
JRAダノンスコーピオン物議醸した「使い捨て」も意味あった!? NHKマイルC(G1)トップクラスの実力馬はなぜ「過小評価」されてしまったのか

8日、東京競馬場で行われたNHKマイルC(G1)は、川田将雅騎手の4番人気ダノンスコーピオン(牡3、栗東・安田隆行厩舎)が優勝。前走のアーリントンC(G3)から連勝で見事に3歳マイル王に輝いた。
「返し馬がとても具合が良かったですし、今まで一番具合良くレース迎えることができたと思いますし、自信を持って競馬に向かって、流れの中で対応しようと思いました」
川田騎手がレース後に残したコメントからも状態の良さが伝わってくる。「あまりにも苦しい状態で使わざるを得なくなってしまいました」と振り返った2走前の共同通信杯(G3)で見せ場なく7着と崩れたときとは雲泥の差だった。
このときは最終追い切りに騎乗した川田騎手が、「まだ間に合っていない」と評していたように復調途上。深刻に見た陣営からは「春全休」の声も出たほどだが、本来の実力ならこの勝利は驚くほどではない。
振り返れば昨年6月の新馬戦を勝利した際、元JRA騎手の安藤勝己氏も自身のTwitterで「ゆくゆく伝説の…ってなるかもしれないよ」と評したハイレベルのレースを制していた逸材。その素質の高さを裏付けるかのように2戦目の萩S(L)では、後のホープフルS優勝馬キラーアビリティすら破っていた。
主戦の川田騎手が香港に遠征した関係で、松山弘平騎手が騎乗した朝日杯フューチュリティS(G1)こそ3着と敗れたものの、世代トップクラスの実力はすでに証明していたと言っていい。
トップクラスの実力馬はなぜ「過小評価」されてしまったのか
にもかかわらず、なぜ4番人気の伏兵評価に留まったのか。ここまで人気を下げた理由として考えられるのが、共同通信杯の敗戦のイメージがファンの脳裏に根強く残されたまま、8枠18番に入ったことだろう。
だが、前走のアーリントンC内容を考えると、大外枠の不利すら些細な割引だったのかもしれない。
当時の外が伸びにくかった阪神コースで格の違いを見せつけての快勝。勝ち時計1分32秒7は、同じく良馬場で行われた桜花賞(G1)の1分32秒9や、その前日の阪神牝馬S(G2)の1分32秒8よりも速かった。
しかもNHKマイルCの最終追い切りは文句なしの動き。不完全な状態で使われ、一部では「使い捨て」ではないかと物議を醸した共同通信杯とは完全に状況が変わっていた。敗れはしたが、将来のことを考えて東京コースを経験しておきたいとした陣営の想いは、結果的に決して無駄にならなかったともいえる。

今回はどちらかというと、セリフォスの方に不安があったか。朝日杯FSから直行の上に東京コースも初めて。騎乗した福永騎手は「馬は落ち着いていて、いい仕上がりだった」と振り返ったが、ゴール前で伸びあぐねたのは休み明けの影響もありそうだ。
前走から休み明けで直行した馬の敗戦と、6連敗中の1番人気馬が目立つ今春のG1。そういう意味では、セリフォスもまた「春の嵐」に巻き込まれたといえるのではないか。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。
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