JRA毎日王冠(G2)勝負を決めたのは展開よりもポテンシャルの違い!? ダノンキングリーVSシュネルマイスター、「動いた」川田将雅と「動かなかった」C.ルメール
10日、東京競馬場で開催された毎日王冠(G2)は、C.ルメール騎手の1番人気シュネルマイスター(牡3、美浦・手塚貴久厩舎)が勝利。スプリンターズS(G1)を制したピクシーナイトに続き、2週連続で3歳馬が古馬を圧倒した。
シュネルマイスター1着に対し、ダノンキングリーがアタマ差で2着という結果に終わったが、この着順にはそれぞれに騎乗していたルメール騎手と川田将雅騎手の判断も少なからず影響している。
13頭立て芝1800mのレース。川田騎手曰く「安田記念よりはるかに具合が良く、その分気持ちが入っていました」というダノンキングリーは、スタートで出遅れたことも痛かった。シュネルマイスターもそれほどいいスタートを決めたとはいえず、この時点で両者の位置取りは揃って後ろからとなる。
ただ、道中の流れが遅いと判断した川田騎手は「馬の気持ちを優先させてポジション」を上げる競馬にシフトする。馬群の外目から追い上げると、中団からスルスルと好位へ取りついた。開幕週の東京は絶好の馬場状態。ある程度前を意識せざるを得ず、判断としては決して間違っていなかったはずだ。
これにはルメール騎手も気付いていたようだが、シュネルマイスターが反応しなかったと振り返っているように、動きたくても動けなかったというのが本音だろう。そこでルメール騎手は、あえてパートナーの気持ちを“リスペクト”して流れに身を任せている。
最後の直線を迎え、先行勢を早々と射程圏に捉えたダノンキングリーが外から猛然と襲い掛かる。対するシュネルマイスターは残り400mでもまだ後方から3番手の苦しい位置にいた。
にもかかわらず、300m辺りから“スイッチの入った” シュネルマイスターは、究極にも近い末脚を披露する。外に出されるやいなや、瞬く間に前の馬との差を詰めていき、先に抜け出していたダノンキングリーをギリギリ捕まえたところがゴール。3ハロン33秒0の上がりは、当然メンバー最速の切れ味だった。
これには敗れた川田騎手も「普通なら勝っているレースですし、勝ち馬は着差以上に相当強い」と脱帽。レースを見ていた手塚師でさえ、「さすがに後ろ過ぎるかなと。差し切るとは思いませんでした」と驚きを隠せなかったのも無理はない。
「今日は休み明けだったので、プレッシャーをかけないようにしましたが、次走はアグレッシブな騎乗をするかもしれません」
レース後に、まだ本気の走りではないといわんばかりのルメール騎手からは、「仮に距離が2000mでもこなせそう」という強気なコメントも飛び出した。シュネルマイスターの走りに、誰よりも驚いていたのはもしかしたらルメール騎手だったか。
また、シュネルマイスターの走りを高く評価したのは、元JRA騎手である安藤勝己氏も同じ。「本番に余裕を持たせた仕上げで、直線だけのエコな勝利。まだ上積みあるやろな」と、次走での伸びしろに期待する旨を自身の公式Twitterにてツイートした。
「川田騎手が優勝した安田記念を“はるかに上回る具合”だったと評価したダノンキングリーと、休み明けだったので“プレッシャーをかけないように”乗ったシュネルマイスター。アタマ差とはいえ、着差以上の開きを感じました。
先に動いて目標にされたものの、ダノンキングリーは完全に勝ちパターン。仮に動かない選択をしていたとしても、勝てたかどうかはわかりません。それほど勝ち馬の走りは強烈なインパクトがありました」(競馬記者)
秋の天皇賞(G1)には、ルメール騎手のお手馬であるグランアレグリアが待機しているため、陣営は次走にマイルCS(G1)を予定していると表明。ただ、この勝利で距離延長も視野に入るなら、来秋は天皇賞参戦も視野に入ってきそうだ。
古馬相手に重賞で健闘する3歳の活躍が目立ち、例年に比して世代レベルの高さも注目されていた今年。ましてや毎日王冠は一昨年のダノンキングリー、昨年のサリオスと3歳が連勝中と好相性のレース。古馬一線級が集まった春の安田記念(G1)でも3着に入り、既にトップクラスの実力を証明していたシュネルマイスターが、陣営の想像を上回る成長をしていたなら、この勝利は必然だったのかもしれない。
(文=黒井零)
<著者プロフィール>
1993年有馬記念トウカイテイオー奇跡の復活に感動し、競馬にハマってはや30年近く。主な活動はSNSでのデータ分析と競馬に関する情報の発信。専門はWIN5で2011年の初回から皆勤で攻略に挑んでいる。得意としているのは独自の予想理論で穴馬を狙い撃つスタイル。危険な人気馬探しに余念がない著者が目指すのはWIN5長者。
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