パチンコ店での「貸し借り」事情… ○○は騙されやすい？【松戸檸檬の人生ちらみせ道中膝栗毛】

お人好しは騙されやすい。そんな私がホールで出会ったお婆さんとの思い出

　私のコラムを読んでいる方はうすうす私がどんな性格なのか想像がついている頃でしょう。周りから良く言われる時は「気遣いの人」。悪く言うなら「お人好し」なのかもしれない。ただ、周りからそう言われるだけで、自分ではそんなことはないんだけどな…なんて思っている松戸檸檬です。どうもこんにちは。

　大人になった私は、仕事では殺伐とした雰囲気を醸し出し、プライベートについても「一切話さない」を徹底していたけれど、本質は変わっていません。ただ、様々な人に出会い経験値を積むことで、人とのつきあい方を学んだだけ。そんな私が若かった時も我ながら「お人好し」だったかもしれないなという出来事があったので、少しばかりお付き合いください。

ホールでいつも負けているお婆さんからお願いされたこととは……

　私が二十歳そこそこの時、パチンコ屋で何度か顔を合わせるお婆さんがいた。もしかしたら、その方は50代ぐらいだったのかもしれない。いつもパチンコで負けている様子のお婆さんと会えば軽い世間話をする仲になった頃、思い詰めたような顔で声をかけられた。

「娘の結婚式があるけれど式に持っていくような鞄を持っていないから貸してほしい」

　いつもブランド物を身につけていた私なら、持っているだろうと思ったそうだ。その場に大人の私がいたならば「いや、ブランドに拘らなくても良いのではないか？ 」だとか、バッグのレンタルなどを勧めていただろう。他人との貸し借りなんて百害あって一利なし。揉める要素しかないもの。しかし、若かった私は困っているお婆さんに二つ返事で貸すことにした。

　お婆さんが私の鞄を持つにはデザインが若すぎる。家に帰ってクローゼットを漁ると、誰かの物なのだろうか、隅っこに追いやられ存在を忘れられていたヴィトンの黒のエピを発掘。これならシックで良さそうだ。お婆さんは私の家の近くまで来ると言うので、近くのコンビニで待ち合わせをして鞄を貸した。

　そのことを当時の彼氏に事後報告をすると「お前バカだな、それは騙されてるぞ」と言われ、そこで初めて、そんな可能性もあるのかな？ と気づいた。「質屋にでも持っていくつもりなんじゃない？」とまで言われ、人をそんな風に疑うものではないとイライラした。

　だけど、私が未熟だっただけで、そういった可能性も考えた上で行動しなきゃいけないなとも勉強になった。お金を貸すときは返ってこないと思って貸せって言うしね。

　クローゼットの奥にあったものだし、誰も使っていないんだから、最悪返ってこなくてもいいやと思っていたけど、○日には返すと言ったのに連絡が来なかった時には、さすがの私も彼氏の言葉が頭をよぎった。物が返ってこないというより、彼の予言通りになるのだけは避けたいと思った。

　遅れて数日後、「遅くなってごめんね」とお婆さんは鞄を返しに来てくれた。 家に帰って、鞄を開けるとしわしわの三千円が入っていた。お金なんて要らないのに…！と今度会った時にお茶でもご馳走しようと思ったけれど、それ以来、そのお婆さんと会うことはなかった。騙されたわけじゃないけれど去り際の潔さは狐に摘ままれたようだった。

　その後、その話を母にすると「あはは、あの鞄？ あれはお爺さんが韓国行った時に酔っぱらって買わされたイミテーションだよ、だからクローゼットの奥に置いておいたんだよ」。

　お人好しは騙されやすいというけれど、ここから騙されていたとは……。

（文＝松戸檸檬）
<著者プロフィール>
　パチンコ発祥の地・名古屋市出身。ファッション誌の編集者になる予定がパチンコ雑誌の編集者になった事がきっかけで、この業界にズブズブと浸かる。編集者の後、フリーライターを経て、開発会社にてグラフィックデザイナーとなる。パチンコ業界の外側から内側まで経験し、業界で稼いだお金はキチッとホールに還元する清く正しきパチンカー。 

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