JRA武豊「ロン」不在でもリーチ一発に現実味!? 不安抱えるコマンドライン、ホープフルS(G1)アスクワイルドモアで完全制覇のチャンス十分
今週末は、中山競馬場でドリームレース有馬記念(G1)が開催される。世代を問わない最強馬候補たちの激突するグランプリを楽しみに待っているファンは少なくないだろう。
ただ、中央競馬1年の総決算は有馬記念後の28日に行われるホープフルS(G1)が、事実上の最後。1年の最後を締めくくるレースだけに、2歳G1を先に開催して、有馬記念こそラストにすべきというファンの声も根強いとはいえ、それはそれで売上げやJRAによる大人の事情も絡んでくるのでやむを得ない事情もある。
それはともかく有馬記念が終わったからといって、早々に燃え尽きてしまっては競馬ファン失格だ。来年のクラシックを占う芝2000m戦もしっかりとチェックしておきたい。
2017年からG1に昇格してからのホープフルSの歴史はまだ浅いながら、マイルのG1である朝日杯FS出走組が苦戦するクラシックに直結している点は見逃せない。
過去の優勝馬から18年サートゥルナーリアが皐月賞(G1)、19年コントレイルが無敗で三冠を達成しており、結果的にもG1レースに相応しいメンバーが集まるようになったことを証明してみせた。
その一方で、今年の出走メンバーを見渡すと、クラシック主役級といえる馬がいるかどうかは疑問が残る。
C.ルメール騎手が「来年のダービー馬候補」と評しているコマンドライン(牡2、美浦・国枝栄厩舎)がいるのに「何を言っているんだ」というツッコミも入りそうだが、そのコマンドラインとて絶対的な存在となるかどうかは、レースが終わってみないことにはわからない。
同馬最大の不安は、デビューからの2戦でマイルまでしか距離経験がないことだ。これはホープフルSがG1昇格前も含めて、過去10年の勝ち馬の前走距離は芝1800mが4勝、芝2000mが6勝しており、前走がマイルだった馬は未勝利というデータに引っ掛かる。
先週の朝日杯FSを5着に敗れたジオグリフは「距離が延びたら大丈夫」と、ルメール騎手が振り返ったが、こちらはコマンドラインとは逆にマイル経験のない馬だった。両馬の距離適性が正反対だった場合、今度のルメール騎手はレース後に「距離が長かった」とコメントを残す可能性すらあるかもしれない。
また、前走のサウジアラビアRC(G3)で1/2馬身差の2着に入ったステルナティーアが、2番人気に支持された阪神JF(G1)を見せ場なく7着に凡走したことも、気になる材料だ。コマンドラインが評判倒れに終わるようなら、今年のホープフルSはG1に昇格して以降、最もレベルの低い年となる恐れも出てくる。
となれば、期待の大きかったロンの出走が叶わなかったにせよ、ドウデュースで朝日杯FSを制した武豊騎手の勢いは怖い。
ホープフルSでは、アスクワイルドモア(牡2、栗東・藤原英昭厩舎)に騎乗を予定しているが、未勝利勝ちの身で初重賞挑戦した札幌2歳S(G3)をジオグリフの2着に好走した。
同馬の父であるキズナは、13年の第80回日本ダービー(G1)で武豊騎手がコンビを組んで勝利した馬。年間200勝も珍しくなかったレジェンドが、12年にはデビュー以来最低の年間56勝と苦しんだ時期に登場した希望の光でもあった。
「僕は帰ってきました」
レース後の勝利騎手インタビューで、ファンからの大歓声にそう応えた武豊騎手。思い入れの強いキズナ産駒で挑む今回、乗り方次第でチャンスは十分にありそうだ。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。
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