JRA武豊のイメージを「完全払拭」したキタサンブラック、最強候補イクイノックスも証明した「キャラ変」の決定打とは
23日、中京競馬場で行われた6Rの3歳・新馬(芝1600m)は、坂井瑠星騎手のキタサンシュガー(牝3、栗東・清水久詞厩舎)が快勝。7番人気の伏兵評価ながら、鋭い末脚を繰り出して先行勢をまとめて差し切った。
同馬の父は、昨年産駒がデビューした新種牡馬のキタサンブラック。そして、管理する清水久詞調教師と北島三郎オーナーは、七冠馬である父と同じ組み合わせ。主戦を任されていた武豊騎手が騎乗していなかったことは残念だが、見どころ十分な走りだっただけに、今後も注目の1頭となりそうだ。
そんなキタサンシュガーだが、1分37秒7の勝ちタイムを遅いと感じるのは早計だ。時計からも察しがつくように、このレースは前半3F36秒5に対し、後半3F35秒1の後傾ラップ。スローペースに落ち着いたこともあり、掲示板に名を連ねたのは勝ち馬以外、すべて前々でレースをしていた組だった。
展開的に前残りとなった中、キタサンシュガーがただ1頭次元の違う切れ味で伸びたことに意味がある。
「折り合いはつきましたし、最後の脚もいいモノを持っていますね。これからが楽しみ」
レース後、勝利へと導いた坂井騎手はそう振り返ったものの、このコメントで気になったのは、いいモノを持っていると評した最後の脚という言葉だ。
武豊騎手とコンビを組んだ現役時代のキタサンブラックのイメージは、どちらかというと優等生的なレース内容が多かったため、好位につけて早めに抜け出すスタイルの印象が根強く残っている。何しろキャリア20戦の内、17戦を終始2番手以内のポジション。引退レースとなった2017年の有馬記念(G1)も見事な逃げ切りで勝利している。
また、敗れたレースで後ろの馬に交わされるシーンも多く、どうしても切れる脚が合うイメージが伴わないのも無理はない。それだけに、キタサンブラック産駒もまた、父と同じく先行抜け出しが武器の馬を思い浮かべた関係者やファンも多かっただろう。
しかし、実際に産駒がデビューすると、イメージが一変する。
これまで16勝を挙げているが、16勝中10勝で上がり3ハロン最速の脚を駆使しての勝利。さらには、最速ではなかった6勝のうち5勝も3位以内なのだから末脚は切れに切れている。この結果からも、優等生のイメージが強かった父とは異なり、産駒に関しては鋭い末脚が魅力といえるだろう。
「リアルスティールを後方から差し切った15年の菊花賞(G1)や致命的とも思える出遅れから挽回した17年の天皇賞・秋(G1)のように、元々切れる脚がない馬という訳でもなかったのでしょう
武豊騎手が好位から抜け出す横綱相撲を選択したことも大きいですし、強い馬が展開に左右されにくいポジションで競馬をすることは理に適っています。前につければ当然末脚が鈍りますから、結果的にイメージが先行しただけなのかもしれません」(競馬記者)
初年度を代表する産駒として、新馬から東京スポーツ杯2歳S(G2)を無敗で連勝したイクイノックスのような大物候補も登場した。同馬はデビュー戦で7馬身突き放した相手サークルオブライフが、昨年の阪神JF(G1)を制したように、世代トップクラスの実力の持ち主でもある。
昨年暮れの2歳G1は、朝日杯FSをドウデュース、ホープフルSをキラーアビリティがそれぞれ優勝したが、イクイノックス陣営は皐月賞(G1)への直行を表明。東スポ杯からクラシックに向かうローテは異例のことだが、この馬ならそれまでの勢力図をあっさり塗り替えても不思議ではないだろう。
そして、強力な決め手を持っているということは、G1のような一線級が揃うレースでまたとない武器となる。高速馬場で速い時計の決着が特徴といえる日本の競馬で、スピードと切れを併せ持っていることは、大きなアドバンテージ。これは、種牡馬キタサンブラックの成功を予感させるのに十分な根拠ともいえそうだ。
ポストディープインパクトの座を争う後継種牡馬の筆頭に名乗りを挙げるのは、自身の産駒コントレイルではなく、もしかすると全兄ブラックタイドの代表産駒キタサンブラックなのかもしれない。
(文=黒井零)
<著者プロフィール>
1993年有馬記念トウカイテイオー奇跡の復活に感動し、競馬にハマってはや30年近く。主な活動はSNSでのデータ分析と競馬に関する情報の発信。専門はWIN5で2011年の初回から皆勤で攻略に挑んでいる。得意としているのは独自の予想理論で穴馬を狙い撃つスタイル。危険な人気馬探しに余念がない著者が目指すのはWIN5長者。
PICK UP
Ranking
17:30更新- ルメール軍団「誤算続き」で迷走中?使い分けの弊害に一部ファンから疑問の声
- クロワデュノール「世代最強説」に現実味も…ダービー馬候補が未勝利戦より遅い時計の怪
- 武豊×ドウデュース完全包囲網で波乱含み!?豪華メンバーのジャパンCにチェルヴィニア、ブローザホーン、オーギュストロダンら最強メンバー集結。レジェンド元JRA騎手の見解は?
- 「別競技」の高速馬場で欧州最強マイラーの意地見せたチャリン!ジャパンC参戦オーギュストロダン、ゴリアットに朗報?
- C.ルメール「アンラッキー」な過怠金に謝罪…マイルCSでも「牝馬のC.デムーロ」の手綱冴えるか?
- エアスピネル降板に武豊騎手は「何」を思う……8年前、すべてを手にしてきた天才騎手が”最大級”の屈辱を味わった「ウオッカ事件」とは
- 【京都2歳S(G3)展望】藤田晋オーナーの大物エリキングが登場! ジョバンニ、サラコスティがリベンジに燃える
- 【ジャパンC(G1)展望】「ディープ」オーギュストロダンVS「ハーツ」ドウデュース、2005年有馬記念から19年越しの最終決戦!
- 春のG1戦線に水を差す「醜聞」続く…現役騎手の父に詐欺容疑、G1馬オーナーが逮捕
- 「3大始祖」消滅の危機……日本で「2頭」世界で「0.4%」の血を残すべく立ち上がったカタール王族の「行動」に称賛
関連記事
JRA「これ以上ない適任」陣営からもお墨付きの鞍上が最適解!「急造」コンビがオークス2着馬“長女”で満点回答の裏事情
JRAシルクロードS(G3)「持ってる男」池添謙一メイケイエール決定はわずか5分!? 武豊、横山典弘でも乗りこなせなかった「癖馬」との仰天エピソード
JRA川田将雅「ロケットスタート」でもシルバーコレクター濃厚!? 4度目の正直に立ちはだかる天敵のモデルチェンジ
JRA「僕にとって初」人馬揃って晩成タイプ!? 乗り替わりでG1勝たれた苦労人から意外過ぎるコメント、デビュー「26年目」でようやく手にした殊勲星
JRA横山典弘「本気ポツン」で父の威厳見せた! AJCC(G2)8戦5勝「相思相愛」コンビでG1獲りも視野、武史エフフォーリアとガチンコ対決待ったなし?