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JRAオーナー激怒の「横山典弘NG」がもたらした絶好調!? 東西重賞制覇マテンロウレオ、イルーシヴパンサーの活躍に隠された「Win-Win」の裏事情

JRAオーナー激怒の「横山典弘NG」がもたらした絶好調!? 東西重賞制覇マテンロウレオ、イルーシヴパンサーの活躍に隠された「Win-Win」の裏事情の画像1
横山典弘騎手

 オーナー、調教師、騎手、それぞれ思惑も重なって、これまで様々なドラマが生まれてきた競馬。古くは有馬記念(G1)の武豊騎手とオグリキャップが演出した感動のラストランや、同じくトウカイテイオーと田原成貴騎手が元主戦の岡部幸雄騎手とビワハヤヒデのコンビを破るなど、出会いと別れがファンの心を打った。

 そして、相思相愛の最強タッグもあれば、ふとしたことをきっかけに疎遠になることも珍しくはない。

 先週末のきさらぎ賞(G3)をマテンロウレオ(牡3、栗東・昆貢厩舎)で制した横山典弘騎手と昆調教師も、絶大な信頼関係で好結果を残したコンビである。横山家としても長男の和生騎手が多くの騎乗依頼を受けており、家族ぐるみの付き合いともいえるほどだ。

 昨年、26年連続の重賞勝利が途絶えたばかりの横山典騎手だが、それまでの不振が嘘だったかのように、今年は早くも重賞3勝の大活躍。シンザン記念(G3)のマテンロウオリオン、きさらぎ賞のマテンロウレオは昆厩舎、そしてアメリカジョッキークラブC(G2)のキングオブコージは安田翔伍厩舎と、いずれも“得意先”の馬で挙げた勝ち星である。

 これは懇意にしている陣営の期待に応えるべく、横山典騎手もまた最善を尽くした結果といえるだろう。

「マテンロウレオのハナ差勝ちは、凄く価値がありますね。これでダービーまでは賞金的に大丈夫。この時期の3歳は、馬がまだ完成されてないので、各陣営は無理をしたくないんです。賞金を加算できたので余裕を持ったローテが組めそうです。

逆にダンテスヴュー陣営は、色々と考える必要が出てきました。皐月賞もですが、日本ダービー出走には非常に微妙な賞金のため、どこかで賞金や権利を得る事が必須。ましてや友道厩舎はクラシックを狙う素質馬が多数いるだけにローテは悩むでしょうね」(競馬記者)

 皐月賞(G1)に照準を合わせると、今度は日本ダービー(G1)でお釣りがなくなってしまう。場合によっては、目標をダービー1本に切り替えるローテも視野に入る。ダンテスヴューは難しい状況だ。

 西のきさらぎ賞に対し、東の東京新聞杯(G3)ではイルーシヴパンサーが、条件戦から4連勝で一気に重賞を制覇。非凡な決め手は、同舞台で行われる安田記念(G1)でもこれ以上ない武器となりそうだ。

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田辺裕信騎手

 この勝利で大きな注目を集めたイルーシヴパンサーと田辺裕信騎手だが、実はデビュー戦から4戦目まで横山典騎手が騎乗していたことをご存じだろうか。当人も当初から素質を高く買っており、競馬を教えながら課題をクリアし、馬も着実に成長を遂げていた。

 4連勝の転機は、距離の壁を感じた皐月賞から距離を短縮した1勝クラスからだが、この裏には厳しい乗り替わりがあったという。陣営としては、馬の癖やここまでの過程を知っている横山典騎手を起用するつもりだったが、草間庸文オーナーから横山典騎手へのNGが出されたらしい。

「仕切り直したとなった1勝クラスの3週間前、草間オーナーの所有馬サンダーブリッツがアハルテケS(OP)に横山典騎手で出走しましたが、直線で少しスムーズさを欠く形で負けてしまいました。ジョッキーの感覚としたら昇級戦ですし、現状での力関係を考慮して内めでロスなく運んでどこまでやれるかという競馬をしたと思います。

進路を確保してからも伸び切れなかったため、これだけが敗因かどうかは難しいところでしたが、オーナーはこの騎乗に激怒。1番人気に推されていただけに、印象が良くなかったのかもしれません。ここまではよくある話だったのですが、その後もオーナーの怒りは収まらず、イルーシヴパンサーの乗り替わりを陣営に通達しました」(同)

 もし、サンダーブリッツの一戦がなければ、イルーシヴパンサーともコンビを継続していていたであろう横山典騎手。その後、栗東に拠点を移して大活躍することになるが、もし関東馬のイルーシヴパンサーとのコンビが続いていれば、“栗東移籍”はもう少し先だったとて不思議ではない。これが決定打となったかどうかはわからないものの、拠点を移すきっかけの一因になったのではないだろうか。

 同馬を管理する久保田貴士調教師と横山典騎手は同学年で、騎乗依頼が少なくなっていた近年でも、お互い頼りにしていて、調教などにもよく乗っている間柄だった。

 ただ、横山典騎手は関西で今は伸び伸びと競馬をして成績も好調。昆調教師や「マテンロウ」の寺田千代乃オーナーなどの信頼をより強固なものにしたのだから、現時点で拠点変更は成功といえるだろう。

 一方で元お手馬のイルーシヴパンサーも、田辺裕信騎手に乗り替わって4連勝。同日に元主戦のマテンロウレオも勝利したなら、結果的に「Win-Win」といったところだろうか。競馬に乗り替わりは常だが、表に出ないとこではこういった事が日常茶飯事で起きている。

(文=高城陽)

<著者プロフィール>
 大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。

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