JRA「まだ6割」G1未勝利騎手が出会ったクラシックの大本命!? もう繰り返したくない「力不足」の烙印

5日、中山競馬場で行われた5Rの2歳新馬(芝2000m)は、丹内祐次騎手の5番人気マイネルトルファン(牡2、美浦・高橋祥泰厩舎)が優勝。ゴール前で3頭が横一線に並んだ戦線をモノにしてデビュー勝ちを飾った。
この日は中京競馬場でチャンピオンズC(G1)が開催されるとあって、トップジョッキーの多くは中京で騎乗。裏開催となった中山でひっそりとデビューしたマイネルトルファンだが、わずかアタマ差での勝利とはいえ、もしかしたらとんでもない“大物” の可能性がありそうだ。
8頭立ての少数で行われたレース。好ダッシュを決めたセキテイオーが逃げ、マイネルトルファンは出遅れ気味のスタートながら、丹内騎手が促して2番手での追走。他馬もこれといった大きな動きもないまま、1000m通過65秒0という超スローでレースは流れた。
こうなるとマイペースの逃げに持ち込んだセキテイオーにとって絶好の展開。2番手とはいえ、道中で丹内騎手が激しく手綱を動かしてムチまで入れられているマイネルトルファンとの手応えの差は歴然。勝負ところの最終コーナーを迎えた際、両馬の差は縮まるどころかむしろ広がったほどだった。
しかし、鞍上のアクションから一杯にすら思えたマイネルトルファンが真価を発揮したのはここからだ。残り200mではセーフティリードを築いたかに見えるセキテイオーとの差を一完歩ごとに詰めていき、ゴール前で強襲してきたミラキュラスライトと馬体が合わさるともう一伸び。抜群の勝負強さを見せて勝ち切ったのである。
勝ちタイムは2分5秒0でスローペースの前残り決着。上がり3ハロンも34秒9と、レースの上がり35秒0と大差がない。表面的な数字だけなら特に印象に残らない凡戦だったかもしれない。
だが、コンビを組んだ丹内騎手がレース後に残したコメントは、想像以上の驚きを隠せない言葉だった。
「調教では気が悪く、スイッチが入れば良い走りをしていました。まだ体が緩く、正直6割の状態です。これからの馬です」
はたしてこの評価が意味するものとは何なのか。そのまま言葉通りに受け取れば、マイネルトルファンは本来のポテンシャルからほど遠い状態で“勝ってしまった” ということになる。もし丹内騎手のコメントが正しいのなら、10割の仕上がり状態ならとてつもない能力の持ち主だったとしても不思議ではない。
「6割発言がリップサービスだったのかどうかの真相は、実際に騎乗していた丹内騎手しか分かりません。ただ、血統的には半姉にユーバーレーベンがいる良血馬です。
父がゴールドシップからオルフェーヴルに替わりましたが、同じくステイゴールド系の種牡馬で相性のいい配合でしょう。ちょっと気になる馬ではありますね」(競馬記者)
G1裏開催の中山でデビューした上に地味といっては失礼だが、中堅の丹内騎手とのコンビだったことも盲点だったのかもしれない。今後の成長次第では、来年のクラシックで大本命のパートナーとなる可能性も十分考えられるだけに、この出会いは丹内騎手も大事にしたいところ。
姉のユーバーレーベンには、フラワーC(G3)で騎乗する機会もあったが、1番人気で3着に敗れてチャンスを生かせなかった。最近はM.デムーロ騎手がラフィアンの有力馬に騎乗するケースも増えたことも脅威。デムーロ騎手がオークスを制したことで、それまで多くの騎乗を任されてきた丹内騎手や柴田大知騎手らへの風当たりも強くなった。
このまま「力不足」の烙印を押されてしまう最悪の事態を回避するためにも、まだ勝利のないG1をマイネルトルファンとのコンビで手に入れることが出来れば最高だ。次走でさらなるパワーアップをした姿を見せてくれることに期待したい。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。
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