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客が「事務所に引きずっていかれた」事件も発生…「キケンキワマルスロット」のお話【ドラゴン広石『青春と思い出のパチスロと、しばしばパチンコ』第77話:ドクターエー7】

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第77話 ドクターエー7

 現在のパチスロには「見た目の有効ライン」と「実際の有効ライン」が異なる機種が存在します。

 たとえば、最初期のスマスロとして絶大な人気を誇った SANKYOの『パチスロ 革命機ヴァルヴレイヴ』は中段のみ有効の1ライン機で、山佐の『スマスロモンキーターンV』は右下がりのみ有効の1ライン機であり、少し時代を遡ると大都技研の5号機「押忍!番長3」は有効ラインが「中段・中段・下段」の変則1ライン機だったりします。

 これらの他にも変則的な1ライン機は多数ありますが、いずれの機種も見た目上の5ライン上に役が揃えば配当を行う仕組みです。従って、実際の有効ライン上で必ずしも同一の絵柄が揃っているとは限りませんが、打ち手側は見た目の情報を信じてプレイすれば損しないので、特に難しく考える必要はありません。

 そして、なぜこんな複雑な仕様になっているかというと、簡単に言えば「有効ラインを減らすことで自由度が広がる」からで(他ラインの干渉を受けずにリール制御を組める)、特に押し順タイプのAT機&ART機の制御を組む際には必要不可欠な要素だと言えます。

 しかし、パチスロの歴史を振り返ると4号機時代の中頃には、現在とは逆に各メーカーさんが有効ラインを増やすことに心を砕いた時期があったんです。それがいわゆる「マルチライン機」でした。

 6ライン機、7ライン機、8ライン機…等々、中には27ライン機などというキワモノもありましたが、最もメジャーなマルチライン機は「7ライン機」ですね。

 でもって、なんで有効ラインを増やそうとしたかと言うと、当時の規定では有効ライン数とビッグ確率に密接な関係があったからです。たとえばビッグボーナスの組み合わせが全部で「6通り」ある21コマの5ライン機の場合(ビッグ図柄×1種類で、等間隔で左リールに3個、中に2個、右に1個が配置されていると仮定する)、6通り×5ラインで組み合わせ総数は30通り。

 確率の幅はプラマイ30%までの決まりなので、これに1.3を掛けると39という数値が導かれます。この数値を分子にした39/9261(分母は21コマの三乗=図柄の組み合わせ総数)がビッグ確率の上限となるわけですね。

 一方、7ライン機をこの公式に当てはめると「6通り×7ライン」で組み合わせ総数は42通り。同様に1.3倍で計算すれば54.6/9261がビッグ確率の上限となります。すなわち、5ライン機のビッグ確率は約237分の1が上限なのに対し、7ライン機なら約169分の1まで引き上げることが可能となるんです。この差はデカい!

 もちろん、ビッグ確率が高ければ良いってものでもありません。確率を引き上げれば、その代償に何かを削らなきゃ通常営業で使えませんからね。結果、通常時のコイン持ちやらボーナスの獲得枚数やらに跳ね返ってくるわけですが、今回紹介するのは7ライン機が登場した最初期に起きたエピソードです。

 以下、本編。

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 時は平成10年(1998年)の末。山佐から史上初の7ライン機『ドクターエー7』が登場しました。

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山佐の7ライン機『ドクターエー7』。従来の5ラインの他に「小V型」「小山型」のエクストララインを追加しており、7ライン機の特性を活かした破格のビッグ確率によって超ノーマル級の連チャンを実現していた。(写真は「パチスロ大図鑑1964~2000/ガイドワークス刊」より)

 本機のビッグ確率は設定1でも202.3分の1。同時期の人気機種である「ハナビ」のビッグ確率が設定6で240.9分の1だったことを考えると、破格も破格、超破格のビッグ確率と断言して差し支えありません。

 ただし、ビッグ確率を引き上げた代償に、本機ではJACイン確率が約10分の1にまで引き下げられ、パンクが多発するようになりました。2パン、1パンあたりまえ、下手すりゃ0パンの可能性だってあります。

 また、通常時のコイン持ちも削られて、千円あたり約27~28Gくらいしか回せませんでした。確かにポコポコと小気味よくビッグは当たるのですが、連チャンの嬉しさよりパンクの悔しさが先に立って、個人的にはあまり積極的に打つ機会はありませんでしたね、ええ。

 そんな私が『ドクターエー7』の担当ライターに指名されちゃったんですよ。もちろん、拒否権なんてありません。いえ、無理やり辞退することはできるんでしょうけど、そんなことをすれば二度と仕事を貰えなくなりますから、事実上、編集部の決定に逆らうことなんてできないんです。

 そして、この時に行った実戦企画が「設定1or3or6バトル」というものでした。ようするに、3人の実戦人が台の設定を知らされないまま5千Gの実戦を行い、設定が出玉にどのように影響するか検証する…という、当時の人気機種に超ありがちな企画でした。このドクターエー7は破格のビッグ確率を標準装備しているから、運良くビッグの完走が続けば設定1が6を凌駕するんじゃないかってね。うん、それは面白い!

