JRA【皐月賞(G1)展望】「2歳王者」ドウデュース&キラーアビリティVS「大器」イクイノックスVS「緊急参戦」ダノンベルーガ! クラシック開幕戦「4強」ついに激突!
17日、中山競馬場では第82回皐月賞(G1)が行われる。21頭がエントリーした今年は、2年ぶりにフルゲート18頭による戦いが見られそうだ。
混戦ムードが漂う今年の牡馬クラシック第1弾だが、実績面でアドバンテージがあるのは昨年暮れに2歳G1を勝利した2頭だ。
1頭目は、デビューから無傷の3連勝で朝日杯FS(G1)を制したドウデュース(牡3歳、栗東・友道康夫厩舎)である。
昨年9月の2歳新馬(小倉芝1800m)、続くアイビーS(L)をどちらもクビ差で勝利。好位追走から直線で押し切る強い内容で、若駒らしからぬレースセンスの高さをうかがわせた。
それを最高の形で証明したのが、昨年12月の2歳マイル王決定戦だった。“2強”を形成したセリフォスとジオグリフから少し離された3番人気だったドウデュース。過去2戦よりもやや後方の位置取りで、中団からレースを進めた。直線で先にセリフォスが抜け出したが、そのすぐ外を鋭く伸びたのが武豊騎手のドウデュースだった。
残り200mを切ったところでセリフォスと馬体を併せ、2頭による一騎打ちとなったが、最後はドウデュースが半馬身前に出てゴールイン。武騎手は同レース22度目の騎乗で待望の初勝利を飾った。
ここ数年、賞金を満たした馬は皐月賞に直行するローテーションが主流になっているが、ドウデュース陣営は弥生賞ディープインパクト記念(G2)からの始動を選択。400mの距離延長がやや不安視されたが、2歳マイル王としては落とせない一戦だった。
道中は中団の前目を追走。休み明けとしてはリズム良く走っているように見えたが、3コーナーでロジハービンが外を一気に進出したあおりを受け、ポジションを下げてしまう。その後、立て直しを図り、直線でアスクビクターモアを猛追したがクビ差捉えきれず、初黒星を喫した。
前走後は在厩で調整され、2週前に栗東CWで6ハロン82秒8-11秒1をマーク。1週前には武騎手が跨り、同コースで82秒2-11秒2。3頭併せで最先着を果たして『スポニチ』の取材に「しゃべることないわ」と武騎手。その言葉通り、言うことなしの動きを披露し、最終追い切りを残すのみとなっている。
武騎手はこれまで皐月賞を3勝(1993年、2000年、05年)しているが、ディープインパクトとのコンビで制して以降は13連敗中。馬券圏内も3着が2回とやや苦戦を強いられている。ドウデュースとのコンビで17年前の“衝撃”を呼び起こせるか。
もう1頭は昨年のホープフルS(G1)を勝ったキラーアビリティ(牡3歳、栗東・斉藤崇史厩舎)だ。
昨年6月のデビュー戦で5着に敗れたときは、G1馬になるとは誰も思わなかっただろう。ところが1度使われて、ガラリ一変した。夏の小倉で迎えた芝2000m の2戦目を2歳コースレコードとなる1分59秒5で快勝。同日行われた3歳以上2勝クラスの勝ちタイムを0秒1上回る優秀なものだった。
3戦目は阪神で行われた萩S(L)で確勝を期したが、ダノンスコーピオンとの追い比べに敗れ2着。賞金加算もできず、手痛い敗戦となった。
そして横山武史騎手との新コンビで迎えたホープフルSは3戦1勝という戦績ながら、2戦2勝のコマンドラインと人気を二分。最終的に3.1倍の2番人気に推されると、道中3番手の好位から2着に1馬身半差をつける完勝でG1馬に上り詰めた。
その後はノーザンファームしがらきでのリフレッシュ放牧を経て、3月中旬に栗東に帰厩。前哨戦を挟まず直行で戴冠を狙う。
1週前追い切りでは3頭併せで負荷をかけ、6ハロン81秒7-11秒4をマーク。ただし僚馬にクビ差後れを取ったことに加え、跨った横山武騎手は、動き自体は褒めつつも、折り合いの難しさなど課題も挙げていた。
この春のG1シリーズは1番人気を2度裏切るなど、調子が今一つ上がらない横山武騎手。昨年、自身がG1初勝利を飾った舞台で輝きを取り戻せるか。
2歳チャンピオンのドウデュースとキラーアビリティに並ぶ評価を集めているのは、まだ底を見せていない2戦2勝の2頭だ。
