JRA「劇薬」をかけられて発走除外や抹茶を食べた馬も……、“最高難易度”中山大障害(G1)の「拍手」が新たな伝統になることを期待!

25日に行われる中山大障害(G1)。その歴史は古く、第1回は「大障害特別」という名称で創設されたこの障害レースは、今から90年近い大昔の1934年誕生したという。
JRAの公式サイトによれば、当時は今よりも大きい障害物を合計10回も飛越しながら、バンケットを6回も上り下りするという過酷なレース条件。その後、幾度かの名称や開催時期の変更があったものの、JRAで最も難易度が高いレースであるという伝統は失われていない。
こうした長い歴史と、最高の難易度を誇る中山大障害だが、過去には今では信じられない「事件」が起きていた。
まずは69年に起きた通称「バスター事件」。その年の中山大障害に出走予定だった、バスターという馬のカイバに抹茶が混入していたことが発覚。抹茶には競馬施行規則で禁止薬物となっているカフェインが入っているため、摂取した疑いがある同馬は残念ながら、出走取り消しとなってしまった。
なぜ抹茶が入っていたのか。当時報じられた記事によれば、同じ中山大障害に出走したロイタンという馬の関係者たちの仕業だといい、バスターを出走取り消しにすることで、自分たちの馬を上位入賞させて多くの賞金を得ようと企んでいたという。
厩務員を含むロイタンの関係者は後に逮捕されたが、ちなみに優勝候補だったバスターは検査の結果、抹茶を食べていなかったことが判明。自らの意思とは関係なく、出走取り消しとなったバスターの無念は計り知れないだろう。
さらに中央競馬界の「黒歴史」のひとつでもあるのが、72年の中山大障害での出来事だ。ここでも被害に遇ったのは、優勝候補のダテハクタカという馬。当日のレースが始まる直前のパドックで、事件は起きてしまった。
不穏な動きを察知したのか、同馬はパドックで突然暴れ始めて蹄鉄が取れてしまう。一旦、パドックを出て蹄鉄を打ち替えようとしたその時、馬の右目に液体のようなものが付着していることが判明。しきりに痛がる同馬を獣医が診断すると、とても走れる状態ではなかったという。
仕方なく、圧倒的な人気を集めていたダテハクタカは出走取り消し。後の調べによるとその液体は硫酸で、明らかに本命馬を狙った犯行と断定。かろうじて失明は免れたものの、同馬は復帰してから以前のような走りはできずに引退している。
中山大障害といえば、レースが終わった後のファンの拍手が有名だ。4キロ以上もの長い距離の間に待ち受ける「唯一無二」の難易度を誇る障害物。文字通りそれらを乗り越えて、無事に走り終えた馬たちの健闘を讃える拍手は、同レースの新たな伝統として、これからも続くことを願いたい。
さらに今年、無事に出走が叶った馬に対してはもちろん、過去に起きた「黒歴史」で出走できなかった2頭の分も忘れずに、レース後には拍手を送ろうと思う。
参考文献
『ザ・競馬トリビア史上最強の珍記録・怪事件』(廣済堂出版)
『Numberプラス 競馬黄金の蹄鉄』(文藝春秋)
(文=鈴木TKO)
<著者プロフィール> 野球と競馬を主戦場とする“二刀流”ライター。野球選手は言葉を話すが、馬は話せない点に興味を持ち、競馬界に殴り込み。野球にも競馬にも当てはまる「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」を座右の銘に、人間は「競馬」で何をどこまで表現できるか追求する。
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