JRA武豊×ラニが唯一の完走。日本馬史上4頭目のケンタッキーダービー(G1)挑戦確実も、米クラシック挑戦に懸念される大きな「代償」とは…
3月26日から翌27日(日本時間)にドバイ・メイダン競馬場ではドバイワールドカップデーが行われた。日本からは8競争に22頭が出走し、5勝を挙げる快挙を達成。日本の競馬関係者、ファンにとっては歴史的な「歓喜の夜」となった。
28日夜、ドバイでの熱戦を終えた日本馬たちが無事に帰国したことが、先日JRAのホームページで発表された。ほとんどの馬が帰国の途についた一方で、UAEダービー(G2)を制したクラウンプライド(牡3歳、栗東・新谷功一厩舎)は米国に輸送されると発表があった。
クラウンプライドは5月7日(土)に行われるアメリカクラシック3冠の初戦、ケンタッキーダービー(G1)を目指すようだ。ケンタッキーダービーは米国3冠の中でも最も権威ある競走であり、アメリカ競馬の中でもブリーダーズカップに並ぶ最高峰のイベントである。
ケンタッキーダービーは、主要な世界中の競走に「ロード・トゥ・ザ・ケンタッキーダービー」としてポイントが設定されており、各競走で得たポイントが高い順に優先出走権が与えられる。UAEダービーを制したクラウンプライドは100ポイントを獲得したことになり、出走権の獲得は確実。無事に出走が叶えば2019年のマスターフェンサー以来、日本馬としては4度目の出走となる。
サウジアラビア、ドバイでの日本馬の快進撃から、アメリカでも十分勝負になるのでは…と言いたいところだが、ダート競馬の本場アメリカのクラシックは甘くはないのかもしれない。
アメリカ国外調教馬で米国クラシックを制したのは、150年以上の歴史の中で1頭のみ。日本調教馬は過去にのべ10回出走しているが、2016年ベルモントS(G1)でラニが残した3着が最高成績である。
これほどまでに外国馬が苦戦しているのは、アメリカ調教馬のレベルの高さはもちろんだが、それ以上にアメリカ競馬の独特なレースの性質にある。アメリカ競馬の主流は平坦・小回りコースで行われる短距離レース。加えて馬場が固い「土」であり、非常に高いスピード能力が要求される。
必然的にレース展開はハイペースになることが多く、慣れていない外国調教馬は大きな苦戦を強いられる。クラウンプライドの挑戦も、厳しいアメリカ競馬の流れに対応できるかが最大のカギとなる。
加えて懸念されるのが、馬への負担である。アメリカ3冠は1か月半の間に3レースが行われる、非常にタイトなスケジュール。クラウンプライドもケンタッキーダービー以降の続戦があるかもしれないが、続戦するなら相当な消耗を強いられるだろう。
過去にクラウンプライドと同様にUAEダービーを制し、武豊騎手とのコンビでアメリカ3冠レースすべてに出走したラニは、その後は目立った成績を残せず引退。海外重賞を制した能力を持ちながら、帰国後に全く活躍できなかったことを鑑みると、異国の地で厳しいローテーションを歩むことの「代償」は大きいのかもしれない。
アメリカ3冠への挑戦は価値のあるものだが、厳しい挑戦であることも事実。結果はもちろん期待したいが、まずは無事にレースを終えることを願いたい。
(文=エビせんべい佐藤)
<著者プロフィール>
98年生まれの現役大学院生。競馬好きの父の影響を受け、幼いころから某有名血統予想家の本を読んで育った。幸か不幸か、進学先の近くに競馬場があり、勉強そっちのけで競馬に没頭。当然のごとく留年した。現在は心を入れ替え、勉強も競馬も全力投球。いつの日か馬を買うのが夢。
PICK UP
Ranking
17:30更新- ルメール軍団「誤算続き」で迷走中?使い分けの弊害に一部ファンから疑問の声
- クロワデュノール「世代最強説」に現実味も…ダービー馬候補が未勝利戦より遅い時計の怪
- 武豊×ドウデュース完全包囲網で波乱含み!?豪華メンバーのジャパンCにチェルヴィニア、ブローザホーン、オーギュストロダンら最強メンバー集結。レジェンド元JRA騎手の見解は?
- 「別競技」の高速馬場で欧州最強マイラーの意地見せたチャリン!ジャパンC参戦オーギュストロダン、ゴリアットに朗報?
- C.ルメール「アンラッキー」な過怠金に謝罪…マイルCSでも「牝馬のC.デムーロ」の手綱冴えるか?
- エアスピネル降板に武豊騎手は「何」を思う……8年前、すべてを手にしてきた天才騎手が”最大級”の屈辱を味わった「ウオッカ事件」とは
- 【京都2歳S(G3)展望】藤田晋オーナーの大物エリキングが登場! ジョバンニ、サラコスティがリベンジに燃える
- 【ジャパンC(G1)展望】「ディープ」オーギュストロダンVS「ハーツ」ドウデュース、2005年有馬記念から19年越しの最終決戦!
- 春のG1戦線に水を差す「醜聞」続く…現役騎手の父に詐欺容疑、G1馬オーナーが逮捕
- 「3大始祖」消滅の危機……日本で「2頭」世界で「0.4%」の血を残すべく立ち上がったカタール王族の「行動」に称賛
関連記事
JRA「再評価」リーチザクラウンから怪物候補が誕生!? 「パニック」でも6馬身差圧勝に幸英明も興奮、陣営も驚いた衝撃デビューの裏側
JRA幸英明も驚いた「パニック暴走」からの6馬身圧勝デビュー! 典型的大敗パターンからまさかの大楽勝……崖っぷち種牡馬リーチザクラウンの逆襲か
JRA松山弘平は間に合うのか…「待望復帰」デアリングタクトVS「復活」ソダシ! 新旧女王対決に「世界的スプリンター」が参戦! 今年はヴィクトリアマイル(G1)が熱い
JRA大阪杯(G1)福永祐一「責任転嫁」でファンから集中砲火!? エフフォーリア父が敗れた8年前、武豊との「二強対決」に待ち受けていた屈辱
JRA 武豊「絶縁」噂された名トレーナーと再コンビ! ロジクライ「大斜行」で因縁の相手、川田将雅が乗れても騎乗依頼はなぜ