
JRA横山武史「悪魔的戦略」に女王クロノジェネシス散る。絶対王者C.ルメールを引かせた「絶妙の封殺劇」に新時代幕開けの予感

まさに、この1年の成長を象徴するような結果だった。
26日に中山競馬場で開催されたグランプリ有馬記念(G1)は、1番人気のエフフォーリア(牡3歳、美浦・鹿戸雄一厩舎)が優勝。皐月賞(G1)、天皇賞・秋(G1)に続くG1・3勝目を手にし、年度代表馬の座をほぼ確実なものにした。
グランプリ4連覇が懸かったクロノジェネシスとの「二強対決」といわれた今年の有馬記念。どちらが1番人気になってもおかしくない中、最終的にファンが選んだ1番人気は、単勝2.1倍のエフフォーリア。2番人気だったクロノジェネシスの2.9倍とは、やや差がついた印象だ。
だが、もしエフフォーリアの鞍上が「昨年の横山武史騎手」であれば、果たしてエフフォーリアは1番人気になっていただろうか。
「男子、三日会わざれば刮目して見よ」という中国・三国志時代の言葉があるが、先日22日に23歳になったばかりの横山武騎手の成長の速さには驚かされるばかりだ。
昨年、史上最年少で関東リーディングを獲得した横山武騎手だったが、重賞勝利は1つだけという新鋭だった。ところが今年は、エフフォーリアとのコンビで競馬界を席巻。初のG1制覇となった皐月賞で勢いがつくと、天皇賞・秋、そして有馬記念に加え、タイトルホルダーとのコンビで菊花賞(G1)を制覇した。

年間G1・4勝は、クロノジェネシスの鞍上で5年連続リーディングが確実視されるC.ルメール騎手の5勝に次ぐ数字だ。
この有馬記念も、まさに鞍上の“神騎乗”がもたらした勝利と言っても過言ではない。エフフォーリアの横山武騎手VSクロノジェネシスのルメール騎手。二強対決の明暗を分かったのが、向正面での駆け引きだった。
スタートから、これまでと異なる中団からの競馬を選択した横山武騎手は、前を行くルメール騎手を観察するような徹底マーク。向正面の中ほどを過ぎ、勝負所に差し掛かる直前、外に出してまくりを仕掛けようとしたクロノジェネシスの動きを外から馬体を併せることで牽制したのが、横山武騎手とエフフォーリアだった。
「正直、あの騎乗には鳥肌が立ちました……。向正面で外を並走していたキセキが進出を開始したことで、外側のスペースが生まれたクロノジェネシスのルメール騎手もそれに続くように上がっていこうとした矢先、待ってましたとばかりにエフフォーリアと横山武騎手が外から馬体を併せに行ったんです。
再び外を塞がれたルメール騎手は、前にキセキ、外にエフフォーリアと進出のブレーキを踏まざるを得ない状況に。結局、クロノジェネシスが進出を開始できたのは、エフフォーリアが通過した後。最後は両馬に2着ディープボンドを挟んで3/4馬身+1/2馬身という差がつきましたが、『あの時』に生まれた差がそのままゴールまで詰まらなかったという印象です」(競馬記者)
「皆さんご存じの通り、昨日僕のふがいない騎乗で騎乗停止になってしまって……」
この日の有馬記念、横山武騎手には期するものがあった。前日の新馬戦で騎乗したのは、エフフォーリアの弟にあたるヴァンガーズハート。単勝1.7倍に支持された期待馬は、最後の直線で一度は先頭に立ったものの、横山武騎手が追う手を緩めたところをルージュエヴァイユが強襲。
ハナ差で競り負け、JRAから油断騎乗と見なされた横山武騎手には2日間の騎乗停止処分が下った。
「まだまだ本当に未熟で、ジョッキーがまだまだ本当に情けないんですけど、これからもっと気を引き締めるので、もっと頑張りたいと思います。よろしくお願いします。すみませんでした!」
なんとも若武者らしい勝利騎手インタビューをそう締めくくった23歳の父は「武豊騎手以上の天才」とさえ言われる横山典弘騎手。来たる2022年『HERO IS COMING.』を新キャッチコピーとして新たなスタートを切るJRAに現れたニューヒーローは、果たしてどこまで大きく成長するのだろうか。
無論、絶対王者ルメール騎手もこのまま黙ってはいないだろう。有馬記念を終えた競馬界だが、早くも来年の足音が大きくなってきた。
(文=銀シャリ松岡)
<著者プロフィール>
天下一品と唐揚げ好きのこってりアラフォー世代。ジェニュインの皐月賞を見てから競馬にのめり込むという、ごく少数からの共感しか得られない地味な経歴を持つ。福山雅治と誕生日が同じというネタで、合コンで滑ったこと多数。良い物は良い、ダメなものはダメと切り込むGJに共感。好きな騎手は当然、松岡正海。
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