世界最強ゴールデンシックスティ「何故」セン馬に? 「産駒が見られないのが残念」の声も知っておきたい香港の競馬事情
香港の最強馬の壁は、やはり高かった。
10日、香港のシャティン競馬場で行われた香港マイル(G1)は、地元の英雄ゴールデンシックスティ(セン8歳、香港・K.ルイ厩舎)が抜け出して勝利。2020年、21年に続く本レース3勝目を手にした。
自身最長の224日ぶりの上に大外枠という厳しい条件も、この馬の前にはまったく関係がなかった。余力たっぷりに最後の直線を迎えたゴールデンシックスティは、異次元の末脚であっさりとライバルたちを飲み込んだ。
今秋、日本のマイル王に輝いたナミュール(3着)を筆頭にセリフォス(7着)、ソウルラッシュ(4着)ら日本のトップマイラー5頭も必死に食い下がったが、最後は流す余裕を見せての勝利。通算10勝目となるG1タイトルを手にした王者が、最高の形でラストシーズンをスタートさせた。
「さすがの強さでしたね。先日引退を発表したイクイノックスの通算獲得賞金が歴代最高の22億1544万6100円ということが話題になっていましたが、ゴールデンシックスティは世界の歴代1位となる約25億7000万円。今回の勝利で、さらに約3億4000万円が上積みされることになります。
もちろん、現役の長さが異なるのでイクイノックスとゴールデンシックスティを比較する意味はありませんが、少なくとも香港の競馬関係者やファンにとって、本馬はイクイノックス級の誇りと言えると思います。そんな英雄が、引退後は日本に来てくれるとか。香港の競馬シーズンは7月までなので実際の来日はもう少し後の話ですが、今から楽しみですね」(競馬記者)
今回も衝撃的なパフォーマンスを見せたゴールデンシックスティだったが、その一方でレース後には「日本に来ても種牡馬入りはできないんだよな」「セン馬なのが惜しすぎる」など、日本の競馬ファンから「もったいない」「残念」といった声が……。
確かにブラックタイドからキタサンブラック、そしてイクイノックスと、その時代のターフを賑わせた「血」が受け継がれていくことに慣れ親しんでいる日本の競馬ファンからすれば、「種牡馬ゴールデンシックスティの産駒」を見てみたいのは自然な心理かもしれない。
知っておきたい香港の競馬事情
「残念ながら、香港では競走馬の95%がセン馬になっており、繁殖の文化がほぼありません。『95%って、牝馬は?』と思われるかもしれませんが、生産も行わずに海外から馬を買うのが主流とあって、牝馬自体が非常に少ないんですよね。ちなみに日本のセン馬は全体の5%程度だそうです」(別の記者)
記者がそう話す通り、過去に日本のG1を制したサイレントウィットネス(スプリンターズS)、ブリッシュラック(安田記念)、エアロヴェロシティ(高松宮記念)といった香港馬も、すべてセン馬だったことを記憶しているファンも多いはずだ。
では、彼らは現役引退後にどう余生を過ごしているのだろうか。
「日本同様すべての馬というわけではありませんが、(先述したサイレントウィットネス、ブリッシュラック、エアロヴェロシティを含む)活躍馬の多くがオーストラリアなどの牧場で余生を過ごしているそうです。そういう意味では、ゴールデンシックスティが引退後に海外(日本)で過ごすことは特別珍しいというわけではなさそうですね」(同)
また、日本でもサウンドトゥルーやノンコノユメが長く一線級で活躍したように、セン馬になることは、気性面の改善の他にも筋肉が柔らかくなり、競走馬として長い現役生活の維持が期待できるという。
実際に、ゴールデンシックスティはすでに競走馬としては高齢の8歳馬だが、レース前には主戦のC.ホー騎手から「脚取りがまだまだ軽やかで8歳とは思えない。凄いね。若々しくて競争力がある」というコメントがあった。
日本でも8歳まで現役を続ける馬は本当に限られているだけに、もしゴールデンシックスティが牡馬のままなら、これだけ長く活躍することはできなかったかもしれない。
ちなみにゴールデンシックスティのラストランは、来年4月のチャンピオンズマイル(G1)になる見込みだ。壁は果てしなく高いかもしれないが、また日本競馬からも王者に挑戦する猛者の出現を期待したい。
PICK UP
Ranking
17:30更新- ルメール軍団「誤算続き」で迷走中?使い分けの弊害に一部ファンから疑問の声
- クロワデュノール「世代最強説」に現実味も…ダービー馬候補が未勝利戦より遅い時計の怪
- 武豊×ドウデュース完全包囲網で波乱含み!?豪華メンバーのジャパンCにチェルヴィニア、ブローザホーン、オーギュストロダンら最強メンバー集結。レジェンド元JRA騎手の見解は?
- 「別競技」の高速馬場で欧州最強マイラーの意地見せたチャリン!ジャパンC参戦オーギュストロダン、ゴリアットに朗報?
- C.ルメール「アンラッキー」な過怠金に謝罪…マイルCSでも「牝馬のC.デムーロ」の手綱冴えるか?
- エアスピネル降板に武豊騎手は「何」を思う……8年前、すべてを手にしてきた天才騎手が”最大級”の屈辱を味わった「ウオッカ事件」とは
- 【京都2歳S(G3)展望】藤田晋オーナーの大物エリキングが登場! ジョバンニ、サラコスティがリベンジに燃える
- 【ジャパンC(G1)展望】「ディープ」オーギュストロダンVS「ハーツ」ドウデュース、2005年有馬記念から19年越しの最終決戦!
- 春のG1戦線に水を差す「醜聞」続く…現役騎手の父に詐欺容疑、G1馬オーナーが逮捕
- 「3大始祖」消滅の危機……日本で「2頭」世界で「0.4%」の血を残すべく立ち上がったカタール王族の「行動」に称賛
関連記事
【阪神JF】「一発を狙うなら」12番人気の激走に大物感プンプン!? 「差し馬天国」で逃げて5着が意味するもの
「14番人気2着→11番人気1着」ベテラン騎手の連続激走で「チャレンジ」大成功!? 有馬記念に挑んだ相棒のオーナーへ感謝のメモリアルV
【ターコイズS(G3)展望】牝馬史上初の偉業へ「トルコ石の女王」ミスニューヨークが3連覇にチャレンジ! 桜花賞2着コナコースト、中山巧者ヒップホップソウルら3歳馬にも注目
【朝日杯FS(G1)展望】「不運続き」英国の名手が良血シュトラウスと新コンビ! 復帰目指す武豊は6馬身差圧勝の「新キタサンブラック」と参戦予定
武豊「復帰目前」ドウデュース有馬記念の後は「G1完全制覇」へ。「僕は帰ってきました」から約10年…キズナ産駒で偉業達成なるか