新馬、東京スポーツ杯2歳S(G2)を2連勝中のイクイノックス(牡3歳、美浦・木村哲也厩舎)は、キタサンブラックの初年度産駒として、デビュー当初から大きな期待を背負っていた。
その期待を大きく上回るパフォーマンスを見せたのが夏の新潟・芝1800mで行われた2歳新馬戦。3番手追走から直線先頭に立つと、後続との差は広がるばかり。終わってみれば6馬身差の衝撃デビューとなった。なお、このレースで3着に破ったサークルオブライフは後に2歳女王に輝くなど、好メンバーがそろっていた。
2戦目では強敵アサヒを寄せ付けず。2馬身半差の完勝で、クラシック最有力候補に名乗りを上げた。ところが、ここで陣営は予想外の決断を下す。前哨戦を使わず、5か月の間隔を空けて皐月賞に直行するという異例のローテーションだった。
5か月ぶりの実戦はメイチで来るのか、それとも日本ダービー(G1)へ向けて、余力残しの仕上げとなるのか。期待と不安が交錯するレースとなりそうだ。
もう1頭の2戦2勝馬が、8日に皐月賞への参戦を正式に決めたダノンベルーガ(牡3歳、美浦・堀宣行厩舎)だ。
こちらは新馬、共同通信杯(G3)を連勝中で、約2か月の間隔を空けて皐月賞に臨む。その高いエンジン性能を知らしめたのは、前走の走りだった。キャリア僅か1戦にもかかわらず、重賞ウイナーの強豪ジオグリフを子ども扱いにし、最後は1馬身半差をつける快勝だった。
ただし、大きな不安も抱えている。幼少期に大ケガをしたという右後脚は、今も後遺症で強い調教メニューをこなせないという。
右回りだと右脚に大きな負担がかかってしまうため、これまでの2戦は左回りの東京コースを使われた。初の右回りに不安は決して小さくないはず。それでも1週前追い切りに騎乗した川田将雅騎手がゴーサインを出したからには無様な姿は見せられない。3連勝を飾って、大目標のダービーへ向かえるか。
この他には、前走2着のジオグリフ(牡3歳、美浦・木村哲也厩舎)と、ジャスティンパレス(牡3歳、栗東・杉山晴紀厩舎)も勝利を狙える素材の持ち主だ。
前者はデビュー3連勝を狙った2走前の朝日杯FSで5着に敗退。巻き返しを期した前走・共同通信杯は中団前目の絶好位から押し切りを図ったが、外からダノンベルーガの強襲に遭った。それでも最後まで勝ち馬に食い下がっており、見限るのは早計だろう。
後者は3連勝を狙ったホープフルSでキラーアビリティに完敗を喫した。今回は3か月半ぶりの実戦となるが、2週前には栗東CWで6ハロン78秒8-11秒5の好時計をマーク。弟C.デムーロ騎手からバトンを受けた兄M.デムーロ騎手が虎視眈々と一発を狙う。
前走で中山・芝2000mの重賞を制した2頭も侮れない。
アスクビクターモア(牡3歳、美浦・田村康仁厩舎)は今年に入って、1勝クラスと弥生賞を連勝中。ドウデュースに唯一の黒星をつけた実績と中山3戦3勝のコース相性の良さは何とも不気味だ。
オニャンコポン(牡3歳、美浦・小島茂之厩舎)は、前走の京成杯(G3)を差し切って、4戦3勝。唯一の黒星はホープフルSの11着だ。ただし、その時は中間の熱発で数日間の調整遅れがあった。走り慣れた中山芝2000mなら、上位争いは十分可能だろう。
展開のカギを握るのは、前哨戦で岩田康誠騎手が勝利に導いた2頭だ。
若葉S(L)を逃げ切ったデシエルト(牡3歳、栗東・安田隆行厩舎)は、岩田康騎手を背にデビュー3連勝中。前走は初めての芝だったが、稍重の馬場も味方につけた。ここでも岩田康騎手は絶妙なペースを演出するか。
デシエルト勝利の翌日にスプリングS(G2)を逃げ切ったのがビーアストニッシド(牡3歳、栗東・飯田雄三厩舎)だ。スタートで躓いて出負けしたが、岩田康騎手が押して出していくと、そのまま逃げ切り勝ち。鞍上は和田竜二騎手に替わるが、常に人気を上回る好走を続けており、持ち前のしぶとさはここでも侮れない。
上位人気が予想される4頭が相まみえるのは、これが初。馬券的にはかなり難解な一戦となるだろう。牡馬クラシック1つ目のタイトルを獲得するのは、果たしてどの馬か。発走は17日15時40分を予定している。
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