「矛盾」するJRA賞結果にファンの非難殺到!? 「ノミネートすらされない……」有名評論家も苦言を呈した選考基準
11日、JRAから「2021年度 JRA賞」が発表された。
JRA賞の年度代表馬、競走馬各部門の受賞馬は記者投票の結果に、馬事文化賞は8名で構成される馬事文化賞選考委員会の判断に、それぞれ基づいて決定される。
今年もいくつかの部門で、ファンから疑問の声が上がる選考結果があった。その1つに挙げられるのが、JRA賞馬事文化賞の選考だ。
同賞は、当該年度において文学、評論、美術、映画、音楽、写真、公演等を通じ馬事文化の発展に特に顕著な功績のあった者に授与される。今年は『馬のこころ 脳科学者が解説するコミュニケーションガイド』(パンローリング株式会社)の著者ジャネット・L・ジョーンズ氏らが受賞した。
また、委員会の推薦があった場合において、理事長が特に必要と認めるときに授与される特別賞に『馬と古代社会』(八木書店)に携わった3名が選ばれた。
受賞者はいずれも馬事文化賞の選考内容に合致する活動を行っており、順当に選ばれたと見られるが、一部のファンから「ウマ娘が選ばれなかった」ことについて、不満を持つ意見がネット上の掲示板やSNSで見られた。
ウマ娘とは競馬アプリゲームの『ウマ娘 プリティーダービー』(Cygames)のことを指す。昨年2月末に配信された本作は1200万ダウンロード突破に、年間売上1000億円超えの大ヒットを果たし、数々の賞を受賞し世間に広く認知されるようになった。
その影響か最近はウマ娘から競馬にハマるライトファンが急増。また、同ゲーム内に登場し、現在北海道で余生を送っているナイスネイチャにファンから多くの寄付が寄せられ、目標の10倍以上の約3500万円もの寄付金が集まったことも話題となった。
「『Cygames』の親会社『株式会社Cyber Agent』の藤田晋社長が馬主に参入し、競走馬を次々に“爆買い”したことも、大きな反響を呼びましたね。羽振りの良さの理由について藤田氏は『ウマ娘がヒットしたので、競馬界に還元できれば』と、話しています。
また、最近はウマ娘で競馬に興味を持った方々が、次々と生産牧場などで働き始めているみたいです。
馬事文化の定義は広く、ゲーム作品を入れるのはどうかという意見もあると思います。ただ、競馬を世に広く浸透させ、競馬界の利益に貢献したという点で見れば、ウマ娘は馬事文化賞の受賞候補と言えるでしょう」(競馬記者)
しかし、馬事文化賞はこれまでゲームやマンガ作品等を事由に、受賞者を選出した前例がない。
現役騎手や調教師が競馬に興味を持つ契機となった『ダービースタリオン』や『ウイニングポスト』などのゲーム作品をはじめ、『みどりのマキバオー』(集英社)・『馬なり1ハロン劇場』(双葉社)などのマンガ作品の関係者は、誰ひとり受賞していない。
この件について競馬評論家の亀谷敬正氏は自身のTwitterにて「馬事文化賞で『ダビスタ』『ウマ娘』がノミネートすらされないことについての議論ももう少しあってもいいかなーと思うのです」と発信し、この意見に賛同した多くのファンが、リプライや引用RTしている。
さらに同氏は「マルシュロレーヌ『ライトファンの認知度などを考えると、歴代の受賞馬との比較で……』の件『ならウマ娘が馬事文化賞にノミネートされない理由は』」と、選考理由の“矛盾点”についても言及している。
「昨年のBCディスタフ(G1)を制したマルシュロレーヌが、JRA賞特別賞を受賞できなかった理由の1つに『日本競馬の歴史として偉業を成し遂げたが、ライトファンの認知度などを考えると、歴代の受賞馬との比較で少し弱い』という意見も挙がっていました。
特別賞でライトファンの存在を考慮し選考しているのに対し、馬事文化賞はライトファンに馴染み深い作品や人物を軽視するかのような選考結果にも受け取れます。選出する委員会がそれぞれ異なるとはいえ、同じJRA賞の括りなのですから、ライトファンの認知度を考慮するか否かは統一すべきだと思います」(同)
競馬ファンを中心に様々な議論を巻き起こした今年のJRA賞。果たして、来年以降は皆が納得する結果に落ち着くのだろうか。
またも物議を醸す事態に発展すれば、賛否の分かれる選考基準に再び疑問を投げかけられることもありそうだ。
(文=坂井豊吉)
<著者プロフィール>
全ての公営ギャンブルを嗜むも競馬が1番好きな編集部所属ライター。競馬好きが転じて学生時代は郊外の乗馬クラブでアルバイト経験も。しかし、乗馬技術は一向に上がらず、お客さんの方が乗れてることもしばしば……
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