JRA武豊「G1を4つ損した」……脚にボルト入れ現役続行、“幻の3冠馬”が29年前のアルゼンチン共和国杯で見せた復活劇

8日には、東京競馬場で伝統のハンデ戦、アルゼンチン共和国杯(G2)が開催される。今から29年前のレースで「復活劇」を果たしたヤマニングローバルという馬をご存じだろうか。
1987年にヤマニンベン牧場で生まれたヤマニングローバル。同世代には、ダービー馬のアイネスフウジンやメジロマックイーン、メジロライアンなどがいる。当時は、オグリキャップの登場でまさに競馬ブームの最盛期だったころだ。
1989年9月、阪神の新馬戦でデビューしたヤマニングローバル。鞍上は当時3年目の武豊騎手だった。3冠馬ミスターシービーの初年度産駒で前評判も高く、1.3倍の圧倒的1番人気に支持された。そのデビュー戦を危なげなく快勝。その後、400万下(現1勝クラス)、デイリー杯3歳S(G2)を制し、3戦3勝で翌年のクラシック最有力候補に名乗りを挙げた……、はずだった。
「陣営の喜びも束の間、レース直後に右前脚を骨折。当時、スターへの階段を着実に上っていた武騎手に『G1を4つ損した』と言わしめたほどの実力の持ち主でした。“4つ”というには、翌年のクラシック3冠と有馬記念を指した発言でしたが、武騎手はヤマニングローバルにそれほどのポテンシャルを感じていたのでしょう。
安楽死になっていてもおかしくないほどの大ケガでしたが、割れた骨を2本のボルトで繋ぐという大手術を受け、1年2か月後に復帰しました。しかし、復帰後は3連勝した頃の走りは見せられませんでした」(競馬記者)
4歳1月に復帰した後、10月までに9戦し、2着1回、3着2回と善戦はしていた。そんなヤマニングローバルが復活の白星を挙げたのが1991年のアルゼンチン共和国杯だった。

そのレースで手綱を取ったのが、すでにG1を勝つなどメキメキと頭角を現していた6年目の横山典弘騎手だった。2走前の朝日チャレンジC(G3)では1番人気に支持されていたヤマニングローバルも、負けが続きこの時は5番人気に甘んじた。
1番人気は60kgの酷量を背負ったホワイトストーン。続いて外国産馬ビーチハウス、同じミスターシービー産駒のメイショウビトリアというヤマニングローバルと同世代の4歳馬が上位人気を占めた。
他の有力馬が好位で競馬を進める中、大外枠に入ったヤマニングローバルと横山騎手は後方から末脚に懸ける策を選択。4コーナーでも10番手という位置取りだったが、ヤマニングローバルは横山騎手の左ムチに応え、直線でグングン加速。残り100m地点で先頭に立つとそのまま押し切った。
「デイリー杯3歳S(現デイリー杯2歳S)から丸2年。ボルトが脚に埋め込まれたままの復活劇に驚かされたことを鮮明に覚えています。翌年には目黒記念(G2)も制覇。天皇賞・秋(G1)では、レッツゴーターキンとムービースターに次ぐ3着に好走しました。
結局、G1は獲れませんでしたが、7歳まで現役を続け、引退後は生まれ故郷で種牡馬入りも果たしました。産駒数は限られ、その血は仔の代で途絶えています……」(同)
血統表にヤマニングローバルの名を持つ現役馬はもちろん皆無だが、姪にあたるヤマニンアンプリメが昨年のJBCレディスクラシック(G1)を制した。その時、手綱を取ったのが武騎手だった。武騎手は、30年前の「幻の3冠馬」のことを思い出したのではないだろうか。
競馬に「たられば」は禁物だが、もしあの時ヤマニングローバルが故障していなければ……、1990年のクラシックの勢力図は全く違うものになっていたかもしれない。そして、武騎手とメジロマックイーンの名コンビも誕生していなかったかもしれない。アルゼンチン共和国杯と聞くと、1991年の復活劇を思い返すオールドファンも少なくないだろう。
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