかし、賞金確保のためにエントリーした根岸Sで想定外の除外……。翌週のバレンタインS(OP)へ矛先を替えたものの、まさかの大敗を喫してフェブラリーS出走が絶望的となった。
ルメール騎手としても、藤沢和調教師とは自身初の日本ダービー(G1)制覇(レイデオロ)や、グランアレグリアの主戦を任されるなど蜜月の仲。恩師の最後のG1挑戦ということで、カフェファラオよりもそちらを選んだということなのだろう。
その一方で、カフェファラオの堀宣行厩舎からすれば、ルメール騎手に捨てられた格好だ。
「堀厩舎もルメール騎手とは、藤沢和厩舎に匹敵するほどの蜜月関係でしたからね。わかりやすいのが日曜日の出走馬で、堀厩舎からはカフェファラオを含めた5頭がすべて東京で出走。いずれも過去にルメール騎手が騎乗した経験がある馬でしたが、すべて福永騎手か横山武史騎手に振られています。この関係が後々こじれなければ良いのですが……」(同)
12月のチャレンジC(G3)から約2か月以上、重賞勝利から遠ざかっているルメール騎手。そのチャレンジCを勝ったソーヴァリアントが先日骨折したことが発表されると、今度はAJCC(G2)で騎乗したオーソクレースも屈腱炎で長期休養を余儀なくされるなど、まさに踏んだり蹴ったりの状況だ。
「いつも通り後ろからになりました。スローペースになって、この馬場で差してこられなかった」
昨年のJBCレディスクラシック(G1)を制した末脚自慢のテオレーマだったが、この日は天気も展開も味方せず14着の大敗に終わった。重賞17勝を挙げた昨年はJRA・G1開幕戦のフェブラリーSを制して、幸先の良いスタートを切っていたルメール騎手。5年連続リーディングジョッキーの苦悩はいつまで続くのか。春のG1戦線の足音が近づいている。
(文=銀シャリ松岡)
<著者プロフィール>
天下一品と唐揚げ好きのこってりアラフォー世代。ジェニュインの皐月賞を見てから競馬にのめり込むという、ごく少数からの共感しか得られない地味な経歴を持つ。福山雅治と誕生日が同じというネタで、合コンで滑ったこと多数。良い物は良い、ダメなものはダメと切り込むGJに共感。好きな騎手は当然、松岡正海。
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