エネイブルのエクリプスS(G1)敗戦は想定内!? 凱旋門賞(G1)に最強女王陣営が前向きな理由とは……むしろ「完璧なパフォーマンス」と高評価
5日、イギリスのサンダウン競馬場で行われたエクリプスS(G1)は、ガイヤースが2分04秒48で逃げ切り勝ち。圧倒的1番人気に支持されたエネイブル(牝6、英・J.ゴスデン)は2馬身1/4差の2着に敗れた。
昨年の凱旋門賞(G1)2着以来の復帰戦を迎えた世界最強女王だったが、今年に入ってG1を含む重賞連勝中のガイヤースを捉えることはできなかった。勝ち馬が順調に使われていたことは確かだが、直接対決の凱旋門賞を10着に惨敗した相手だ。
3連覇を目指した昨年、史上初の凱旋門賞3連覇の夢は潰えた。だが、エネイブルに絶対的な信頼を寄せる陣営は引退を撤回、現役続行を決断した。今年の始動戦に選んだのがエクリプスSだった。最強女王の健在ぶりを世界に見せつける意味でも、勝利という最高の結果が欲しかっただろう。
しかし、レースではガイヤースの逃げを道中4、5番手から追走したものの、直線で追い出されてもいつもの豪脚は不発。ガイヤースを追い詰めるどころか、ジャパンと3着争いするのが精一杯だった。
これまでのキャリアで連敗したことがなかったエネイブルだけに「衰え」の声も出始めた。いち早く反応したのが欧州のブックメーカーだ。この結果を受けて英・オークス(G1)を9馬身差で圧勝したラヴを凱旋門賞の単勝1番人気に繰り上げ、エネイブルは2番人気へと評価を落とした。
結果だけを鵜呑みにすれば、3度目の凱旋門賞制覇に黄色信号にも映るが、陣営の評価はむしろ逆だ。管理するJ.ゴスデン調教師は「完璧なパフォーマンスだった」と振り返っていたことを豪専門メディア『Racing.com』が報じている。
その理由となるのが師のコメントだ。「私たちはガイヤースが脅威であることを知っていたし、警戒していた」とエクリプスSでガイヤースが最大の敵となることはわかっていたこと、さらに「サンダウンは逃げ馬のための競馬場だった。彼は先頭に出たら、誰も追いつけない。コロネーションでそれを痛感していた」と不覚を取るならガイヤースと想定していたようだ。
また、エネイブルとコンビを組んでいるL.デットーリ騎手も「最後もう100メートルが必要だった」と距離不足を振り返った。「85%の仕上がりとしては素晴らしい走りだった。満足している」と評価した陣営に悲観の色は微塵もない。次走に予定しているキングジョージ6世&クイーンエリザベスS(G1)に向けた良い舞台になったと前向きな姿勢を見せた。
「大きく注目されたのはエネイブルがどのようなパフォーマンスで復帰戦の勝利を飾るかでした。それだけにこの敗戦は少々意外な気もしましたが、内容としては悪くなかったというのが率直な感想です。
デットーリ騎手もいつもより後ろからの競馬をしていましたし、ガイヤースが強い馬であることは我々も知っていた訳ですから。勝ち馬に向いた展開からも休み明けとしては上々な結果だったという陣営のコメントにも納得できます。
ただ、それだけに次走のキングジョージでは結果が欲しいところです。ここを取りこぼすようだといよいよ本番も危なくなるのではないでしょうか」(競馬記者)
奇しくもこの日は、JRAのメイン重賞もCBC賞(G3)をラブカンプー、ラジオNIKKEI賞(G3)をバビットが逃切り勝ちを収めていただけに、競馬ファンにとっては逃げ馬の強さを思い知らされた一日だったかもしれない。
完全復活を目論む世界最強女王の次走のパフォーマンスに大いに注目したい。
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