JRA「当分見納め」濃厚R.ムーア帰国の本音と建前、O.マーフィーも例の疑惑で数年無理?見えない大敵がネックとなる再来日
昨年2月から蔓延し始めた新型コロナウイルスの感染対策で、日本から海外、海外から日本への移動が難しくなった。その影響は日本競馬界にも押し寄せ、近年では秋競馬の風物詩となっていた外国人騎手の来日が昨秋は見られなかった。
ただ今秋に入り隔離期間が緩和されて、日本への出入国が昨年より格段に緩和された。そのため、今年はC.デムーロ騎手とR.ムーア騎手の2名が短期免許を取得して、ジャパンCウィークから年末まで日本国内で騎乗する予定だった。
しかしムーア騎手はジャパンC(G1)当日に何と母国へ帰国して、来週以降騎乗しないことを発表。理由についてムーア騎手は「証人としてリモートで出廷可能と思っていた裁判で、直接の出廷を求められたため」と発表。帰国の決め手は出廷であるが、これには本人のモチベーションも関係しているそうだ。
「思ったよりも有力馬が集まらなかった事も一因のようです。実際、チャンピオンズC(G1)で騎乗予定だったエアスピネルは、伏兵の域は出ない程度の存在でしたし、その他でも目玉となるような馬もいなかったのではないでしょうか。
日本へ来る外国人騎手は、基本ノーザンファームなどの大手がバックアップしているケースがほとんどです。そのため、有力馬に多く乗せてくれるだろうと思っていただけに『期待ハズレ』だったのかもしれません。外国人騎手はそういった面でシビアな見方をしますから、今回の件も特別驚くほどではないです」(某トラックマン)
ムーア騎手の実際のところはさておき、騎乗馬を用意していた陣営にとっては大きな誤算となったに違いない。
また、先月のBCディスタフ(米G1)で、マルシュロレーヌを勝利へ導いたことでお馴染みのO.マーフィー騎手も来日を期待されている騎手の一人だ。
マーフィー騎手は昨夏フランスで騎乗した際に行われた尿検査で、コカインの陽性反応が検出される「薬物疑惑」もあった。
こういったことにJRAは敏感でもあり、もしかするとしばらく短期免許が下りない可能性すら出てくるかもしれない。今後2、3年で何もなければその後にはノーザンファームのバックアップもあって申請できるようになると思うが、現時点ではまだまだ厳しいのではないか。
「ただ、腕は確かなので海外ではどんどん乗せるようです。今年の凱旋門賞(仏G1)もクロノジェネシスに乗せたくらいですから。C.ルメール騎手は来週行われる香港にもレシステンシアで行くつもりでいましたが、福永祐一騎手や川田将雅騎手が遠征予定。ノーザンサイドとしては、隔離期間を考えると2週間も彼らがいなくなると所有馬の乗り役が手薄になるからと、ルメール騎手にはいい馬を用意するからと納得してもらったようです」(同)
ただ、ここにきて非常に大きな問題が出てしまった。新型のオミクロン株が世界的に流行の兆しが見え始めた事で、彼らの香港遠征もどうなるか分からなくなった。水面下で香港に行けるのか、行った場合には隔離期間や対策はどうなるのかなど、詳細な情報が必要となる。
ようやく終息の兆しも見え始めたコロナ禍だったが、新たな難題が発覚したことで外国人騎手や日本人騎手の入出国に関するハードルは、見えない大敵によって上げられてしまった。
(文=坂井豊吉)
<著者プロフィール>
全ての公営ギャンブルを嗜むも競馬が1番好きな編集部所属ライター。競馬好きが転じて学生時代は郊外の乗馬クラブでアルバイト経験も。しかし、乗馬技術は一向に上がらず、お客さんの方が乗れてることもしばしば……
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