
JRAアメリカンシード「20馬身」惨敗は逃げなかったから!? 折り合い以前の“致命傷”にC.ルメールは「突然、やめる感じ……」、見せ場なし最下位にまさかの真相
8日、8年ぶりに函館競馬場での開催となったエルムS(G3)は、4番人気スワーヴアラミスが優勝した。同馬は昨年のマーチS(G3)以来となる重賞2勝目。手綱を取った松田大作騎手にとっては、2015年のクイーンS(G3)を7番人気メイショウスザンナで制して以来、6年ぶりの嬉しい重賞制覇となった。
松田騎手が久々の重賞勝ちを決めた一方で、重賞の勝利騎手インタビューで常連のC.ルメール騎手には、厳しい結果が待っていた。アメリカンシード(牡4、栗東・藤岡健一厩舎)とのコンビで1番人気に支持されたものの、最終コーナーを待たずに手応えがなくなり、勝ち馬から「約20馬身」も離された最下位で入線した。
前走の平安S(G3)でアメリカンシードは、勝ち馬オーヴェルニュに6馬身差の完敗も、大外枠から果敢にハナを奪って2着。14着に大敗した3月のマーチSの悪夢を払拭したかに思われたものの、エルムSでもまるで再現VTRのような敗戦を繰り返してしまった。
前進気勢の強いアメリカンシードの好走条件は、とにかく気分良く走ることの1点に尽きる。スタートがそれほど速くない馬だけに、他馬と競り合ったり、無理に控えて喧嘩をしてしまうと途端に脆さを見せる。
そんな“注文がつく”この馬にとって、エルムSは最悪の展開だったといえる。
包まれないためにダッシュを求められる3枠3番という内枠を引いた上、出走メンバーにはトップウイナーという厄介な相手。重馬場とはいえ、小倉のプロキオンS(G3)を1分41秒3で走破した快足が武器の逃げ馬だ。そう考えると、マイペースで行きたいアメリカンシードのレースプランは、戦前から既に破綻していたのかもしれない。
それでもまだ気分よく走ることが出来れば、何とかなった可能性もなくはない。だが、外からトップウイナー、ヴェンジェンスがハナを奪う勢いで飛び出すと、ルメール騎手は先に2頭を行かせて3番手に控える競馬を選択する。
案の定、リズムを崩したアメリカンシードは頭を上げて行きたがる。ルメール騎手も懸命になだめながら走らせたが、1000m過ぎにはすでに手応えがなくなっていた。
一見、ルメール騎手が控えて掛かったことと無関係に思えない敗戦だが、レース後のコメントでは意外な真相も明らかとなった。
「いいところから運べたけど、3コーナーから突然、やめる感じで苦しくなりました。暑かったし、鼻出血もありました」
どうやらアメリカンシードはレース中に鼻出血を発症しており、これが“致命傷”となったようだ。さらには「鼻出血による出走制限」のため、9月8日まで出走できなくなってしまった。
マーチSでは「落鉄」、そしてエルムSでは「鼻出血」の不運に見舞われた今回。偶然にもどちらも内枠で控える競馬を選択したレースだった。
幸いにも30日間の出走制限は、大目標のチャンピオンズC(G1)に大きな支障とはならなそうだが、控える競馬でも好走できるのかという課題は依然として残されたままだ。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。
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