JRAスプリングS(G2)「無慈悲」スターターにファンは悲鳴!? 1番人気アサヒは皐月賞ほぼ絶望的……、ゲート以前に精神面の問題が顕著
20日、中山競馬場で行われた皐月賞トライル・スプリングS(G2)は、岩田康誠騎手の5番人気ビーアストニッシドがアライバルの追撃をハナ差で凌いで勝利した。
前日の若葉S(L)のインタビューのやり取りが物議を醸した岩田康騎手。3連勝でクラシック候補に名乗りを上げたデシエルトと同じく、2日連続で鮮やかな逃げ切り勝ちを決めた。
「1000mを61秒ぐらいで行けば、ラスト3ハロンから仕掛けて脚が残る。そこだけを考えていた」
インタビュアーに逆質問して確認したラップに本人も納得のコメント。まさに作戦通りの“してやったり”といったところだろう。
これに対し、不本意な結果に終わったのが、田辺裕信騎手とのコンビで1番人気の支持を集めていたアサヒ(牡3、美浦・金成貴史厩舎)である。
2番人気に推された前走の共同通信杯(G3)は、スタートで出遅れたことが災いし、直線最後方から追い上げたものの5着に敗退。これには田辺騎手も「ゲートがうまくいきませんでした。致命的な後れを取りました」と悔やんでいた。
巻き返しへ金成調教師は「やれることはすべてやってきた」、田辺騎手も「調教ではだんだん行儀が良くなってきたので競馬に結びつけば」と期待していたものの、またしてもスタートで出遅れ。レースの流れに全く乗れないまま、11着に大敗してしまった。
「前回よりゲートの出は良かったけど、二の脚がつかなくてあの位置になった。じっとしていても仕方ないので上がっていったけど思ったほど脚が使えなかった」
想定外の惨敗をそう振り返った田辺騎手だが、今回の出遅れはある意味起こるべくして起こった可能性も捨て切れない。
「各馬がゲートに収まった中で、アサヒは首を前後に上下して落ち着かない状況。これに気付いたのかスターターも数秒は待ってくれましたが、その後すぐにゲートが開かれてしまいました。おそらく待ち切れなかったのでしょうけど、アサヒ陣営にとってはもう少し待って欲しかったところでしょうね」(競馬記者)
とはいえ、これが直接的な敗因となったのかどうかは別かもしれない。何とかゲートを出たアサヒだが、舞台は直線の急坂からスタートする中山1800mだけに行きっぷりも悪く、出足がつかないまま最後方からの競馬となった。
特に深刻に映ったのは、出遅れさえなければと思えた前走に対し、スプリングSは仮に出遅れがなかったとしても勝ち負けするイメージが湧かないレース内容だったことだ。ゲートでうるさかったこと自体は想定内だったとはいえ、レース以前にパートナーが既に集中力を欠いていたようにも感じられる。
また、痛恨だったのは賞金の加算にも失敗し、皐月賞出走がほぼ絶望的となったことである。
東京スポーツ杯2歳S(G2)勝利から直行する収得賞金2300万円のイクイノックスでさえ、状況次第では危ういと噂される中、同2着で賞金1150万円のアサヒは権利取りが急務だった。
仮にもし出走まで漕ぎつけたとしても、悪癖の目立つアサヒより、弥生賞ディープインパクト記念(G2)でドウデュースを破ったアスクビクターモアもいる田辺騎手を確保できる保証もない。
本来なら休み明けの共同通信杯を叩いて前進に期待したいところだったが、陣営としても下方修正を強いられることになりそうだ。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。
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