天皇賞(秋)の記憶~武豊が認めた最速馬・サイレンススズカの影~
1990年代後半は、社台グループがアメリカから輸入した種牡馬サンデーサイレンスの産駒が日本競馬を席捲していた。初年度産駒のフジキセキが朝日杯3歳ステークス(現朝日杯フューチュリティステークス)、ジェニュインが皐月賞、タヤスツヨシが東京優駿(日本ダービー)、ダンスパートナーが優駿牝馬(オークス)を勝利するなど勝ちまくり、そこには今のディープインパクト産駒を超える勢いがあった。
サイレンススズカはサンデーサイエンスにとって三世代目、5月生まれということもあって同世代の中でデビューが遅かったが、そのデビュー戦が2着に1.1秒差の圧勝で絶大なインパクトだったこともあり、「遅れてきたサンデーサイレンス産駒の大物」と呼ばれるなど来たるクラシック戦線(皐月賞・日本ダービー)へ向けてマスコミや競馬ファンの注目を集めていた。
デビュー2戦目に皐月賞を目指して出走したトライアルの弥生賞(G2)は、重賞2勝のゴッドスピードなどを差し置いて2番人気に支持されるも、スタート前にゲートをくぐって外枠発走となり、10馬身ほどの大出遅れ。レースは見せ場は作るものの8着に敗退し皐月賞の出走権を取ることはできなかった。
その後500万下勝利を経て、陣営は日本ダービーを目指してトライアルのプリンシパルステークスに出走、見事圧倒的1番人気に応えて勝利、念願の日本ダービー出走を果たした。
4番人気と支持を集めた日本ダービーだったが、結果はサニーブライアンの9着に敗退。それでも2月にデビューして6月の日本ダービーに出走したわけだから、その素質は確かなものであり陣営は将来の活躍を確信したという。
当時のサイレンススズカは気性的な若さを抱えており、クラシック三冠目の菊花賞(3000m)は適距離ではないと陣営は判断。菊花賞トライアルの神戸新聞杯をマチカネフクキタルの2着に好走したものの、その次走は3歳馬ながら第116回天皇賞(秋)を目指すことになった。サイレンススズカにとって最初の天皇賞(秋)挑戦である。
この年の天皇賞(秋)はバブルガムフェローが1番人気、そして牝馬のエアグルーヴが2番人気、3番人気はジェニュインと続き、サイレンススズカは4番人気に支持された。レースは果敢に逃げるもやはり古馬の壁は厚く6着に敗退、しかし着差は勝ったエアグルーヴからわずか0.1秒であり、このレースの経験は後に大きなものとなった。
天皇賞(秋)後はマイルチャンピオンシップに出走するも調整不足もあって15着に敗退。その後陣営は当初の目標であった12月の香港遠征(香港カップ)を選択し、ここでサイレンススズカに転機が訪れる。翌年の天皇賞(秋)でも騎乗する武豊騎手との出会いである。
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