
JRAリフレイムの「大外逸走」、距離ロスは半馬身だけ!? 矢作芳人調教師ら輩出「名門校」生徒がはじき出した意外な数値とは

「調子がいい時ほど右に行きたがる面があるけど、ラチを頼れるので右回りの方が乗りやすいのではと思っています」
『スポニチ』のインタビューにそう答えたのは、2日の中山メイン、ダービー卿CT(G3)にリフレイム(牝4歳、美浦・黒岩陽一厩舎)とのコンビで挑む野中悠太郎騎手だ。
ザダルやカテドラルといった重賞勝ち馬に交じって、上位人気が予想されているリフレイムだが、これまで4度出走した重賞レースでは、5着が最高着順。実績的には見劣る存在である。それでも注目度が高いのは、これまで見せたレースぶりもあるからだろう。
詳細は本記事でも触れられているが、大きな反響を呼んだのはそのデビュー戦だった。
遡ること1年8か月前の2020年夏、新潟芝1600mが舞台だった。当時の鞍上は木幡巧也騎手で、外枠からハナに立つと、道中はリフレイムがモタれるのを必死になだめながらの逃げ。最後の直線では、外ラチ沿いへと逃避し、落馬寸前の状態に陥り、ほとんど追うことができなかった。にもかかわらず、他17頭を完封したのだ。
2戦目の2歳1勝クラスでは一転、最後方からの競馬となったが、直線で11頭をごぼう抜き。今度は最後まで逃避することなく真っすぐに駆け抜ける優等生ぶりを披露し、桜花賞候補に名乗りを上げた。
ところが、3戦目の京王杯2歳S(G2)では、中団から直線伸びを欠いての初黒星。これが1年近くにわたるスランプの始まりだった。年明け初戦のクイーンC(G3)から関東オークス(G2)までの4戦は掲示板を外す凡走が続き、ファンの間では早熟説も囁かれた。
だが昨年10月、古馬と初対戦となった鷹巣山特別(2勝クラス)で、野中騎手を鞍上に迎えると一変。デビュー戦以来となる逃げの積極策をとると、イルーシヴパンサーの2着に粘り込み、復活への一歩を踏み出した。
続く2勝クラスを2番手から早め先頭の横綱相撲で勝利したリフレイム。前走の節分S(3勝クラス)も完勝し、9か月半ぶりとなる重賞に駒を進めてきた。
完全復活を印象付けたのは、その前走で見せた直線での走りだった。
「デビュー戦ほどではなかったですが、府中の長い直線で徐々に外ラチ沿いへと向かっていきました。野中騎手は無理に抑えつけることはせず、最終的には7分どころ付近まで逸走しましたが、2着馬に2馬身半差をつける完勝でした。
『前傾姿勢』ならぬ『斜傾姿勢』の走りで、大きな(距離)ロスがあったようにも見えましたが、とある学校の生徒の計算によると距離ロスは1mにも満たなかったといいます」(競馬誌ライター)
リフレイムの逸走に、いわゆるピタゴラスの定理を用いた計算を行ったのが、東京都にある名門・開成学園のサラブレッド研究同好会である。東大の合格者数は41年連続で1位という超エリート進学校で、競馬界にも矢作芳人調教師や林徹調教師らのOBがいる。
同同好会は、ブログで血統分析や重賞レースの見解などを執筆。Twitterでは予想も披露している(注釈:もちろん馬券は買っていないとのこと)。
そんなエリート校の“優等生”たちが、デビュー戦と前走の節分Sでリフレイムにどれくらいの距離ロスがあったかをはじき出していた。
デビュー戦直後のツイートは、「リフレイムのレース映像、直線入り口から膨れて1分18秒頃に外ラチ一杯ですから、1021m地点から1300m強地点までの斜行、コース幅25mで計算すると約1mしか距離ロスはないんですよね」と記されていた。
さらに前走の節分S後には「直線入ってすぐに膨れましたが外ラチまでは行かず、7分ぐらいまで。府中の直線の長さが525.9、幅が41mですから、計算してみると一昨年よりは成長していることがわかります。距離ロスも1mに満たない程度」(すべて原文ママ)と、逸走による距離ロスはかなり限定的だったという。
「専門紙はじめ多くのメディアが『かなりの距離ロス』という表現をしていましたが、実は“半馬身”にも満たない程度のロスだったようですね。そうなると、陣営は無理に真っすぐ走らせる必要もなさそうです。
ただ、今回の舞台は2度目の右回り。右(内ラチ)に行きたがるのか、それとも外ラチ沿いに向かっていくのか。はたまた真っすぐ走るのか……。いずれにしても興味深いです」(同)
野中騎手の言葉通りなら、内ラチを頼れる右回りでさらにパフォーマンスを上げてきそうだ。強豪牡馬相手にここで好勝負ができれば、さらに大きな舞台での活躍も見込めるだろう。
(文=中川大河)
<著者プロフィール>
競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。
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