JRA【ヴィクトリアマイル(G1)展望】ソダシVSデアリングタクトVSレイパパレVSレシステンシア! 新女王君臨へ「4強」の激突は近年屈指の好カード!
15日、東京競馬場では春の女王決定戦、第17回ヴィクトリアマイル(G1)が行われる。昨年の覇者グランアレグリアはすでにターフを去ったが、今年はG1馬5頭がエントリー。近年屈指の熱戦となりそうだ。
過去16回の勝ち馬を年齢別で見ると、4歳馬8勝、5歳馬6勝と拮抗し、6歳馬と7歳馬は1勝ずつ(どちらもストレイトガール)。今年もやはり、成長途上の4歳馬と歴戦の5歳馬による争いとなるだろう。
4歳世代の代表格は、やはりソダシ(牝4歳、栗東・須貝尚介厩舎)だ。
デビューから連勝街道を歩み、昨年4月に無傷の5連勝で桜花賞(G1)を制覇。阪神JF(G1)に次ぐG1・2勝目を飾った。その後は札幌記念(G2)で距離を克服し、ラヴズオンリーユーを破る金星を挙げたが、その前のオークス(G1)は8着、秋華賞(G1)でも10着と、脆さも見せていた。
秋華賞で惨敗した後はダートに挑戦。昨年12月のチャンピオンズC(G1)はいいところなく12着に敗れたが、前走のフェブラリーS(G1)では復調を印象付ける3着に好走した。
前走の走りで芝・ダート問わず、1600m、特にコース形態がワンターンなら一線級と渡り合えることを証明した。もう一つの課題とされる精神面での成長が大きなカギとなるだろう。
以前、本記事でも紹介したが、元JRA騎手の田原成貴氏がソダシの“乙女心”を独自の視点で分析。札幌記念の頃から少しずつ「走りたくない」ことを訴えていたという。
同氏は、ソダシに「走るのは楽しい」と思わせることが重要と説いていた。フェブラリーS好走から3か月、繊細な乙女心は「走りたい」方向に傾いているのか。
秋華賞以来の芝コース、8着に敗れたオークス以来の東京コースで、完全復活を果たせるか。純白の馬体に熱視線が注がれる。
5歳世代の代表格はもちろんデアリングタクト(牝5歳、栗東・杉山晴紀厩舎)だ。
2年前に史上初の無敗での牝馬三冠を達成すると、歴史的一戦となったジャパンC(G1)ではアーモンドアイとコントレイルに次ぐ3着に善戦。古馬になってから更なる活躍も期待された。ところが、4歳初戦の金鯱賞(G2)でギベオンに足をすくわれ2着に敗れると、QE2世C(G1)は3着。初黒星からまさかの3連敗を喫した。
その後は右前脚の繋靱帯炎が判明し、長期休養に入っていたデアリングタクト。リハビリ期間を終えて、栗東に戻ってきたのは4月中旬。脚元に負担がかかりすぎないよう、陣営は慎重に調教を進めてきた。
ようやく女王としての風格を漂わせたのは2週前追い切りのときだ。デビューから手綱を取り続ける松山弘平騎手を背に、栗東CWで6ハロン79秒9-ラスト11秒8の好時計をマークした。松山騎手は「まだ歩幅が小さい感じ」と辛めの採点だったが、翌週の1週前追い切り後には「先週より素軽くなり、この馬らしさを取り戻しています」と、『スポニチ』の取材に答えており、気配・動きは明らかに良化している。
約1年1か月のブランク明け、かつ好メンバーがそろった一戦を勝つのは決して容易ではないだろう。それでも、無敗の三冠牝馬として意地を見せられるか。その走りに注目が集まる。
そのデアリングタクトと初めて顔を合わせるのが、“幻の秋華賞馬”とも評された同世代のレイパパレ(牝5歳、栗東・高野友和厩舎)だ。
3歳時に3戦3勝で秋華賞にエントリーするも4/6の抽選に漏れ、挑戦権を得られなかった。それでもレイパパレは、秋華賞当日の3勝クラスを好時計で圧勝。「抽選を突破していれば……」という声があちこちで上がっていた。そんな「夢の対決」がようやく実現する。
長期離脱していた三冠牝馬とは対照的にレイパパレは4歳以降、数多の強豪牡馬たちとぶつかり合ってきた。大輪の花を咲かせたのは昨年の大阪杯(G1)で、コントレイルとグランアレグリアを撃破し、新女王に名乗りを上げている。
