JRA 「怪物」デシエルトの皐月賞(G1)制覇を阻む不穏なデータ…通算900勝を達成した名伯楽は中距離重賞で大苦戦!?
先週行われた皐月賞トライアル、若葉S(L)では2番人気デシエルト(牡3歳、栗東・安田隆行厩舎)が3馬身差の快勝。無傷の3連勝で皐月賞(G1)の切符をつかんだ。
レース後はやや興奮気味の岩田康誠騎手のインタビューが波紋を呼んだが、それだけのポテンシャルをこの馬に感じた表れだろう。岩田康騎手はスプリングS(G2)でもビーアストニッシドに騎乗して勝利していたが、皐月賞ではデシエルトに騎乗することを選択している。
初芝だった前走の3馬身差圧勝で早くも「怪物」との声も上がっているデシエルト。皐月賞での走りに期待が高まるが、好走を阻む不穏なデータも存在する。
デシエルトを管理する安田隆師は過去7度、皐月賞に管理馬を送り込んでいるが、複勝圏に好走した馬はおらず、最高着順は2002年ホーマンウイナーの9着という悲惨な結果……。
そのほとんどが人気薄なため致し方ない面もあるが、昨年は1番人気に支持されたダノンザキッドが大敗を喫している。
皐月賞に限らず、安田隆師は中長距離の重賞で結果を残せていない。
通算でJRA重賞を51勝しているが、そのうち2000mの重賞は、今年の中山金杯(G3)でようやく3勝目。それより長い距離の重賞制覇はない。G1に限れば2000m以上での勝利は、一昨年ダノンザキッドで制したホープフルS(G1)のみである。先日、JRA通算900勝を達成した名伯楽の実績としては少々物足りなく感じてしまう。
安田隆師といえば、坂路コース中心の調教スタイルで知られている。トランセンド、カレンチャン、ロードカナロアといった厩舎を代表する名馬たちも、坂路コースでパワーとスピードを徹底的に鍛えられたからこそ、ダート戦やスプリント戦で力を発揮できたのだろう。
一方で中長距離重賞、その中でも牡馬クラシックは、タフなコースやレース展開を乗り切るスタミナが要求される。スピード強化に主眼を置く安田隆師の調教方針と、中長距離で要求される適性とのズレが、クラシックで結果を残せていない要因の1つと思われる。
デシエルトは条件戦の勝ち上がりが2戦ともダートでのもの。前走の若葉Sは芝でのレースではあるものの、雨中の稍重馬場での実施であり、勝利した3戦はいずれも坂路調教で鍛えたパワーが活きる舞台であったといえる。
今年の皐月賞はフルゲート18頭で行われることが濃厚。10頭立ての少頭数であった若葉Sとは比べ物にならない、G1らしいタフなレース展開が予想される。重賞初挑戦のデシエルトがここで好走することは一筋縄ではいかないだろう。
果たしてデシエルトは、厩舎に念願のクラシックタイトルをもたらすことができるのか。決して簡単なことではないが、まだまだ能力の底を見せていないのも事実。「怪物」デシエルトの皐月賞での走りに注目だ。
(文=エビせんべい佐藤)
<著者プロフィール>
98年生まれの現役大学院生。競馬好きの父の影響を受け、幼いころから某有名血統予想家の本を読んで育った。幸か不幸か、進学先の近くに競馬場があり、勉強そっちのけで競馬に没頭。当然のごとく留年した。現在は心を入れ替え、勉強も競馬も全力投球。いつの日か馬を買うのが夢。
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