JRA「21馬身差」の怪物登場も裏切りの前例が不安!? かつてC.ルメールがG1を捨ててまで手放さなかった逸材の厳しい現状
5日、中山競馬場で行われた8Rの3歳上・2勝クラスは、三浦皇成騎手の1番人気ウィリアムバローズ(牡3、栗東・上村洋行厩舎)が、後続を寄せ付けない7馬身差で圧勝を決めた。
近2走は逃げ切り勝ちながら、この日は2番手から抜け出す横綱相撲。単勝オッズ1.3倍の断然人気に支持されたとはいえ、それでも“美味しい”と思わせられるほどの楽勝劇だった
5月中京でデビューしたウィリアムバローズだが、これまで芝のレースを4戦して全敗と苦しんでいた。転機となったのは芝からダートへの転戦だ。8月札幌の未勝利戦を4馬身差で快勝して素質が開花。次走の11月福島では大差勝ち、そして7馬身差で勝利した今回でダートは向かうところ敵なしの3連勝となった。3戦で2着馬につけた着差は合計で約21馬身と、いまや「ダートの怪物候補」として注目されるようになった。
先週のチャンピオンズC(G1)は、芝G1を勝ったソダシが初ダートに挑戦したものの12着に惨敗。血統的な背景からもダート適性があると考えられていただけに、意外な結末だったといえる。そういう意味では、芝のG1を勝ったミッキーアイルを父に持つウィリアムバローズにダート適性があったのは、ソダシと逆のケースだったのかもしれない。
このまま順調なら、来年のフェブラリーS(G1)やチャンピオンズCに参戦する青写真も描けそうな期待馬だが、ひとつ気になるとすれば勝ち時計か。楽勝したとはいえ、1分53秒1は、準メインの10R市川S(3勝クラス)を5馬身差で制したブランクチェックの1分51秒9に比べて1秒2も遅い。単純比較で市川Sの5着馬と同じ走破時計だったことを考えると不安は残る。
そんなウィリアムバローズの快進撃で思い出されるのが、昨年の同時期に同じようにダートの怪物候補として話題を独占したアメリカンシード(牡4、栗東・藤岡健一厩舎)の存在だ。
芝デビューで結果の出なかった同馬もまた、ダートに転戦して3連勝。その中身も7馬身、5馬身、5馬身の計17馬身差という圧巻の内容だった。4戦目で重賞初挑戦となったマーチS(G3)は、同日の中京で芝のスプリントG1・高松宮記念の開催がありながらも、C.ルメール騎手がこちらに騎乗したため、G1を捨ててまで手放さなかったほどの期待をされているとも噂された。
注目の一戦で単勝オッズ1.4倍の圧倒的1番人気を裏切る14着に惨敗し、その後も平安S(G3)で2着に入ったものの、勝ち馬オーヴェルニュから6馬身も置き去りにされ、前走のエルムS(G3)でも1番人気で14着と近況は冴えない。
今回は中山競馬場で11日に行われる師走S(L)に出走を予定しているようだが、主戦のルメール騎手は阪神JF(G1)でステルナティーアに騎乗するため、ここまで5戦続いたコンビも解消が決まっている。
ルメール騎手に再び振り向いてもらうためにも、ぜひともここで結果を出しておきたい。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。
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