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JRA 有馬記念(G1)「持ってる」武豊と天地の差にファンは同情!? 持ってない同期騎手を襲った「3年連続」の悲劇

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武豊騎手

 中山競馬場で26日に行われる有馬記念(G1)は、年末の総決算と称される大レースで、競馬の祭典日本ダービー(G1)同様「お祭り」に例えるファンも多い。

 その理由として、他のレースと異なり「公開枠順抽選会」が行われるのも大きいだろう。競馬の枠順は本来非公開で規定の時間に発表するが、有馬記念は2014年から公の場で抽選によって出走馬の枠順が決められる。

 そして有馬記念では枠順が、他のG1以上に勝負の大方を決すると言っても過言ではないほど重要である。1986年以降の有馬記念における枠番別成績を調べると、1~4枠の内枠が複勝率上位を占めている一方、8枠は複勝率8.5%と唯一10%を切っており、大外16番に至っては86年以降1度も馬券圏内に入れていない。

 そんな「内枠有利・外枠不利」が顕著な有馬記念の枠順だけに、関係者にとっても手に汗握る抽選会だが、過去7度と浅い歴史の中で数々の出来事が起こってきた。

 特にファンの間で強く印象に残っているのが、武豊騎手の「強運」ぶりだ。記念すべき第1回目で1枠1番をゲットしているが、それだけでは終わらない。

 武騎手が次にグランプリの抽選会へ参加したのが、2年後の16年。この年はジャパンC(G1)を勝ったキタサンブラックで参戦していた。

 キタサンブラックは全体の13番目で指名を受けると、武騎手が壇上へ上がってクジを引いた。1枠の2つと「死枠」の8枠16番が残っている状況だったが、持ってる男はしっかりと1枠1番をゲット。会場は大いに盛り上がり、武騎手はニンマリとドヤ顔を決めた。

 そして翌年。キタサンブラックのラストランということで、有終の美を飾るためにも内枠が欲しいところだが、武騎手はこのときもしっかりと期待に応えた。

 全体の6番目でクジを引くことになった武騎手。自信ありげに引くと、何と1枠2番の文字が。会場からは昨年に引き続き拍手喝采となり、オーナーの北島三郎氏も満面の笑みを浮かべた。

 あまりの歓声に「これは結果じゃないですからね」と、武騎手が場を諌めるシーンもあったが、念願通りの好枠ゲットに「一番欲しかった」と、ユタカスマイルを見せた。

 武騎手の強運はまだ終わらない。さらに1年後もオジュウチョウサンに乗るため、抽選会へ参加した。陣営からの指名を受けて、クジを引くと……。

 またも「1枠1番」を引いたのである。

 まさに「甲子園は清原のためにあるのか」ではなく「抽選会は武豊のためにあるのか」状態だ。これには武騎手本人も若干驚いた様子だったが、「この流れで行くと蛯名君が16番引きそうなんで」と、お得意のユタカジョークで笑いを誘った。

 そう、武騎手が「持ってる男」ならば、正反対に「持っていない男」が蛯名正義騎手(現調教師)だ。二人は同い年で、現役時代の蛯名騎手もまた歴代4位の通算2541勝を誇る名ジョッキーだった。

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蛯名正義騎手(現調教師)

 1回目の14年は、この年は抽選で指名を受けると、残っている好きな枠番を選べる「ドラフト制」ということもあって、早いもの勝ち。ところが、蛯名騎手は最後まで自分に順番が回ってこず。その結果、大外16番しか残っておらず、これを選ばざるを得なかった。

 翌15年、蛯名騎手が騎乗するマリアライトは、なんと前年とは逆に1番目で指名を受けた。前年同様にドラフト制なら、迷わず「1枠」を指名すればいいのだが、この年から更に枠番の抽選を行う方式へ変更されたことも、蛯名騎手の「持ってない男」ぶりを象徴するエピソードだ。

 この年は現ヤクルトスワローズの青木宣親選手がゲストで呼ばれ、枠番のクジを引くことになっており、満面の笑みでクジを引いてくれたのだが……。

 蛯名騎手の表情が一瞬で引きつったような表情に変化した。そう、割り当てられたのは、またしても「8枠16番」だったのだ。本番のマリアライトは不利な枠から大健闘の4着だった。もし内枠であったら、馬券圏内突入まであったのではと思わせる走りだっただけに残念である。

 そして、来る16年。この年の宝塚記念(G1)を制し、春秋グランプリ連覇を狙うマリアライトの蛯名騎手だが、悲しいことにまたしても名前を呼ばれない。とうとう最後まで呼ばれないまま、ゴールドアクターの吉田隼人騎手と一緒に引くことに。

 残っている枠は2つ。1つは1枠2番の好枠、もう1つは8枠16番の死枠だ。ここまで来れば、結末は既にお気づきだろう。蛯名騎手は見事8枠16番を引き当ててしまったのだ。

 落胆を隠せないマリアライト陣営とは対照的に、3年連続の不運を目撃した競馬ファンは大盛り上がり。「蛯名騎手また大外」の話題もトレンド入りしたほどだった。

 ここまで来ると4年連続という珍記録に期待する声もあったなか、幸い蛯名騎手の連続大外記録は3年でストップ。サクラアンプルール騎乗で参加した17年は何とか5枠9番を確保し、負の連鎖を断ち切ってみせた。

 蛯名騎手は現在見習い調教師へ転身。来年3月1日付けで厩舎を開業させ、これからは騎手としてではなく、調教師として、管理馬を有馬記念などのレースへ送り出す身となる。

 調教師もクジを引くことができる枠順抽選会。蛯名調教師が有馬記念の枠順クジを引く姿を期待したいところだが、果たしてどうなるだろうか。

(文=坂井豊吉)

<著者プロフィール>
全ての公営ギャンブルを嗜むも競馬が1番好きな編集部所属ライター。競馬好きが転じて学生時代は郊外の乗馬クラブでアルバイト経験も。しかし、乗馬技術は一向に上がらず、お客さんの方が乗れてることもしばしば……

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