GJ > 競馬ニュース > 「豪州史上最強牝馬」参戦に揺れた16年前の記憶  > 2ページ目
NEW

JRA 天皇賞・春(G1)武豊アドマイヤグルーヴ挑戦も霞む「豪州史上最強牝馬」参戦に揺れた16年前の記憶。日本のステイヤーたちを震え上がらせた「魔界」からの使者とは

 今から16年前、2005年の天皇賞・春もまた、1番人気がG1未勝利のリンカーンという主役不在だった。そんな中で2番人気に推されたのが、オーストラリアの刺客マカイビーディーヴァである。

 豪州ではメルボルンC(G1)という、日本の有馬記念(G1)のような象徴的なレースが開催されている。過去に日本のデルタブルースも勝利した3200mで争われるNo.1ステイヤー決定戦であり、開催日が祝日になるという世界でも異例の国民的レースだ。

 マカイビーディーヴァは牝馬ながらに、史上唯一のメルボルンC・3連覇を成し遂げた豪州競馬の伝説的な存在であり、総獲得賞金1452万6685オーストラリア・ドル(約12億6000万円当時)はオセアニア競馬史上1位という怪物だ。

 そんな超大物(当時まだメルボルンCは2連覇)が日本の天皇賞・春に参戦するために来日したのだから、当時の盛り上がりは想像に難しくないだろう。

 ましてや、その名も「“魔界”ビーディーヴァ」である。当年の天皇賞・春は主役不在の大混戦とあって、異国の怪物にあっさり屈しても仕方がないムードだった。なお、このレースにはエリザベス女王杯(G1)を連覇した名牝アドマイヤグルーヴも、盾男・武豊騎手とのコンビで出走していたが、豪州から来た最強牝馬の陰に隠れていた印象だ。

 それでも最終的に日本のリンカーンが単勝5.4倍という1番人気に支持され、マカイビーディーヴァが5.8倍の2番人気に甘んじたのは、叩き台として使ったエイプリルS(OP)で7着に敗れていたからだろう。少なくないファンが「もしかして、日本の芝に合ってないんじゃないか」と考えたわけだ。

 その予感は的中し、マカイビーディーヴァは本番の天皇賞・春でも大きな見せ場なく7着に敗戦。本馬が2500m以上のレースで敗れたのは、後にも先にもこのレースだけである。

 なお、このレースで3着したアイポッパーは勢いそのまま、今度は逆に豪州のメルボルンCに遠征するが12着に大敗。一方で牝馬ながらに58kgを背負い、見事3連覇を果たしたマカイビーディーヴァは、このレースを最後に引退している。ハンデ戦のメルボルンCだが、トップハンデが勝利したのも33年ぶりの快挙だった。

 あれから16年、今年のウインマリリン、カレンブーケドールが2番人気以上の支持を集めることは恐らくなさそうだが、牝馬にとっては16年ぶりのチャンス、牡馬にとっては16年ぶりの危機と言えるだろう。

 特にウインマリリンは前走の日経賞を牝馬として33年ぶりに勝利し、すでに1つ“壁”を破っている。一方で、1番人気が予想されるアリストテレスは、奇しくも2005年の1番人気リンカーンの甥であり、前哨戦の阪神大賞典(G2)を敗れた菊花賞2着馬という共通点を持つ。

 果たして、68年ぶりとなる牝馬制覇なるか。ウインマリリン、カレンブーケドール共に大きな期待が懸かることは確かだが、さすがにマカイビーディーヴァの時ほどのドキドキ感を抱くのは難しそうだ。

(文=浅井宗次郎)

<著者プロフィール>
 オペックホースが日本ダービーを勝った1980年生まれ。大手スポーツ新聞社勤務を経て、フリーライターとして独立。コパノのDr.コパ、ニシノ・セイウンの西山茂行氏、DMMバヌーシーの野本巧事業統括、パチンコライターの木村魚拓、シンガーソングライターの桃井はるこ、Mリーガーの多井隆晴、萩原聖人、二階堂亜樹、佐々木寿人など競馬・麻雀を中心に著名人のインタビュー多数。おもな編集著書「全速力 多井隆晴(サイゾー出版)」。

JRA 天皇賞・春(G1)武豊アドマイヤグルーヴ挑戦も霞む「豪州史上最強牝馬」参戦に揺れた16年前の記憶。日本のステイヤーたちを震え上がらせた「魔界」からの使者とはのページです。GJは、競馬、, , の最新ニュースをファンにいち早くお届けします。ギャンブルの本質に切り込むならGJへ!

Ranking

23:30更新
  • 競馬
  • 総合
  1. 武豊やC.ルメールでさえ「NGリスト」の個性派オーナーが存在感…お気に入りはG1前に「無念の降板」告げた若手騎手、過去に複数の関係者と行き違いも?
  2. 「シャフリヤールの激走はわかっていた」本物だけが知る有馬記念裏事情。そして“金杯”で再現される波乱の結末とは?
  3. 引退・種牡馬入りが一転して現役復帰!? 数奇な運命をたどることになった競走馬たち
  4. 「元イエスタカス」ダッシングブレイズ重賞制覇に高須院長も「イエス」!? 名前に翻弄された素質馬の飛躍が話題
  5. 浜中俊「哀愁」の1年。かつての相棒ソウルラッシュ、ナムラクレアが乗り替わりで結果…2025年「希望の光」は世代屈指の快速馬か
  6. 「3大始祖」消滅の危機……日本で「2頭」世界で「0.4%」の血を残すべく立ち上がったカタール王族の「行動」に称賛
  7. 「世代最強候補」クロワデュノールは本物なのか?ホープフルSで下馬評を覆す最強刺客
  8. 皐月賞(G1)クロワデュノール「1強」に待った!? 「強さが証明された」川田将雅も絶賛した3戦3勝馬
  9. アドマイヤ軍団が「G1・45連敗」武豊と絶縁し「40億円」と引換えに日本競馬界フィクサーの”逆鱗”に触れた凋落の真相?
  10. 有馬記念に続き東京大賞典も「記憶力」が決め手…最強フォーエバーヤングから絞りに絞った2点で勝負!