その後は勝利こそないが、中距離路線で大崩れすることなく、好走してきた。前走の大阪杯ではゴール前でポタジェに交わされて連覇を逃したが、改めてその能力を示した。
前走後は昨年3着の宝塚記念(G1)参戦という選択肢もあるなか、ヴィクトリアマイルを選択。約2年ぶりとなる1600m戦で1年1か月ぶりの勝利を狙う。
管理する高野師は「(1600mは)馬の気質に合っていると思います。前進気勢を生かす競馬ができれば」と、『中日スポーツ』の取材に答えているように、前走から2ハロン短縮には不安はない様子。むしろ中距離で強いられてきた“我慢”が一気に解放されたときの爆発力に期待が高まる。
5歳世代からは、さらに2頭のG1ウイナーが出走を予定している。
1頭目は昨秋のエリザベス女王杯(G1)を10番人気で制したアカイイト(牝5歳、栗東・中竹和也厩舎)だ。デビュー戦で1400mを走って以降は、1800m以上の中距離を使われてきた。戦歴からも本来の適性距離は2000m以上なのは間違いないだろう。
瞬発力勝負の展開になれば、かなり厳しい戦いを強いられそう。ワンチャンスあるとすれば、ハイペースの消耗戦になったときか。
そのペースのカギを握るのは3年前の2歳女王、レシステンシア(牝5歳、栗東・松下武士厩舎)になるだろう。
前走・高松宮記念(G1)は1番人気に支持されるも、重馬場のコンディションを前半3ハロン33秒4という超ハイペースで逃げて6着。後続にマークされる厳しい展開に加え、18kgの大幅馬体重増も響いたか。
それで勝ち馬と0秒3差なら、それほど悲観しなくてもいいだろう。マイル戦はちょうど1年ぶりとなるが、テンのスピードは断然。人気落ちも濃厚で、競りかけられることなくマイペースで逃げることができれば、チャンスは十分ある。
ソダシ以外の4歳馬も虎視眈々とG1初制覇を狙う。
ソングライン(牝4歳、美浦・林徹厩舎)は、2月にサウジアラビアで行われた1351ターフスプリント(G3)で海外重賞制覇を飾った。東京のマイルコースは未勝利戦と富士S(G2)勝ちに加え、NHKマイルC(G1)2着と好成績を残している。3度目のG1挑戦で「春の女王」の称号を手にできるか。
ファインルージュ(牝4歳、美浦・木村哲也厩舎)は、重賞2勝(フェアリーS、紫苑S)に加え、G1でも桜花賞3着と秋華賞2着の実績がある。前走の東京新聞杯(G3)はイルーシヴパンサーの豪脚に屈しての2着だったが、牝馬同士なら上位争いは必至だろう。
アンドヴァラナウト(牝4歳、栗東・池添学厩舎)は、昨秋のローズS(G2)覇者。本番の秋華賞でも3着に健闘したが、今年の始動戦となった愛知杯(G3)は11着に敗れた。前走・阪神牝馬S(G2)は1番人気の2着だったが、大敗からの巻き返しには成功。初めてとなる関東圏への長距離輸送をクリアできれば、上位進出も可能だろう。
武豊騎手は前走で3勝クラスを勝ち上がったばかりのディヴィーナ(牝4歳、栗東・友道康夫厩舎)にテン乗り予定。母のヴィルシーナは当レースを連覇(13-14年)しているだけに、侮れない存在だ。
この他には、前哨戦の阪神牝馬Sを制したメイショウミモザ(牝5歳、栗東・池添兼雄厩舎)、重賞2勝のテルツェット(牝5歳、美浦・和田正一郎厩舎)、“2頭出しの人気薄”ミスニューヨーク(牝5歳、栗東・杉山晴紀厩舎)やデゼル(牝5歳、栗東・友道康夫厩舎)も一発を狙う。
復活のG1勝利を遂げるのは、ソダシか、デアリングタクトか、それともレイパパレか。はたまたレシステンシアか……。実力伯仲のヴィクトリアマイルは15日、15時40分に発走を予定している。
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