JRA「お騒がせジョッキー」がデアリングタクト撃破! 「裏切りフリー転身→海外修行」金鯱賞(G2)単勝227.3倍ギベオン大金星に繋がった師匠との和解

14日、中京競馬場で行われた金鯱賞(G2)は、10番人気のギベオン(牡6歳、栗東・藤原英昭厩舎)が逃げ切って優勝。単勝1.4倍に推された昨年の牝馬三冠馬デアリングタクト(牝4歳、栗東・杉山晴紀厩舎)が2着に敗れる波乱の結末となった。
まさか――。誰もが目を疑ったのは、大本命デアリングタクトが敗れたことも然ることながら、大金星を飾ったのが単勝227.3倍で最低人気のギベオンだったことだろう。立役者となった鞍上の西村淳也騎手は4年目にして、これが重賞初制覇だ。
10頭立ての芝2000mのレース。レース後に西村騎手が「藤原(英昭)先生と相談して『このメンバーならハナに行こうか』と、ゲートもスムーズに出てくれて『ハナに行こう』と思いました」と振り返った通り、好スタートを決めたギベオンは迷わずハナに立った。
ギベオンと西村騎手にとって幸いだったのは、もう1頭の逃げ馬候補だったキセキが後方からの競馬を選択したことだろう。サトノフラッグが2番手に付けたが、競り掛ける様子はなく、序盤からマイペースに持ち込めたことは大きな勝因の1つとなった。
「ちょっと3、4コーナーで手応えが悪くなりましたが、直線に向かってからまた伸びてくれたので『なんとか凌いでくれ』という思いで追っていました」
そんな西村騎手の思いと共に、残り200mを切っても手応えを失わないギベオン。一方のデアリングタクトはやや馬群をさばくのに苦労し、松山弘平騎手のムチに応えてエンジンが掛かったのは残り100mといったところだった。
最後は接戦となり「内外離れていたのでわからなかったけど、あとは祈るだけでした」と語った西村騎手。クビ差まで詰め寄られたが、嬉しい初重賞制覇となった。
今年でデビュー4年目となる西村騎手だが、一昨年に55勝、昨年も50勝と「乗れる若手」に数えられる1人だ。しかし、重賞にはここまで29回挑戦して3着が最高と、あと一歩手が届いていなかった。

そんな中、昨年は1つ下の世代の斎藤新騎手がCBC賞(G3)を勝ったことを皮切りに、今年になって団野大成騎手が日経新春杯(G2)を制覇。さらに菅原明良騎手も東京新聞杯(G3)を勝つなど、立て続けに後輩が重賞初勝利を達成……。
「後輩が重賞を勝っている中で、僕はまだ勝っていなかったので。ようやく……勝てて嬉しいです」
さらにこの日は田辺裕信騎手の落馬負傷によって、急遽“ピンチヒッター”となった2つ下の世代・原優介騎手が見事なリステッド勝利。3つ下の世代の新人騎手たちも次々と初勝利を挙げるなど、西村騎手の中にも焦りのようなものがあったようだ。
「かつては所属していた田所秀孝厩舎に何の相談もなくフリーになると、そのままフランスへ武者修行……お騒がせジョッキーのイメージがあった西村騎手ですが、先日は田所調教師が引退する際に花束を渡すなど、関係も修復したようです。
勝ち星こそ順調ですがローカルの騎乗も多いだけに、今後は中央での活躍も期待されますね」(競馬記者)
「今回は重賞を勝たせていただいた。またこれからも頑張りますので、よろしくお願いいたします」
最後は、関係者やファンへそう頭を下げた西村騎手。これが2018年の中日新聞杯(G3)以来の重賞制覇となったギベオンだが、次なる目標はやはりG1制覇となるだろう。最大の目標は、やはり大阪杯(G1)か――。重賞初制覇が歴史的な大金星となった「穴男」西村騎手にとっては、これが3度目のG1挑戦となるかもしれない。
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