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パチンコ「初めてのデジパチ大当りに喜んだのも束の間、まさかの──とあるパチンコ素人による昭和60年のパチンコ風景・後編」【アニマルかつみの銀玉回顧録 Vol.003】

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パチンコ「初めてのデジパチ大当りに喜んだのも束の間、まさかの──とあるパチンコ素人による昭和60年のパチンコ風景・後編」【アニマルかつみの銀玉回顧録 Vol.003】の画像1

 ふだんはチューリップ台やヒコーキ台で、「ふわっ」と遊んでばかりいたにもかかわらず、給料日あとで懐に余裕があったせいか、気が大きくなりデジパチにチャレンジ

 運命の女神の誘いだったのだろうか、すぐさま大当りを引き当てたまではよかったが、物凄い勢いで溢れ出る玉を前に、ただただうろたえるばかり。

「当り中は、ハンドルから手を離すな」

 そんな固定化観念に束縛されるがごとく、ハンドルを「ぎゅっ」と握ったまま中腰に立ち上がり、頭上の呼び出しランプを押した。

 ほどなく、パンチの効いた店員がドル箱を手に小走りでやってきたのだが、こちらが直面している状況を察するや、烈火のごとき表情で怒鳴り散らかし、ハンドルを握る手を払いのけた。

「なにしとんねん、アホ!! 玉、抜かんと、あかんやろ!!」

 現代のように、親切に「玉を抜いてください」とアナウンスしてくれることもなく、そもそも下皿にワンタッチスライド式の玉抜き機構すら装備されてなかった、当時のパチンコ機。

 それまで、チューリップ台やヒコーキ台の「ふわっ」とした出玉感しか覚えてなかった自分にとって、デジパチの出玉スピードは、即座に適応不可なほど異次元的なものだったのである。

 かようにして、記念すべき人生初のデジパチ大当りは、玉詰まりによるパンクによって、まこと遺憾な途中終了となってしまった。

 ラッキーナンバーではなかったので、終了後すぐに玉を流すと、ドル箱の半分にも満たない情けない量。隣で打っていたパチプロ風情のお兄さんの哀れみに満ちた目は、いまでもハッキリと覚えている。

 当てた瞬間の喜びは相当なものだった。が、なんともいえない後味の悪さを感じつつ、差し出された千と数百円をポケットにしまい、薄暗い路地裏の交換所をあとにした。

パチンコ「初めてのデジパチ大当りに喜んだのも束の間、まさかの──とあるパチンコ素人による昭和60年のパチンコ風景・後編」【アニマルかつみの銀玉回顧録 Vol.003】の画像2
アルバイトの帰りによく足を運んだ、大阪心斎橋のホール。2018年暮れ、惜しまれつつ閉店した。

「やっぱ、おれはパチンコには向いてないんやな」
「パチンコなんかで遊んでる場合やない。もっと、やることがあるやろ」

 ふと我に返り、その日を境にまた、パチンコとは距離を置くことに決めた。ほどなくアクセサリー工房のバイトを辞め、パチンコ好きの彼らとも顔を合わすこともなくなったので、その後の昭和の時代の間は、ほとんどパチンコに触れることはなかった。

 人生も半世紀をすぎると、「振り返らんでええことは、振り返らんでいい。忘れてしまえ」と思う反面、「たら・れば」と思うことが多々ある。

 年齢的にパチスロは0号機をリアルタイムで打てたし、のちに歴史に名を残すことになる数々の攻略法を実践することもできた。

 それが「たら」だったら、パチンコやパチスロに関わる初老のベテランとして、果たしてどんな「いま」を送っていたことだろう。

 そんな風に思いつつ、この世界でご飯を食べさせてもらって、今春に30年になる。

「えーっ。なんで、打ってなかったんですか!? もったいないじゃないですかー!!」

 そんな風に言われたことも、多々。確かに、おっしゃるとおりである。

 が、人と人、あるいは男と女の出会いのように。森羅万象、運命の神のプランニングによって、物事はいい方向(あるいは逆に悪い方)に動いている。

パチンコ「初めてのデジパチ大当りに喜んだのも束の間、まさかの──とあるパチンコ素人による昭和60年のパチンコ風景・後編」【アニマルかつみの銀玉回顧録 Vol.003】の画像3

 当時のパチンコやパチスロの世界は、いまとは比べものにならないほど甘美で、バラ色だったかも知れないが、そこに身を投じていたら、逆に、いまの自分はなかっただろう。

 若い頃、誘われるがまま当時のパチンコやパチスロの世界に身を投じ、よろしくない方向に人生がシフトしてしまった人を、これまで何人、何十人と見てきた。

 一介の打ち手として向かい合っていれば、よかった。超えてはいけない一線を越えてしまったがために、面倒なことに巻き込まれたり、あるいは……。

 時が解決してくれるとは、よくいったものだ。この年になると、よくわかる。若い頃に方向性の違いで喧嘩別れした音楽仲間たちとも、いまは年相応に楽しくやらせてもらっている。

 パチンコも、そうだ。「いまは、その時ではない」と距離を置き、しばしの時を経て「いまが、その時かも知れない」とあらため真剣に向かい合ったことで、いまの自分がある。

 そんなわけで、激動の昭和が終わり平成の世が幕を開けるとともに、我がパチンコ打ちの人生も、幕を開けるのであった。

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(文=アニマルかつみ)
〈著者プロフィール〉
兵庫県尼崎市出身。1992年春にパチスロ必勝ガイドのライターとなり、以来30年にわたってメディア人の立場から業界の変遷を見つめてきた大ベテラン。ぱちんこ・パチスロの歴史に関しては誰にも負けない博識を持つ。最近ではYouTube動画チャンネル「ぱち馬鹿」のメンバーとして、各種企画の制作や出演、生配信などにも精を出している。ライター稼業のかたわら、ロックバンドのベースプレイヤーとしても活動中。愛猫家。昭和レトロ好き。
■Twitter(@anikatsu213):ANI-Katsu(アニマルかつみ)

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