 てなわけで、向かった先は新宿歌舞伎町にあったガイドの協力店でした。プライベートでは絶対に打ちに行きたくない店だけど、こういう誌面企画では趣旨にあった設定を入れてくれるので、編集部的には重宝してたんだと思います。

 本日の実戦人は、担当ライターの私・広石、担当編集のDr.タツガエ、そしてショッカー3号のリトルさんです。最初はグーで打つ台を決めて実戦を始めたところ、開始から3時間くらい経過した頃から少しずつ台の挙動に変化が見え始めました。

 ボーナス回数こそどの台も似たり寄ったりだけど、リトルさんの台だけが頭ひとつ抜けてドル箱に手が届いたんですよ。その理由は…パンクが少なかったから。もちろん、ドクターエー7のJACイン確率に設定差はないから、リトルさんの台だけ出始めたのは結果論なのだけど、人間心理として出玉で設定を測りたくなるじゃないですか。現時点で最も負けているのは私であり、これはまたしても設定1に捕まったかと、己が不運を呪っていた時に事件は起きました。

 いきなりシマの右の方から「ドスン!」という暴力的な音が聞こえたので驚いてそちらを見ると、歳の頃は五十過ぎのジャンパー姿のおっさんが(競馬場や競輪場でよく見る、耳に赤鉛筆を挟んだら似合いそうな男性)、ドクターエー7の中央パネルに渾身のパンチを放っていました。驚いた店員さんが駆けつけて話を聞くと、その男性は目に大粒の涙を浮かべながら大声でこう叫んだんです。

「俺はこの台でビッグを4回引いたのに3回もパンクした。この店はインチキだ!」

 店員さんは困り果てた表情で「これはそういう台なんですよ」と説明してますが、この手のおっさんが簡単に納得するはずがありません。さらに騒いで泣きながら台を殴ろうとしたところで複数人の店員さんに取り押さえられ事務所に引きずっていかれました。

 しばらくしてもおっさんは戻って来ず、店員さんが下皿のコインを片付けていたので、おそらくは事務所の裏口あたりからお引き取り頂いたんでしょうね。いったいいくら負けたのか知らないけど…いや、もしかして使っちゃいけないお金だったのかも知れませんが、とりあえずおっさんに合掌しました。な~む!

 というか、やっぱりパンクが頻発するゲーム性って失敗なんですよ。おそらく、設置店では同様のトラブルが結構な頻度で起きてたんじゃないでしょうかね…。

 閑話休題。実戦の話に戻ります。

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 そして、私の実戦結果はご覧の通り。純粋な0パンを5回も喰らったってこともありますが、ビッグを5千Gで26回引いたにもかかわらず44.5K負け。まぁ、バケ出現率の低さを見ればバレバレですが、途中で予想した通り私の台が設定1でした。

 ちなみに、唯一勝利したリトルさんの台は設定3で、最高設定の6を打ってたはずのDr.タツガエはパンクの頻発により台の実力を発揮することができませんでした。

 そういえば、ドクターエー7のプレイヤーズマニュアル(小冊子)には、「キケンキワマルスロット」と煽り文句が書かれていました。メーカーが確信犯でそうしたのなら、お主もなかなか悪(ワル)よのう…ってところでしょうか。

 今は昔の物語。

ドラゴン広石

ドラゴン広石

ドラゴン広石(昭和38年12月生まれ)
平成7年に白夜書房「パチンコ必勝ガイド」編集部の門を叩き、パチスロの知識と経験、目押し力を買われて「パチスロ必勝ガイド」のライターに採用された。リアルタイムで「パチスロ0号機」を遊技した経験を持つ、唯一のパチスロライターである。令和4年現在でライター歴は27年。代表作に「枠上人生」、「浮草家計簿」(連載中)、「回胴絶景」(連載中)など。1日の最大勝ち額~プラス41万3千円(クラブロデオT)、1日の最大負け額~マイナス12万9千円(初代・北斗の拳)。

Twitter:@dragon_hiroishi

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