元JRA藤田伸二氏×藤沢和雄師に立ちはだかったのは同期のダービージョッキー!? 「教科書のような方やった」名伯楽との“絆”を回想
JRAでは27日の開催をもって7人の調教師が引退した。そのうちの一人、藤沢和雄調教師は最終日に2勝を上積み。通算勝利数を1570勝に伸ばし、有終の美を飾った。
そんな藤沢和師の引退に思いを馳せた一人が元JRA騎手の藤田伸二氏だ。
26日(土)夜に自身のTwitterを更新した藤田氏は「明日だ藤澤和雄先生が引退…」(原文まま)と書き出すと、競馬学校時代に藤沢和師から弟子入りの指名があったことを明かしたうえで、「俺の志望が関西だった為叶わず…」と、デビュー前の知られざるエピソードを明かした。
さらに「デビュー後も気にかけて下さりたくさん乗せて頂いた…」と感謝の意を表し、「とにかく穏やかで必ず大きな声で挨拶してくれる教科書のような方やったな…」「まだまだ元気なのに定年は悔やまれるが、お世話になった1人として心からお疲れ様といいたいね」としみじみ。最後は「有り難うございました」と結んだ。
師弟になる可能性があったというこのコンビだが、藤田氏の「たくさん乗せて頂いた」という言葉通り、通算124回タッグを組み、22勝を挙げている。ただし、重賞では17戦して未勝利。1番人気の馬にも3回騎乗があったが、2着が最高着順だった。
そのうちの2回はコイントスという馬に騎乗してのものだった。コイントスは、3歳時から芝の中長距離を主戦場に有馬記念(G1)にも3度出走。02年の同レースで3着に入ったこともある実力馬だった。
結局、重賞では勝利には届かなかったものの、2着は5回を数えた。そんなコイントスにとって、最初の重賞2着が01年の毎日杯(G3)。鞍上を務めたのがテン乗りの藤田氏だった。
単勝5.2倍の3番人気に支持されたコイントスは好位で競馬を進め、持っている力を出し切った。ところが、クロフネという芦毛の怪物が5馬身も先にいた。さすがにこの時は一緒に走った相手が悪かった。
そして藤田氏がコイントスとのコンビで2度目の2着となったのが03年の日経新春杯(G2)である。有馬記念3着の好走もあって、この時は1番人気に支持されていた
ここでも好位で競馬を進め、4角2番手の横綱相撲を展開したコイントス。満を持して抜け出したところを、直線大外一気の末脚で差し切ったのが4番人気バンブーユベントスだった。
01年毎日杯のクロフネ、そして03年日経新春杯のバンブーユベントス。「藤田氏×藤沢和師」コンビによる重賞制覇を2度も阻んだ鞍上が、現在栗東で調教師として活躍する四位洋文師(当時騎手)だった。
「藤田氏と四位師は同じ競馬学校の7期生です。年齢は藤田氏が1つ上ですが、競馬学校では同じ時間を過ごしたライバルであり、仲間ということになります。
騎手として1年目に39勝、2年目にG1を制するなど、藤田氏は華々しいデビューを飾りました。それに対し、四位師は3年目まではやや地味な成績でしたが、やはり同期の活躍に刺激をもらった部分もあったはずです」(競馬誌ライター)
そんな四位師も07-08年に日本ダービー(G1)を連覇するなど、一流騎手への階段を駆け上がり、藤田氏が15年に電撃引退するまで切磋琢磨する関係が続いた。
そして、藤田氏の引退から5年後、四位師も鞭を置き、調教師に転身。開業前には藤沢和師に弟子入りし、約2か月に及ぶ研修を受けた。
「藤田氏にとって、藤沢和調教師の管理馬で重賞を勝てなかったのは残念だったと思います。もし1勝でもしていれば、両者の関係もまた違うものになっていたかもしれませんね。それを2度も阻んだ四位師が運命を変えたといったら言い過ぎでしょうか」(同)
藤田氏の今回のツイートは、藤沢和師の人となり、競馬界における影響力の大きさ改めて知らしめるエピソードでもあった。
(文=中川大河)
<著者プロフィール>
競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。
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